節分シュナ宅!
参考文献
https://u.lin.ee/RmhMaHR?mediadetail=1&utm_source=line&utm_medium=share&utm_campaign=none
https://search.app/d3nCD1JZysKrQfJo7
本日2月2日は節分である。例年は2月3日であるのだが、閏年のような関係で立春の日が変わって、節分の日も変わる時があるらしい。
節分。それは、一年間の健康と幸せを願って悪いものを追い出す日。
シュナ宅でも節分を楽しむことにした。
門口には、やいかがし(焼いた鰯の頭をヒイラギに刺したもの)を掲げる。イワシを焼いたときに出る臭気によって邪鬼の侵入を防ぎ、ヒイラギの葉にある棘は鬼の目を刺すのだ。
お昼ご飯には恵方巻きを食べた。7種の具が入った恵方巻きである。7種の具が、七福神の福を巻き込むことの比喩になり、それを食べることで福が取り込めるのだ。
今年の恵方は乙、西南西である。
「サタナ!西南西ってどっち?」
『こちらです』
皆が見える様に、宙に白い矢印が表示された。
「便利だな!」
「うん!」
恵方巻きはパイモンとアスモデウスが作った。料理は皆できるのだが、当番がこの2人だったのだ。ちなみに飾り付けのセンスが1番無いのはオリエンスである。
「よーし!恵方巻き食べるよー!いただきまーす!」
「「「いただきます!!」」」
皆で並んで、黙々と恵方巻きを食べ始めた。
もぐもぐ。もぐもぐ。
オリエンスがいの一番に食べ終わった。
「よし!これで福を取り込んだぜ!メアリーは食べ終わったか?」
ふるふる
メアリーは黙って首を振る。メアリーは食べるのが遅い方である。
「おー…そうか」
オリエンスはメアリーの目の前に移動する。メアリーは怪訝な顔をした。
そして。
オリエンスは、とびっきりの変顔をした。
「ぶっ!!!」
「ははははは!!メアリー吹いちまったな!!!」
恵方巻きで蓋をしていたから米が飛び散らなかったのが幸いか。メアリーは怒ってぷるぷると震える。
パシン!!
メアリーは怒った顔でオリエンスに平手打ちした。
「いって!!!何すんだてめぇ!」
「ごくん。オリエンス、お前こそ何をしている。メアリーが可哀想だろう」
「いーんだよ、メアリーは」
パシン!!!
もう一度メアリーから平手打ちが飛んだ。今度は逆の頬である。
「ごくん。オリエンス、その辺にしときなよ」
シュナも食べ終わった。
「え、メアリーじゃなくて俺なのか!?」
「今のはオリエンスが悪いなぁ」
「そうか…悪かったよメアリー!」
うんうん
メアリーは頷いた。
「ごくん。恵方巻きって食べるのが遅いほど不利になる行事でしたか?」
「あぁそうだぜアスモデウス!危なかったな!」
「そんな行事じゃないからね〜」
「ごくん。僕も危なかったですね。福を飛び散らせる所でした」
その後パイモンが食べ終わって、メアリーが1番食べるのが遅かった。一口が大きくても可愛いが、メアリーは小さくて可愛い方なのだ。
その後、時刻は5時半。日も沈んできた頃である。
豆まきの最適な時間は、日が落ちてから夜にかけてだ。鬼が来るのがこの時間帯にやってくるとされる為である。
「知ってますか?我が君。悪魔も鬼も、英語ではデーモンなんですよ」
「そうなんだ!じゃあ鬼は外って悪魔も祓っちゃうのかな…?どうなの?サタナ!」
『「鬼は外、福は内」のここで言う「鬼」とは病気や怪我などの邪気を言います。悪魔達の事を祓う訳ではないでしょう』
サタナは悪魔達にも聞こえるようにして説明してくれた。
「だって!良かったね!」
「はい。鬼役は誰がやりますか?」
アスモデウスは嬉しそうな笑顔だった。
「やっぱオリエンスなのです。悪役なのです」
「あぁ!?誰が悪役だって!?」
「鬼っぽいのはアメイモンもそうですわよね。なんだかずっしりしているというか…大男のイメージがありますわ」
「そうか。では俺とオリエンスが鬼役をやろう」
「…まぁいいか…。おう!やるぜ!」
という事でオリエンスとアメイモンが鬼役をやる事になった。
「落としても食べられるから、落花生を投げるよ!地域によって違うみたいだね、福豆を投げるか落花生を投げるか」
「なるほど、そうなんですね」
「所で、なんで豆をなげるのです?」
「…わかんない…。サタナ!」
『はい。豆は、人間にとって大切なエネルギー源となる食材です。そのため、霊力を持っていると信じられているのです』
「なるほど、その論理でいったらお菓子でもいいですわね」
「確かにね!昔はお菓子は貴重だったのかな?」
「まぁ歴史文化に則った方がいいんじゃないですか?」
「うんうん」
