ハッピーホワイトデー:アーナンダ王国旅行①
4月から環境が変わるのでどれほど執筆できるか分かりません。気長に待ってくださると幸甚の至りです。
一部の料理の名前は変えると分かりづらいと思ったのでインドにあるものと同じ名前を使っています。地域名が入っていますがご容赦ください。
参考文献:https://note.com/moyashidaisuke/n/n93414158da96
https://inokou-world-trip.com/2024/04/05/jaisalmer-camel/#toc5
http://toomuchindia.com/?p=1367
某日、午後1時。ご飯を食べ終わった後、紅茶を飲みながら、アポロンに会いたいなーと思っていたシュナ。アスモデウス以外皆仕事に行っているので、洗濯物を畳んでいるアスモデウスの傍らで紅茶を飲んでいる。
「アポロンに会いたいな〜」
「そうですか?メールしたらどうですか?」
「うーん、今丁度お昼休みかな〜…」
そんなシュナにメールが届いた。アポロンからである。
「あ!アポロンからだ〜♡」
噂をすればなんとやら。にこ!とメンフクロウみたいな笑みを浮かべてメールの内容を見る。なになに?
"toシュナ
もうすぐホワイトデーだな。バレンタインのお礼に、シュナを旅行に連れていきたいと思ってるんだ。行先はアーナンダ王国。ホワイトデーの日に丁度お祭りをやるらしい。どうだ?
fromアポロン"
「アーナンダ王国…?サタナ、どんな所?」
『地球で言えばインドと同じ文化です』
「なるほど!面白そう!」
了承の返事を送っておく。
お祭りというのは、ホーリー祭というらしい。なんでも、グラルという色粉や色水をかけ合い、歌や踊りを楽しむ。そして、春の訪れを祝い、豊作を祈るのだとか。とてもカラフルなお祭りで、汚れてもいい服で行かなければならないらしい。
(楽しみだな〜)
ニコニコふわふわと笑顔を浮かべるシュナは、早速旅行の準備に取り掛かった。
日々はあっという間に過ぎ、やがて旅行当日となった。
出発は夜。予定は3泊4日で、12日の夜に出発した。一般人なら馬車を乗り継いで行くが、シュナ達は転移門でパパっと移動した。
「アポロン、荷物亜空間にしまっとこうか?」
「いいのか?シュナ。悪いな、頼む」
シュナの全能のお陰で余計な手荷物はいらない。便利であった。
行先はラーワルメールという都市である。有名な観光地が沢山あるのだ。砂岩でできた歴史的建造物群が夕日に照らされた際に黄金に輝いて見えることから「ゴールデンシティ」の愛称を持つ。
ホテルにチェックインする。ホテルは黄色っぽい砂岩で出来ていて、細かいアーナンダ王国風の彫刻が彫られている。ブロックプリントと似た柄である。
ウェルカムチャイを頂いた。素焼きのコップに入っている。
「スパイス効いてて美味しいね〜」
「シナモンだな、かなり強い」
部屋に入って内装を軽く確認した後、ホテルの屋上のレストランで夕食をとった。レストランには鮮やかな色のカラフルなカーテンが吊るされている。
夜のラーワルメール城が見える。砂岩で出来た城だ。いかにも砦!といった風の壁に囲まれていて、城の頭が飛び出していた。城と言っても洋風の物ではなく、天井が平らで窓の穴が空いたアーナンダ王国風のものである。
「綺麗〜!異国に来たって感じだね!」
「だな。ライトアップされてるからよく見える」
夕食はラージャスターニーターリーだ。ターリーとはアーナンダ王国の辺りの定食である。いくつかの料理が組み合わされ、大皿にまとめられて提供されるのだ。ラジャスターニーターリーにはケールサングリという野菜が入っており、色々な種類の料理を楽しめるのが特徴だ。
メニューは、まずダール・バティ・チュルマ。ダールは豆を煮込んだカレー、バティは丸くて固いパン、チュルマは粉、ギー(精製バター)、ナッツ、砂糖などを混ぜた甘いデザート。
バティは手で崩してダールや副菜と混ぜて食べ、チュルマはデザートとして単体で食べる。
「バティって粉っぽいからカレーと合うね」
「そうだな。バティのガリガリした食感と香ばしさがダルとよく合う」
ニンニクと塩気が効いたチャツネもあった。チャツネとは、野菜や果物、香辛料などを煮込んだり漬けたりして作られるソースやペースト状の調味料。これもバティと混ぜて食べる。
