表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/12

人に言えないこと④

 平沢雅恵から電話があった。

「暫く実家に戻りたいのですけど、ダメでしょうか?」という問い合わせだった。

 人が殺されていた部屋に戻りたくないので、今は市瀬の家に居候している。気にしないで良いと市瀬は言ってくれるが、何時までも迷惑をかける訳には行かない。藤堂に相談したら、日頃、使えなくて溜まってしまった有給休暇を目一杯使って良いと言ってくれたので、実家に戻りたい――という内容だった。

「実家は確か――」と茂木が言いかけると、「名古屋です」と雅恵が答えた。

 雅恵の経歴も洗ってある。

 雅恵は幼い頃に母親を病気で亡くしており、父の武則(たけのり)と妹の由里子(ゆりこ)と三人で寄り添うようにして生きて来たようだ。幼くして一家の主婦代わり、由里子の母親代わりとなった。

 名古屋の高校を卒業すると一旦、地元の旅行会社に勤務した。

 そこで藤堂と知り合った。「トレンド・ツアーリズム」が「これから日本全国を相手に勝負する」と起業すると、藤堂は引き抜きを受け「トレンド・ツアーリズム」に移籍することになった。その際、優秀な部下だった雅恵を誘った。

 雅恵は地元に父親と妹を残して行くことに抵抗があったようだが、父の武則から「雅恵は自分の幸せだけを考えていれば良い」と言われ、由里子からも「私たちの面倒を見ることばかり考えていないで、お姉ちゃんはお姉ちゃんの好きなようにしなさいよ。私はもう子供じゃないのよ!」と切れ気味に諭されたと言う。

 雅恵は藤堂と共に「トレンド・ツアーリズム」に転職した。

 雅恵の容疑は晴れたとは言え、重要な事件関係者だ。町から離れてもらいたくないと言うのが本音だが、気持ちは理解できた。

「相談してみます」と一旦、電話を切って柊に相談してみた。反対されるかと思ったが、柊は「彼女の線はないな。実家で大人しくしておいてもらえ。こちらに戻って来るまでには事件を解決しておこう」と自信満々だった。

 柊の言葉通り、雅恵に伝えると、「ありがとうございます。戻ってきたら、必ず、ご連絡、差し上げます」と嬉しそうだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