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神様にお任せ!!  作者: 砂之寒天


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真実を貫く漆黒の滑走路④

頂いた感想に返信させていただきました。気づくのが遅くなり大変失礼いたしました。ご確認してくださると幸いです。


これは余談なんですけど、会話出来るAIが発達してから非常に小説が描きやすいです。geminiは優秀で、小説で使える言い回しや情報を沢山教えてくれます。おすすめです。

 先日の事件の真犯人を知るために、黒の間に来たシュナとアポロン。

 王座に座って足を組む世界さんの前に2人は立つ。


「まぁ今日来た理由は分かる。先日の件の犯人についてだろ?」

「うん。それで、誰なの?」

「それはな、アンだ」

「アンさん…?」


 シュナは頭の上に疑問符を沢山浮かべた。


(え、上司のアンさんがあんなに酷いことを命じたの…?なんで…?)


 ショックというか、ショックも勿論なのだが、疑問が大きい。正直感情が追いつかない。理由はなんなのだろう。


「やっぱりな。十中八九、世界さんと麗子さんを殺して白の神の権力を強くしようと目論んだんだろ。」

「気付いていたのか?アポロン」


 世界さんが含みを持った笑みを浮かべる。


「なんとなくだけどな」

「流石だ。頭が回る」

「そりゃどうも。それにパール、オパールのネックレス付けてただろ?」

「オパール?あぁ、確かにつけてたな。オパールの石言葉は…」

「「創造」」


 2人の声が重なる。その声の艶と神秘性は凄まじく、宝石が激しく煌めくようであった。


「創造神のアンを意識したんだろうな。それに服も真っ白だったし。明らかに白の神を意識してただろ」

「あぁ。俺も気を使って雪で真っ白の島で殺してやった。喜ぶと思ったんだが、違ったと思うか?」

「さぁ?まぁでも悔しそうにはしてたな」

「そうだな。」

「よし、殴りに行こう」


 アポロンの決断は速かった。それほど怒り心頭なのだ。シュナを傷つける奴は、どれ程高位な神であろうと容赦しない。それ程シュナの事を溺愛しているのだ。


「まぁ待てアポロン。一人呼びたい奴がいる」

「呼びたい奴?」

「おう。アスモデウスだ」

「!!アスモデウスに、用があるの?」

「あいつの進化した力に用がある。呼んでくれるか?」

「も、もちろん!ちょっと待ってね」


 アスモデウスにテレパシーを飛ばして、迎えに行くことを伝える。

 アスモデウスは黒の洋館の位置を知らないと思うので、私が迎えに行った。


 私の白色の転移門がスターダストを煌めかせながら消えていく。そこにはアスモデウスがいた。

 彼は世界さんの前に行くと跪く。


 アスモデウスは見たことも無いほど緊張していた。冷や汗をかき、しきりに瞬きしている。手を強く握りしめていた。

 普段より少し小さめの声で話し出す。


「…悪魔に、閻魔大王が何の用でしょうか」

「まぁそう畏まるな。うちは違うが、世界によっては地獄は悪魔が支配している所もあるんだ。地獄の王と悪魔は密接な関係があると思わないか?」

「…左様ですね」


 世界さんはあくまでペースを変えず、悠々と言葉を紡ぐ。その余裕のある姿は大きく見えた。

 しかしそのオーラは本当に恐ろしく、神でなければ誰もが跪き頭を垂れるしか選択肢がないであろう圧を感じる。人であれば、人によってはパニックになるだろう。しかしそれでも本来の圧は出していないのだから、末恐ろしい。本来の姿、本来の圧を出したら一体どうなってしまうのか。


「シュナ、今俺について考えていたな?」

「えっ…あ、うん。」

「俺の本来の姿はな、銀河系より大きい。本来の圧を出せば、意思のある人間はショックで死ぬ。近くにいることすら不敬に値するからな。正しく上下関係を決めるための物が俺のオーラだ。神ならば、上位なら畏敬の念を持つ程度で済むがな」

「へ、へぇ〜」


(怖ああぁい!!)