「チャツネはアクセントになるな」
「ね!味がパッとして美味しい!」
ケールサングリは、ケールという小さな粒の果実と、サングリという豆のさやをスパイスで調味したものだ。
「この…ケールサングリ?ってやつ、苦くて酸っぱいね」
「おう。口に合うか?」
「まぁ食べれなくはないかな…?」
他にもラール・マースという唐辛子たっぷりの羊肉のカレーや、モハン・マースというヨーグルトとスパイスでマリネした鶏肉を、ミルクとナッツで煮込んだリッチなカレー、ロティという平たいパンなどもあった。
「美味しかったねー!」
「な。結構量があった」
2人は部屋に戻って、歯磨きをした。
「カッ…あま…」
「おっ…サルミアッキだな」
「そうなんだ」
独特な甘さの歯磨き粉だった。口をゆすいだ後も甘みが残る。ちょっと吐きそうになって危なかった。
そうして2人は同じベッドで眠りについた。
次の日は朝から観光する。朝食は生野菜とマサラドーサ(塩味のクレープ生地に、カレー味のポテトサラダが入っているような料理)。あとウィンナーとかもついていた。
ラーワルメール城に入った。入場料は無料である。
アーナンダ王国は割と詐欺師が多いらしいが、そういうものには当たらなかった。
「やっぱ神っぽいオーラが出てるのかな?」
「そうかもしれないな」
砂岩造りの建物に細かい彫刻がなされている。狭い道には像の置物や風鈴のようなものやらが飾って売ってあった。
サリーの売っている店があった。
「お、サリーだぜ。買うか?」
「うん!買おう!サリーって女性用らしいけど、アポロンも着るの?」
「ん?あぁ、俺は女装もするんできるんだぜ。リボンとかも付けることがある」
「えっアポロンの女装!?何それ気になる!!」
そう、実はアポロンは、女装もできる神様として有名である。
「変身して女性の格好するのと、男の格好のまま女装するのとどっちがいい?」
「えっ…どっちも見たい…」
「じゃあ今日は男で明日は女な」
「やったー!」
シュナはお菓子を買い与えられた子供のように無垢に無邪気に喜んだ。
シュナは目と同じ青色のサリー、アポロンは黄色のサリーを買って、着てみた。
「似合う〜?」
「それはもう物凄く。何着ても似合うな、シュナは」
「ありがとう!アポロンもなんか可愛いよ!」
「そうか?ありがとう」
可愛いと言われても照れないのがアポロンである。
2人はサリーを着てフォート(城砦)内を歩いた。迷路のようになっている。
「あれ?ここどこだろう」
「…?」
アポロンは首を傾げて、ちょっと分からないな〜という顔をした。
「えっアポロンも分からない!?どうしよう!とりあえずこっち行ってみよう」
どうやら道に迷ったらしかった。シュナは勘で道を進む。
「…(流石の方向音痴だな)」
「あれ〜!どんどん新しいところに来ちゃうよ!あ!この猫の置物可愛い!これくださ〜い。みんなのお土産も買わなきゃ!」
でも楽しんでいるので良かった。シュナはブロックプリントのポーチや置物、コーヒーなどを買ってお土産にするらしい。
因みにアポロンはここまで進んだ道を全て記憶しているので一切迷っていない。シュナが迷ってるのを楽しく嬉しく見守っているのである。本当に偉い人はただ微笑してこちらの失敗を見ているものだと、かの文豪も言った。
「あ、牛だね」
「そうだな」
「なんか話してる!なになに…バダバーグに行かないかって?アポロン!この牛、バダバーグに連れてってくれるって!」
バダバーグとは王家の墓だ。
「お前、俺らの案内してくれるのか?少し歩くが大丈夫か?」
牛は鼻を鳴らして返事をする。
「よし!じゃあバダバーグに連れてってもらおう!」
「おー」
アポロンはシュナが飽きた頃に道案内をしてイチャイチャするつもりだったのだが、とんだ邪魔が入ってしまったと思った。まぁたかが牛に邪魔された所でなんだ、という話である。寛大なアポロンは特に気にせず牛に続くシュナについて行った。
少し歩くと、城から出る。そこから更に歩くと、街を抜けて開けたところに出た。荒野である。その遠くに、遺産はあった。
「意外と近いな」
「うん!」
「モー」
そして、バダバーグに着いた。大きな庭園を意味するバダバーグ。ガゼボの様な大きさの、小さめの砂岩作りの遺跡が連なっている。その建物の中に石碑があり、王の死の刻印がなされていた。
