ダウン・トゥ・アース⑤【完】
ダウン・トゥ・アース最終話です。3000文字くらい。
新作、「天才魔法使いシュナは魔王フェナと恋人になる!」2話もよろしくお願いします。https://ncode.syosetu.com/n2710kp/2/
https://x.com/sunano_kanten/status/1937030922819575904?s=46&t=ys_oDGiLIdLy69bO8Z7sFA
友達の五十嵐組さんがシュナと五十嵐組さんを描いて下さいました!とても可愛くて素敵なので是非ご覧ください!
(2025/07/01 10:20:24)
神様にお任せ!!の新しい話も少しずつ執筆しています。引き続きよろしくお願いします!
なう(2025/07/05 23:59:26)
https://ncode.syosetu.com/n5526ks/1/
全然別の新作です!こちらもよろしくお願いします。
大人になった界司は、立派な政治家になった。強気をくじき弱気を助ける、優しい政治家に。
彼のカリスマ性は凄まじかった。彼の演説を聞けば誰もが彼の虜になり、一生着いてきます!!と口々に言うのだ。神の王は伊達ではない。
彼は、遠くから見ても魅力的だが、近くで見るとその真面目さと一生懸命さが良く見えてより魅力的に見える。時折見せる人間らしいドジや仕草が、ギャップ萌えで、愛らしくて、周囲のものを魅了して止まなかった。
単純に見た目もカッコよかった。漆黒の髪は美形にだけ吹く風に揺れる。全てを射抜くような鋭いガーネットの瞳は、出来ることなら一生見ていたいとすら思われた。2mありそうな程の高い身長に、すらりと伸びる長い脚。支配者の黒と赤が良く似合う。
その低くて力強い声は、聴く者の心を震わせた。畏怖を感じさせ、思わず従いたくなってしまうのだ。彼に従うことが快楽にすらなった。
彼は党を立ち上げた。その名は、世界調和党。スローガンは、「弱者を置いてけぼりにしない」。
勿論、弱者だけでなくより多くの国民が暮らしやすい為の政策も意識している。
彼の掲げた公約は、犯罪の厳罰化、医療費の負担軽減、障害者給付金の価格の引き上げ、また、農家への支援や出産した人への給付金、妊娠時の検診の無償化、裏金への罰則の強化など。
「俺は絶対に弱者を置いていったりしない。この力で、この手で、確実に救ってみせる」
彼がよく言う言葉だった。彼のこと言葉に、政策に、救われた人はとても多い。一般人が言えば絵空事だが、彼が言うと現実味があって、力強く、尊く、神々しかった。聞くものは涙した。
彼の政党はあっという間に議員と議席を増やし、圧倒的な与党になった。政治が分からない人も、とりあえず世界調和党に票を入れておけば安牌かなといった雰囲気も出来た。彼の魅力が若い人々をも政治に引き込み、投票率は格段に上がった。
そうして彼は総理大臣になった。
厳罰化により犯罪の件数は右肩下がり、逆に出生率と食料自給率は界司が総理大臣になったその年に数年ぶりに上昇した。国民の幸福度は上がり、自殺の件数が減った。
性犯罪の厳罰化も終えた界司は、無事復讐とも呼べる悲願を叶えたのだ。
悩みもあった。仲の悪い国との外交では、戦争を仕掛けることが手段として上がることもあった。黒の神達も、その話を聞いて賛成していた。彼らは残忍で好戦的だ。神としての世元なら、反対勢力は武力で潰し尽くす事を考えただろう。そうしたら、立派な独裁者の完成であったが。
しかし人間の界司は違った。彼は博愛的で、全ての国の人と手を取り合いたいと思ったのだ。だから、戦争は起こさない。仲良くなって、助け合って、愛し合う外交をしていた。
界司の言葉は正に神の言葉で、聴く者の心に染み渡り、凝り固まった考えすら変えた。彼の優しさは相手の心を解して隣人愛を思い出させ、高貴な恐ろしいオーラは逆らうことを思いもさせない。もはや宗教家の才能すらあった。
そのお陰で、3つ程の国同士の関係が改善した。計6カ国である。彼が両者と仲良くなり、仲立ちをすることで首脳会談を実現したのだ。
