魔法少女悪魔達!!アポロンの実力は?
「オリエンスさん。最近アポロンさんと我が君がお付き合いを始めたじゃありませんか」
コーヒーを片手で持ちながら、足を組むアスモデウス。同じくリビングで寛いでいたオリエンスに話しかける。長い足が惜しげも無く晒される。
「おう、そうだな!」
「見極めたくありません?彼の甲斐性と強さ」
「そうか…?」
「…」
「…うん、そうだな!見極めたいな!!」
無言の圧をかけられたオリエンスは大人しく同意する。
「だが、連絡先は知っていたか?」
同じく寛いでいたアメイモンが聞く。
「その必要はありません。いるのでしょう?天使達」
「…やはりバレていましたか」
物陰から出てきたのは、アクアブルーの髪にオレンジの瞳のガブリエル。頭に百合の花の飾りをつけている。シュナの部下で、アポロンとも繋がりがある。のでアポロンの部下としても活躍しているのだ。
「シュナ様と面識があるからと、最近仕事が変わったのですよ。シュナ様とその周りの方々の監視…と言った所ですか。悪魔達を見続けるなど不快なのですけどね。これもアポロン様の為です」
やれやれといった風に、クールな表情で眼鏡を抑えながら、ガブリエルは言う。
「勝手に見てるのはそっちじゃない!」
パイモンがぷくと怒る。
「下がりなさいパイモン。…そうですか。それはともかく、アポロンさんをここに呼べますか?」
それをアスモデウスが収める。
「アポロン様を?貴方達の為に?ふっ」
ガブリエルは思い切り鼻で笑った。
「なんなんですか貴方?失礼ですよ。これだから天使は卑しくて困ります」
アリトンも黙ってられないとばっかりに反論する。
「下がりなさい、アリトンも。今は戦っている場合じゃないのです」
「…というと、何ですか?アスモデウス」
ガブリエルが胡乱げに視線をやる。
「アポロンとかいう男神が、我が君に相応しいのかを見極める時。それが!今なのです!!!」
バッと立ち上がったアスモデウスは両手を広げ、仰々しく宣う。
「ほう、アポロン様がシュナ様に…ね。確かに気になります。仕方ありませんね、連絡を取りましょう。少し失礼します」
行儀よく一言添えてから、アポロンに電話をかけるガブリエル。
「ガブリエル、私達は少し着替えてきます。待っていてください」
「着替え…?はぁ…分かりました」
「まさかアスモデウス、あれを着るのか!!」
「えぇ、そのまさかです。他の者も、着替えましょう」
大袈裟に驚くオリエンス。アスモデウスは頷く。
数分後、チャイムが鳴る。来たのは、アポロンと…
「アルマロス!!!何故貴方がここに!?」
ローズグレイのウェーブのかかった、肩につくくらいの髪。森の奥のバラの様な、オールドローズ色の眼。過去にシュナを監禁したアルマロスがそこにいた。
「分からない。アポロン様に呼ばれてきただけだ。貴方と会うのは数ヶ月ぶりだな。最近嫌味を言いに来てなかったから」
嫌そうに視線を逸らすアルマロス。しかしなんだかんだ仲は悪くないのだ、2人は。姑と嫁という感じだが。
「で、何でなの?アポロン様。」
「俺の予言で、お前が必要になると出た。だから呼んだ」
「なるほど。だ、そうだが…なんだ、貴方達、その…格好は?」
下から上まで見上げたアルマロスの目には、若干の困惑が含まれている。
「ピュアレッド!パイモン!」
「ピュアブルー!オリエンス!」
「ピュアイエロー!アリトン!」
「ピュアグリーン!アメイモン!」
「ピュアブラック!アスモデウス!」
「「「5人合わせて!魔法少女ピュアキュア!!」」」
広々とした玄関を惜しげも無く使って、5人が横に並んで、魔法少女の格好をしているのだ。
「はぁ…変わったことを思いつくな、貴方達は。ピュアキュアの真似か」
「全くだな。で、どういう要件だ?呼ばれてやった訳だが」
「このアメイモンがお答えしよう。呼び出したのは、貴方の甲斐性と強さを図るためだ。我が主に相応しいのか、な」
「ほう、そうかよ。てか魔法少女ってんならヴィランの一体や二体倒してみろよ」
アポロンが煽る。
「倒されるのは貴方です!!アポロンさん!!!!」
「俺が倒される敵側なのか???」
若干呆れ気味のアポロンが言う。
「私達はシュナ様を怪神アポロンさんからお守りする、魔法少女なのです。恨まないでくださいね、アポロンさん!」
「!!アルマロス!!」
何かを察したアポロンが、アルマロスに呼びかける。
「分かってる!無効化する視線!!」
