アポロン誕生祭5/3
アポロンの誕生日は、古代ギリシャの暦タルゲリオン月の7日である。これは毎年5月辺りになるのだが、今年は5/3に相当するらしい。
本日のメンバーは、シュナ、悪魔達、メアリー、そしてアポロン。南国、ティチーノ(ep.14)に行くのだ。というのも、アポロンといえば太陽。太陽といえば、マンゴー、パイナップル、ヒマワリなど夏の品々。であれば、南国でお祝いをするのが適しているだろうという話になったのだ。
それより先にまず、誕生日プレゼントを渡すために、一行はアポロンの家、in天界のオリンポス山に来た。集合場所である。
インターホンはアポロンの演奏したリラの短いメロディだ。短いメロディでも心地よく、リラックス出来る音である。
扉が開く。
「いらっしゃい」
アポロンが建国的な凛々しい色男の笑みを浮かべて、迎えてくれる。相変わらずの顔面偏差値の高いこと高いこと。神の中でもトップレベルのイケメンは、いつ見ても精巧な顔立ちをしている。
「誕生日プレゼント!持ってきたよ〜」
シュナ達はラッピングBOXを持ってにこやかに立っている。一緒に住むと表情の癖が似るというか、笑顔は皆シュナみたいにメンフクロウみたいである。しかしアメイモンは相変わらずの、むす…とした顔であるし、メアリーはどちらかというと猫みたいな顔をしている。
玄関ホールで開封式を行う。
「私は最後に渡そうかな!まずメアリーちゃん達から渡しなよ!」
「はいなのです〜。私からは、名産地の蜂蜜!太陽っぽいなと思って選んだのです!」
メアリーからは箱のマヌカハニーである。結構値の張る、250gで7200エニーするものである。
「おー、美味そう。ありがとな、メアリー。何に使おうか、紅茶にも料理にも菓子にも使えるな」
アポロンは嬉しそうに微笑を零した。後ろにいる天使の従者に渡して運んでおいてもらう。
「俺が渡すぞ!俺からは、バンジージャンプの体験チケットだぜ!」
オリエンスからは、近くの山で行えるバンジージャンプの体験チケット。豪快な男らしく、面白いプレゼントを用意した。
「バンジージャンプか…」
「アポロンさんはバンジージャンプ苦手か?」
「別に苦手ではないが…好きではないな」
「まぁ、シュナ様と行くといいぜ!ペアチケットだからな」
「え!やったー!怖そう!」
「じゃあまた今度行こうな」
「うん!」
シュナは怖いものは怖いがそれはそうと楽しむタイプなので、バンジージャンプも楽しく熟すだろう。
「俺がいこう…。俺からは、入浴剤。天然温泉に近い風呂になるらしい。」
アメイモンからは、有名な温泉の地域の店が出す入浴剤。その地域の温泉を再現できるらしい。
「おぉ、いいな。肌に良さそうだ。ありがとう」
寡黙なアメイモンらしい静のリラックス系のものであった。
「次、僕ですね。僕からは、エキストラバージンオリーブオイルです。説明によると、青いバナナや青りんご、ナッツの香りがあり、口当たりは甘く、ほのかなスパイスの風味が広がり、最後に苦みや辛みもありバランスよいオイル、とのことです」
アリトンからは、オリーブオイルであった。なんとなく太陽のイメージがある。オシャレなイメージがあるが、アリトンはオシャレな贈り物をするらしい。
「いいな。複雑で重奏的な味がしそうだ。ありがとう」
アポロンは嬉しそうに受け取った。アポロンは料理も上手なので料理に使えるものは嬉しいのである。
「私いいかしら?私からはルツェルンのマッサージ屋さんのマッサージ券ですわ。腕のいいところですの、とっても気持ちいいのですわ」
パイモンからはマッサージ券。ルツェルンにある人気店のものである。
「おぉ、俺が医術の神でもあるからこういうモノを送ってくれたのか?」
「そうですわ!」
「ありがとう。疲れた時に行かせて貰おう」
気の利いたプレゼントであった。
「で、アスモデウスは、さっきから見えてるが…」