そうして界司は、歴代最長の計20年間の総理大臣としての任期を終えて、後も議員として活躍した。
界司は歳をとる事にその魅力を新たに増した。いつまでも健康で、背筋のシャンと伸びた渋いお爺さんになった。いくつになっても黒いコートの似合う男だった。
麗子は先に亡くなり、天界に神として戻っていた。その後はよく天界から舞月と共にやって来たものだ。
彼は天寿を全うし、齢110歳にして、その人生の幕を閉じた。彼の葬式には、知人だけでも大勢の人が来た。また、国葬も行われた。天界に神として戻った界司と麗子は、変装して国葬の様子を見た。黒の神達も来ていたらしい。
「界司は沢山の人を救って、沢山の人に愛されたんだね。良かった良かった!」
「あぁ。こんなの沢山の人が俺のことを想ってくれたのかと思うと、胸がいっぱいになる。」
人生の節目だしな、と思って献花もした。自分の葬式に献花するのは、不思議な気持ちであったのと共に、達成感で涙が込み上げた。よくここまで頑張ったな、色々あったな、と思ったのだ。
さて、界司は無事に人間としての人生を終えて、最高神に戻った。
その際に必要な儀式があった。
そこは秘匿された世界で、神の一部のみが知っている。宇宙空間の中に、黒の三角形と白の三角形がくっついた床が浮いてる。これは黒の神と白の神を表している。
その中心に、魔法陣が描かれた台座がある。そこに1冊の本が置いてあった。その周りに結界が張ってある。
これは世界の理が書いてある本。儀式というのは、世界の理を思い出す為の儀式だ。世元は神だった頃の記憶は思い出したが、世界の理の記憶は封印されている。
最高神の4人が台座の周りに立つ。
その周りで黒の神と白の神の代表20人くらいが膝を着いて祈りの体勢をしていた。普段はふざけてる夕鶴や霞央留も、厳かな顔をして目を瞑っている。その後ろで目隠しをした聖歌隊の天使が歌う。
本の周りの結界に、シュナ、白越、麗子、世元の4人が同時に触れた。
すると、結界は消えた。
世元は本を1ページ開く。神語で書いてあるそれから、世界の理を読み取った。
20分程で読み終わり、世元は本を閉じる。
白越が厳かな静かな声で、話し始めた。
「では、本の封印をする。世界、麗子、シュナは台座に手をかざせ。」
4人で手をかざす。
白越が詠唱した。
「万象の理綴りし秘本よ、光と闇と静寂に抱かれ、ここに眠れ。」
パン!と結界が張られた。これで儀式は終了だ。聖歌隊は歌うのをやめ、神達も体勢を直した。
世界さんが転移門を開く。そこから各々帰って行った。
「世界、復帰おめでとう。一応聞いておくが、どんな気分だ?」
「楽しみ、だな。人間の時は嫌だったが、いざ神に戻るとこの世界を支配するのは楽しみで仕方ない。いくらでも罪人を裁き、世界を救おう」
「世界さんおめでとう!」
「界司、おめでとう!」
「あぁ、2人ともありがとう。世界の理を思い出すのは2度目だが、この瞬間の感動は替え難いな」
「分かるよ〜!」
「そうか。まぁ、分からんでもない。秘匿された物を知る時に人は快感を覚えるものだ」
「私も、初めて知った時は喜びで涙が出た!」
4人は雑談をしながら帰る。その後、折角だからと黒の間でお酒を飲んで談笑した。それを聞いたアポロンが嫉妬したとか。
その後、正式に復帰を宣言した。長期間天界に居ることを許されている霊は世界さんと麗子さんの復帰に喜んだ。2人の事が好きなのに、いない間に転生の順番が回ってきてしまった霊はお気の毒だったが。そういう霊はまたアストラルティア・セレステリア(ルツェルンのある星の天界)に来れるように約束されるなどの待遇を受けた。新たに入った霊は先人の霊から2人のの話を聞き、期待に胸をふくらませていた。
そうして、新たな日常が紡がれていくのであった。
ダウン・トゥ・アース【完】
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ちなみにwotakuさんの「オメルタ」が作業用BGMでした。書き終わった途端ランダムシャッフルの曲からそれが流れ出したので感動しました。