ルツェルンにある百均でお面を買った。赤鬼の面と青鬼の面である。
「よし!やるぜぇ!」
「受けてみせよう」
「気合い入れて投げるね!」
「思いっ切り祓ってやるのです!」
「腕の見せ所ですわ!」
皆張り切っていた。各々の手にはマスに入った落花生。腕をブンブン回し、準備万端である。
「っしゃあ!来い!!がぉー!」
「がおー!!」
「「「鬼はー外ー!」」」
玄関の外に立った2人に、皆で豆を投げる。シュナの投げた落花生は緩い弧を描き、ぽつんと床に落ちた。
なんだか、やけに速い落花生があったような。
「うおっ痛っ!誰だ本気で投げたやつ!」
「張り切ったのです、ふふん」
「あぁ?メアリーがこんな痛い豆投げれるわけねぇだろ!ひ弱だから!アスモデウス、てめぇだな!!」
「おや、何のことでしょう。手加減しましたよ?」
「いや、アスモデウスの豆だけやけにスピード速かったよ」
「おや、我が君にはお見通しでしたか」
「アスモデウスの方からビュン!!!って音したわよ」
魔王アスモデウスの全力で投げた落花生は、輪ゴムを引っ張って当てるより痛い。
「次は、家の中に向かって投げるんだよね」
「はい。せーの」
「「「福はー内!!」」」
アスモデウスの投げた落花生が、少し遠い玄関の壁に当たり砕ける。
「あっ」
「ちょっとアスモデウス、気合い入りすぎだよ〜、掃除しないと」
シュナ宅はほこりやカビや虫やらは勝手に消えるがこういう大きい落し物は掃除しないと消えないのだ。
「失礼しました、さっきと同じ要領でやってしまって」
「やっぱお前じゃねぇか!!」
「おや…バレてしまいましたね」
「ふふん、オリエンスにはいいのです。アスモデウス、もっとやるのです!」
「おいメアリー!!」
「そうですね、次はもっと強くやらないといけません」
「怪我するわ!!!」
オリエンスが強靱だから怪我していないが、これが一般人だったら軽く流血沙汰であった。
「ちょ、ちょっと、怪我させないようにね!」
「そうですね。冗談です」
「そっか!ならいいや」
「いやわかんねぇぞシュナ様、あいつはやりかねないぜ」
シュナは基本寛容で緩いので気にしなかった。
「はい、もっかい!鬼は〜外〜!」
「「「鬼はー外ー!!」」」
次は皆緩く投げたので、オリエンスとアメイモンは怪我をせずに済んだ。
「福はー内ー!」
「「「福はー内ー!!」」」
「もう落花生ないのです〜」
「よし!じゃあ豆まき終わり!ありがとうね、2人とも!」
「いえ、これしきのこと」
「おう!いいぜ!」
その後は皆で落花生を拾った。
「皆歳の数だけ食べるの?」
「いえ…そうなると…数百粒は食べないといけないですね。止めておきます」
「えぇ、僕達は寿命が長いので…ちなみにメアリーと主様はいくつなのですか?」
「私は20!今年で21だよ」
「私も20なのです!お嬢様と同い年なのです」
「じゃあ食うのか?」
「うん、食べるよ!」
落花生の殻を剥き、食べること20粒。
「うん!余裕!」
「危なかったですね、我が君に食べさせられたら落花生に胃を圧迫されて死ぬところでした」
「そうだな!」
「多分両手一杯以上あるよね?流石に食べさせれないよ〜」
「よかったです」
その後は夜ご飯である。
メニューは、福茶、ぜんざい、こんにゃくの入った煮物、そばである。今晩はアメイモンとメアリーが作った。
ちなみに蕎麦は大晦日に食べたものと同じ店で買った。ちょっといい所のやつなのだ。
「これはどういう意味があるのです?」
「えーと、ちょっと待ってね…」
シュナはどこからかメガネを出してかけて、またどこからか出したカンペを読み出した。
「えーと…まず福茶!豆と梅干しを入れたお茶を飲むと、災厄から逃れられます。次にぜんざい!ぜんざいに使われる小豆の赤色が、邪鬼を祓う色とされています。こんにゃく!胃の箒、腸の砂おろしと言われ、体内を綺麗にすると信じられています。そば!立春は昔は正月とされていたので、年越しそばと同じような意味合いがあります。以上!」
「おー」
ぱちぱち、ぱちぱち。拍手が起きた。
「我が君は勤勉でございますね」
「ふふ、サタナに教えてもらったの!」
「そういって、アスモデウスも知ってたんだろ?」
「えぇ、勿論です。今日のために図書館で本を借りて読みました」
「わー、私より勤勉じゃん!!流石アスモデウス!」
「いえ…照れますね」
アスモデウスはシュナに褒められると本気で照れる。シュナの為に勉強しているようなものなので、シュナに褒められるととても嬉しいのだ。
「じゃ、食べよー!いただきまーす!」
「「「いただきます!」」」
そうして夜ご飯も食べて、皆は福を取り込み、鬼を祓ったのでした。