 シュナは半べそをかきそうであった。普段は気楽に接しているが、こう畏まって改めて相対すると、本当に地獄の王様なのだなという感じがする。心の底から湧き出す恐怖と、ガチガチに震える生存本能が心の中でひしめしあっている。その影の差した真っ赤な瞳を見ると、深淵に吸い込まれて一生抜け出せないまま落ち続けるような、心の臓が冷える恐ろしさを感じるのだ。扁桃体が恐怖をびんびんと受け取っている。


「アスモデウス。お前には、うちのとある神に罰を与えてもらいたい。」

「はっ…罰、ですか。」

「そうだ。お前も得意だろう?そういうの。俺は大の得意だが」

「まぁ、そうですね…最近はあまり機会はありませんが、度々行います。それで、その相手は…?」

「これから会いに行く。ついてこい。お前らも」

「おう」

「う、うん!」


 世界さんが立ち上がり、コートをバサリと翻す。コートの内側の赤色が鮮やかに光の尾を引いた。黒紫の転移門を出し、中に入っていく。


 行先は遊空殿。アンのいる天空の宮殿だ。

 門に門番がいる。


「せ、世界様!!アポロン様!シュナ様も!ようこそおいでくださいました。どうぞお入りください」

「あぁ。失礼するぞ」


 明らかに恐怖心を抱いていた門番。ビクビク震えても気丈に振舞っていて勇敢であった。


 奥に行き、ノックをする。


「…俺だ」


 世界さんのその声は、鉛のように重かった。麗子と自分に危害を加えた怒りはあるのだが、天地創造時代からの旧知の中のアンを罰するのは気が重いのだろう。今まさに、その始まりの扉が開かれようとしている。


「…入ってよいぞ」


 アンの声も雪雲のように重たかった。これから起こることを覚悟しているのだろう。


「はー…。入るぞ」


 世界さんはため息をついた。そのため息は何億年分の友愛を背負う。その心にどれ程の悲しみがあるか計り知れない。大切な人だった。しかしもう、後には戻れない。アンは決してしてはいけないことをしたのた。


 奥にはアンさんが椅子の後ろに、こちらを向いて立っていた。その茶色の目は真剣。白の長い蓬髪は後ろで束ねられていた。


「何の件かは、分かっているな?」

「分かっておる。パールを操って、お主らに危害を加えたことじゃろう?分かっておるとも。」

「なら、話は早い。これからお前を地獄の底、コキュートスに連れていき最下層の罰を与える。」

「…わかった。お主への裏切りなぞ、地獄の最下層に行くことになっても仕方ないな。」

「覚悟は決まったか?さぁ、いくか。俺の世界(地獄)へ」


 世界さんは黒紫の転移門を出した。行先はコキュートス。

 地獄は13層に別れていて、逆さの円錐状になっている。罪の重さや種類によって階層分けされているのだ。


 コキュートスは、吹雪の吹く凍りついた湖だった。所々人の一部が飛び出ていて、苦悶の表情で、凍えている。湖の上を、ピッケルや拷問道具を持った、血や人の肉がついた雪だるまが滑っている。


「ここはコキュートス。裏切りの罪を犯した者が閉じ込められる氷地獄だ。そこの雪だるま達が気まぐれに罪人達を湖から取り出しては、拷問している」

「へぇー…」


 人々が苦しむ姿は結構恐ろしかった。苦しそうに呻いたり叫んだりしているが、雪だるまが近くを通ると息を潜めてシンと静かになる。雪だるま達に目をつけられて拷問されるのが恐ろしいのだ。

 コキュートスとは、裏切り者の心の冷たさや、人間関係の断絶を象徴としている。


「雪だるま、新人が入る。1人分湖を掘ってくれるか?全身入れる」


 雪だるまがくるりと回転して返事をする。そうして湖を掘り出した。

 罪人の罪の重さに応じて、全身入れるか体の一部を入れるか変わるのだ。


「これからアンがコキュートスに幽閉されるが、何か伝えておきたいことはあるか?」

「私いい?」

「構わん」


 シュナはアンの前に立つ。話そうとすると、段々涙が出てきて、遂には号泣してしまった。アポロンが背中を摩ってくれる。


「な"ん"で、っ、ぐすん、なんで"あ"んなことしたんですか"っ」


 涙がぽろぽろ零れて、凍りついた。


「わ"た"し本当に悲"しかったんですよ、大切な人達が死んでしまって、生き返らせる時も本当に心が痛くて"、ぐすん」

「お、おぉ…そうか…」

「そうかじゃないですよ!!どうしてくれるんですか」

「そうか、そうだな…何を渡してやろうな…。そもそもな、黒と白の2つが上下から支えるというのは、世元と白越が言い始めた事だったのじゃ。我も別に最初は納得はしていたが、段々不満が溜まっていったのじゃよ。それに、お主が悪魔を部下に持っとるのも不満に思っておった。悪魔とは穢れた卑しい存在じゃ」