「"ヤギ"です。ほら、挨拶なさい」
「メェ"〜!」
ヤギがなんとも愛嬌のあるマヌケな顔で『こんにちは!』と鳴いた。首には赤いリボンが巻いてある。
「先程まで静かにできて偉かったですね」
「メェ〜」
アスモデウスがヤギを撫でる。ヤギは嬉しそうに鳴いた。
「色々聞きたいが…なんでヤギなんだ?」
「悪魔と言えばヤギなので。それから、悪魔代表として、生贄に。人間ではアポロンさんも管理に困ると思ったので。」
「いや、ヤギでも管理には困るけどな。デメテルにでも聞いてみるか…?」
「それからこの子、ミルクも絞れるんですよ。」
「ミルク…」
「みーみ絞れるのです〜!?羨ましいのです〜、ヨーグルト、チーズ、そのまま飲むのも美味しいし、スープとかの料理にも使えるのです〜♡」
「詳しいですね、メアリーさん。その通りです。お好きなようにお使いください」
「おう…。ありがとう。有難くいただくか」
アポロンはなんとなく複雑そうな神色であったが、プレゼントなので有難く頂いた。
「最後はシュナだな!」
アポロンは嬉しそうにシュナの方を見た。こう言っては他の者に失礼だが、大本命である。
「どうぞ〜。慎重にね!」
「おう」
そこそこ大きめのラッピングBOXを丁寧に解いていく。
ぱかっ
中から出てきたのは…
「…っ…こりゃすげぇ…」
アポロンは思わず息を飲んだ。とんでもないものが出てきたなと思ったのだ。
それは、最高級の品質の宝石で装飾した、最高級の竪琴である。
使った宝石は、太陽の象徴としてシトリン、イエローダイヤモンド、サンストーン。芸術と音楽の象徴としてアメジスト、ラピスラズリ、クリアクォーツ、アイオライト。神聖さと永遠の象徴としてダイヤモンド、イエローサファイヤ、ブルーサファイヤ。というてんこ盛り全部盛りの装飾にした。それを職人がバランスよく配置してくれたのだ。
軽く数十億エニーはしている。シュナは昇進しまくって給料が天文学的な数値になっているのでこんなものが作れたのだ。
「とんでもないものを送ってくれたな…。ありがとう、シュナ。だがこれ、いつから準備してたんだ?こんなの作るの2年近くかかるだろ」
「うん、アポロンがリラ弾いてるって知った9月くらいから企画したよ!職人たちには精神と時の部屋みたいな、時間が早く流れるように作業部屋に神力をかけて、巻きで作ってもらったの!」
「そうか。にしても、凄いなこれ…本当に、俺が使っている竪琴並の品質だ。」
アポロンが使ってるのはやはり神なので最高品質の物をつかっているが、それと見劣りしないものであった。
「使ってみていいか?」
「うん!聞いてみたい」
にこやかな顔をしている2人だが、シュナは内心、
(やったー!アポロンの演奏だ)
と両手を上げて喜んでいた。アポロンが今にも嬉し泣きしそうなしんみりとした雰囲気を出しているので両手はあげなかったが。
「弾くぞ」
〜♪
それは暖かい太陽のような、風の走る緑の野原のような、春から夏にかけての季節を思わせる曲であった。とにかく温もりに溢れていて、まるで母の腕の中のような気持ちにさせる。上質なリラが奏でる音は、耳馴染みが良く、聞いていて心地よかった。
まだ新品なので少し癖があり音が硬いが、使っていくうちに音が染み込んでくるだろう。
シュナは、自分がプレゼントしたリラでこんな素敵な演奏をしてくれるなんて、と嬉しく、曲の良さも相まって涙が出てきた。
演奏が終わった。
パチパチパチ!!
皆の拍手が響く。
アポロンも喜びのあまり自然と涙が出てきてしまうのであった。
「ありがとう、シュナ…。」
「うんっ…!」
2人は抱きしめあった。
アポロンはリラを天使に渡す。
「丁重に扱えよ」
「承知しております」
それはアポロンの自室に運ばれた。
「じゃあ、ティチーノ、行こっか!」
「行くか!」
「「「おー!」」」
シュナが白い転移門を出す。いざ行かん、南国の島へ!