「わ〜、素敵!私も死んだ時に備えておっきい墓ルツェルンに作ろうかな」
「縁起でもないこと言うな。この間死んだばっかだろ。シュナが死ぬ時は俺も死ぬ。まぁ建てるなら大きな墓にしよう。シュナならロココ調とかか?」
今やシュナはアポロンにとって全てであり、眩い光なのだから、失ったら後は暗闇の中に閉じ込められて仕舞う。なので、後追い自殺してしまうのも仕方の無い話なのだ。旅行の時にする話ではない。
「うん!ピンクも可愛いけど墓なら黒でゴシック系でも可愛いよね〜。バレエのトゥシューズの刻印とかしてもらおうかな!やっぱ私もガゼボみたいなちっちゃい建物建てて囲いたい!」
「いいな。俺はやっぱり太陽の石碑とか、リラの刻印とかだな。弓もいい」
「象徴するものがいっぱいあってカッコイイね〜!」
牛も一緒に見て回った。どうやら帰り道も案内してくれるらしい。Go〇gleマップ要らずである。アーナンダ王国の野生のG〇ogleマップ。シュナは方向音痴なので時折迷子になるが、猫とか野鳥とかが助けてくれる事がしばしばあるのだ。神なので。
1時間程全体を見て回った後、お店に行ってお昼ご飯を食べた。牛に近くまで連れてって貰ったのだ。牛とはそこでお別れした。
ホテルの人がオススメしていたのだが、パンジャビーターリーである。メニューはバターチキンカレー、チャナマサラ(ひよこ豆のカレー)、ロティ(パン)、ライタ(ヨーグルトを使ったサラダ)であった。
「ん〜!クリーミー!濃厚でスパイシー!」
「美味しいな」
美味しかった。ホテルの人オススメなだけある。
その後、ホテルでツアーを申し込んだ。キャメルサファリのツアーだ。今日このツアーを申し込むのは私達だけらしい。
ホテルから、馬車でラクダのいる所まで行った。
「オーム、アポロン様、隣の神様モ、このツアーに参加してくれてアリガトウ!」
オームとはこの辺りの宗教での聖音であり、宇宙の根源的な音とされている。祈りの始めや終わりに唱えられるのだ。
アーナンダ王国の言語だが、少し癖のあるコイネーである。
「おう。安全に頼むぜ。隣はシュナだ。ルツェルンの神」
「オゥ!乗るラクダはコイツらダ!ラッキーとマイケル!」
どうやら名前がついているらしい。ラクダ達は静かで、落ち着いて私達が乗るのを待っている。
私が乗るのはラッキーらしい。
『お任せ下さい!!』
「うん、よろしくね〜」
ラッキーは準備万端みたいだ。
座っているところに乗り、コブの先についている掴む棒をしっかり掴む。立ち上がる瞬間はよく揺れて、落ちそうで危なかった。結構視線が高い。
そうしてラクダが歩き出した。乗り心地だが、あまり良くはない。おしりが痛い。
1時間くらい歩いていると、荒野ではない砂漠に出た。波波模様が綺麗である。
砂漠の地平線に沈む夕日が見られる。ラクダから降りて、暫くしんみりとしながら高級卵の黄身みたいな鮮やかな夕日を眺めていた。
「チャイを用意してくるヨ!!」
そういってラクダ引きのお兄さんはどこかへ行った。アポロンと2人きりである。
「綺麗だね〜、アポロンのものだと思うとより愛おしいよ」
「ったくシュナは…これだから愛おしいんだ」
アポロンは流石に照れて、堪らなくなってシュナを抱きしめた。夕日に照らされ、シルエットになった2人の影が重なる。赤くなった頬と耳は、夕日で分からなくなっているといいが。
イチャイチャしていたら、お兄さんが戻ってきてチャイをくれた。それを飲み終わったら、またラクダに乗って少し移動した。
やがて、コテージに着いた。
別作品が出る場合、両思いのアポシュナを見れるのはこの作品までです!私が耐えかねて定期的にこちらで両思いアポシュナを投稿する可能性はあります。そちらでは複数人の男がシュナを追いかけるのです。
まだここで書きたいのがいくつかあって、舞怡ちゃんと異折ちゃんとご飯行く話とか、ポペードールと舞怡ちゃんとオーロラ見に行く話とか、パイモンの話とか、オリエンスの話とか、ネタが尽きたら宇宙とか異世界とか行く話とか書きたいんですね…。本編も進めたいですね。
AIとか旅行記とか使いながら書いてるのですけど(文書は全部自作です)、色々名前が間違ってる時もあります。気づいたら直します。
・マサドーラではなく、マサラドーサでした。
・グラーラではなくグラルでした