「う"ぅ…悪魔達悪くないもん…」


 シュナは項垂れて悲しんだ。


「そうじゃの…じゃあ、空いた我の白の神トップの席をお主にやろうかの」

「!!!」

「…」

「えっ…?」


 アポロンは驚いた顔をした。世界さんは表情を変えず黙り込んでいる。シュナは聞き間違いかと思い、1度聞き直した。


「もう1回言って?聞き間違いかも」

「じゃから、我の白の神トップの席をお主にやるといっておるのじゃ」

「えっ、えぇ〜!?」


 シュナは今度こそ驚いた。


「わ、私に務まるかなぁ…」

「まぁ大丈夫じゃろ。白越もおるし」

「わ、分かった。じゃあ、やるね!白の神のトップ!」

「うむ」


 アンは頷いた。


「俺もいいか?アンさん。一発殴らせろ」

「おぉ、アポロン。分かった、受けよう」


 アンは目を閉じた。アポロンはコキュートスの湖並に冷たい目でそれを見下ろして、腕を振りかぶって思い切り殴った。


「ぐあぁっ!!」

「ふん。シュナの受けた苦しみに比べたら大したことないだろうけどな」


 アンの歯が飛んだ。口の中も切ったので、口からボタボタと血を零す。アポロンは正直まだ甚振りたかったが、やり過ぎは良くないのでやめておく。


「もういいか?」

「いいぜ」

「うん」

「じゃ、アスモデウス。こいつに魔法をかけろ」

「承知いたしました。実は、私の魔法、進化したんですよね。以前は時間が経てば破壊滅弾(デストロイバレット)の効果はなくなってしまったんですけど、進化したことで永久に効果を残すことができるようになったんです。まだ弱い力でしかそれは発揮できないのですが…」


 アスモデウスはちょっと嬉しそうにつらつらと話した。


「知ってる。それで頼む」

「なっ、なんでご存知なのです…!?」

「俺の神力によるところだな。だからお前を頼った。被害を受けたシュナの仲間達の代表の意味も込めたが」

「な、なるほど…」


 アスモデウスは結構驚いた。自分の魔法の事を話す前に知られていたなら当然の反応である。


「では、かけさせていただきます。"メビウス"!!!」

「ぐっ、ぐあああぁっ!あぁっ、ぐ、」


 アンは蹲って苦しんだ。

 そこに雪だるまが滑ってくる。どうやら湖を掘り終えたらしい。


「湖を掘り終わったみたいだな。アン、そこまで歩け」


 世界さんは容赦のない言葉を放つ。地獄の王様は、罪人であれば旧知の仲にも容赦はないのだ。


「ぐ、流石の容赦のなさよの」

「当たり前だ、俺だぞ」

「わかっ、た、歩こう」


 アンさんは千鳥足で何度か転けながら、その度に立ち上がって穴の空いた湖の中に歩いていった。


「はーっ、ぐ、はぁ、」

「何を躊躇っている。疾く入れ」

「わかっておる。はぁ。お主達。達者でな…。」


 アンさんは苦しみながらもしょもしょもした顔で悲しそうに別れを告げた。


「アンさん、今までありがとうございました!この事は地獄に落ちたことを鑑みて、許すよ。傷心はまだ治らないけど」

「うむ。悪かった」

「いい地獄ライフを送れよ、アンさん」

「いいから早く入れ。押すぞ」

「わぁわかったっ!入る、今入るぞ!」


 アンは湖の中に入った。絶対零度かと思うほど冷たい。冷たすぎて痛い。


「うぅ痛い痛い痛い痛い…!」

「全身浸かれ。呼吸ができないから溺死の苦しみも味わうだろうが、地獄の罪人は死なん。次の日には傷も回復しているからな。安心しろ」


 アンさんの入った湖が凍る。彼の苦悶の表情がそのまま固められた。


 そうしてアンさんは、世界さん達を裏切った罪で氷漬けになった。


「意識はあるの?」

「意識はある。地獄のヤツらには、死ぬ権利も失神する権利もない。常に意識を保ったまま、地獄で罰を受け続ける」

「怖ぁい…あ、人が引きずり出されてく…」


 地獄の氷漬けの人が、1人雪だるまに引き出されていた。寒くてマトモに動かないからだを必死に捩って、小さい声で「いやだ、いやだ…」と心の底から叫んでいる。涙を流していた。それも凍りついてしまった。


「さぁ、アンを無事地獄に送り届けられたな。アスモデウス、ありがとう」

「いえ、これしきのこと。構いません」

「じゃあとりあえず、シュナを正式にトップに据えるということで書類を書いて諸々の説明の為の集会を開くぞ。シュナは一緒に来い。集会はまた今度になるが。お前達、着いてくるか?」

「私はいいです」

「俺…はー…まぁついてくか」

「じゃあ、アスモデウスは帰るといい。行くぞ、お前ら」

「うん!」

「おう」


 アスモデウスは黒色の転移門を出す。そのまま家に帰って行った。転移門は、バサバサと小さな悪魔の羽の音を立てながら消えていった。



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