꩜ ꩜ ꩜
ギリシャ神話の神々に捧げるものと言えば、百牛犠牲。牛肉である。ということで。
「焼肉パーティーだー!!!」
「よっしゃー!!」
「「「フー!!!」」」
パチパチパチパチ。本日は、南国のフルーツや花と共に焼肉を楽しむ日とした。BBQセットを借りたのだ。
「お花屋さんでハイビスカスとヒマワリ買ってきたからね!飾るね」
「ありがとな、シュナ」
「かわいいのです〜」
「太陽っぽいですわね」
皆でお花を鑑賞してみた。鮮やかな色が目に沁みるようだ。早いが、夏らしい色合いである。
「火が起こせましたよ」
「あ!アスモデウス、ありがとう!じゃあ何から焼く?お肉?野菜?」
「野菜からですわね」
「野菜からでしょう!」
「肉からだ」
「肉からだろ!」
「「「む〜!!」」」
意見が割れた。バチバチと目線の間で火花が散る。
「まぁ、では半分ずつで焼きますね。ニンニクはホイルに包んで日の中に入れておきましょう」
「うん!私は野菜から食べよ〜」
「俺もそうだな」
「私はどっちでもいいのです〜」
なんとなくその方が健康志向な感じがするので。人間の時からの癖である。アポロンも野菜から派らしい。
「焼けましたよ、お肉」
「よし」
「よっしゃ!」
お肉の方が火が入るのが早い。
「いいお肉をシュナ様が買ってくださいましたから、味わって食べましょう」
「おう!」
「承知」
「主役より先に食べるのはないよな?アポロンさんも食べたらどうだ?」
「それもそうだな。いただくか。」
「というか乾杯してないよ!飲み物注がなきゃ」
ということで急いで飲み物を注ぐ。皆ビールを飲む。焼肉にはビールである。
「皆、今日は集まってくれてありがとう。俺の誕生日に、乾杯!」
「「「乾杯!!」」」
カーン!!!!
「じゃ、お肉たべるぞ」
視線が集まる。アポロンは特に気にかけず、そのまま1口食べる。
「ん。ふ、美味しいな。」
思わず笑みを零したアポロン。
「よかったー!私も食べよ!私も食べないとみんな食べれないもんね!」
「俺も食べるぜー」
「俺も」
皆で一緒に口に運ぶ。
「ん〜美味しい!旨みがたっぷりって感じ!」
「柔らかいな!」
「脂がのっている」
「野菜も焼けましたよ」
「アスモデウス、野菜食べたら代わるのです!」
「えぇ、お願いします」
野菜は、玉ねぎ、なす、ピーマン、トウモロコシ。
「玉ねぎ甘いですわ!」
「ナスとろとろだね〜」
「ピーマンも美味しいのです!」
「トウモロコシもこだわってるんだな。甘くて美味しい」
その後代わる代わるでお肉と野菜を焼いて、皆でお腹いっぱい食べた。
「デザートにね、マンゴーとパイナップルと、それが乗ったケーキ!太陽っぽいね!」
「嬉しいな」
切り分けたマンゴーをいただく。
「わっ、凄い!まろやかで、甘くて、トロトロ!」
「芳醇な香りがするな」
「美味しいな!」
「馬鹿舌のオリエンスにはこの美味しさは分からないのです」
「う、うるせぇ!美味しいのはわかるわ!!」
「それだけなんですね。この単調ではない後を引く複雑な甘みが分かりませんか?」
「そうですよ」
「うっ…な、う、なんか美味い!」
やはりオリエンスには少し難しい話だったらしい。
パイナップルも食べた。
「自然な甘さだ!」
「華やかでトロピカルな味ですわ〜!」
「なんかレベルの高い?いい感じの酸味なのです!」
その後、ふわふわのフルーツケーキを食べた。
片付けをしながらアポロンとシュナは話す。
「いっぱい食べたね〜」
「あぁ。シュナ、ありがとうな。こんな素敵な会を開いてくれて」
「どういたしまして!祝えて嬉しかったよ!これからもよろしくね、アポロン!」
「よろしくな。愛してる、シュナ」
「ふふ、私も!愛してるよ、アポロン!」
そうして、お誕生日会は終幕したのであった。
閲覧いただきありがとうございます!どのお話でも感想、リアクション、星5評価などお待ちしております!アポロン、お誕生日おめでとう!大好きです!