「破壊滅弾!!」
アスモデウスの出した破壊滅弾が、無効化する視線によって消失する。
「な、狡いですよアポロンさん!!アルマロスの力を借りるなど!!」
「勘弁してくれ、俺の能力は屋内で使ったら家が燃えるんだよ」
「分かりました。じゃあこうしましょう。魔界の広場に行って、その技を見せてください。転移門は私が出します」
アスモデウスは転移門が使えるのだ。
「私がいて助かったね、アポロン様」
にこりとするアルマロス。
「違いない。…魔界か。行ったことねぇな、どんなとこだ?」
「暗雲立ち込める所ですわ。行けば分かりますの」
「それもそうか」
「ほら、行きますよ」
アスモデウスに促されて、黒い転移門をくぐった先は、開けた土地だった。暗い紫みを帯びた、土地と空。
「ここなら誰の邪魔にもなりません。どうぞ?アポロンさん」
「わかったわかった」
若干面倒臭いなと思いながらアポロンは相手をする。
「いくぞ。紅炎柱」
アポロンは手をかざし、低い声で呪文を唱える。すると何本もの巨大な炎の柱が渦巻き、近くの土地は融けた。
「続けて…太陽爆発」
アポロンが手を上に上げ呪文を唱えると、空中で明るい大爆発が起こる。熱い爆風が皆の体を襲った。
「うおおおお!かっけええぇ!」
「ほう、これはなかなかですね」
「きゃあぁっ!」
「…」
「こんな攻撃されたら一溜りもないな」
興奮したオリエンス、頷くアリトン、怖がるパイモン、黙って見守るアメイモン。冷や汗をかくアルマロス。
「…ふっ、なかなかやるようですね」
思いの外強かった。冷や汗こそかかなかったが。それがアスモデウスの感想である。まぁ戦ったら自分もいい結果は残せるだろうな、と自信は忘れない。
「因みに俺の武器は他にもあるぜ?この金の弓矢は即死や疫病の効果を発揮する。それに、俺は怪我や病気の治療も容易いぜ」
振り返って、腰に手を当てて自慢げに話すアポロン。今日はアポロンは背中に弓矢を背負っているのだ。
「多様なんだな、アポロン様の能力は」
「神の御威光を感じます…」
驚くアルマロスと、少し崇拝したような調子のガブリエル。
「なるほど。実技は合格としましょう。次は精神です。家に戻りましょうか」
「おう」
「その前に、俺の技も見ていけや!特別仕様だぜ」
ポーズをとるオリエンス。
「特別仕様、というとなんだ?」
「今日はピュアキュアだからな、ステッキに合わせて技を出すぜ」
「ほう、面白いじゃねぇか。やってみろよ」
「おう!ピュア・蒼火炎獄!!」
オリエンスはステッキを振って、ピュア・蒼火炎獄を出した。青い炎の塊がステッキの先から上がって高く燃え上がる。
「「「おぉー」」」
皆は手をぺちぺち叩いて賞賛する。オリエンスはドヤ顔である。
「用は終わりましたね?では、帰りましょうか」
「おう!ありがとな」
皆で黒い転移門を潜って、家に戻る。
「では、次は、そうですね…。私がシュナ様に変身します。シュナ様のメンタルの調子が悪いとしましょう。構って欲しい気持ちでいっぱいで、寂しがり屋で甘えたがりになったシュナ様。貴方はどうしますか?」
「そう来るか」
あっという間にシュナに変身したアスモデウス。そのまま黒い魔法少女の服を着ている。衣装の都合上、本物のシュナより高身長に仕上がっている。
「アポロン〜私悲しくて仕方ないの…どうにかして?」
声までシュナと同じになったアスモデウスが、アポロンに甘える。
「これはアスモデウスこれはアスモデウスこれはアスモデウス…」
「いいから早く慰めろよ」
冷静さを保とうと必死のアポロンに、オリエンスがツッコむ。
「ん"ん。シュナ、悲しい気持ちなのか?辛いな。こっちこい、抱きしめて暖めてやるから」
「おぉ…。えと、うん、そっち行くね」
思わぬ雄みにタジタジになるアスモデウス。恐る恐るアポロンの方に行く。
アポロンはシュナの見た目のアスモデウスを抱きしめた。そして、一定のリズムで優しく背中を叩く。もう片方の手はアスモデウスの頭の方に置いてある。
「よしよし…」
「程よい温かさ、分厚い胸板、安心感のある筋肉のついた体。丁度いいスピード感の背中叩き。これは高得点ですね」
冷静に分析するアスモデウス。
「僕達は何を見せられているのでしょう?」
「静かにしなさいアリトン、今良い所でしょう」
「ガブリエルにはどのように見えてるのです??」
「これはアポシュナの1つでしょう!!(小声)尊いものですよ」
「そうですか…」
ガブリエルはアポシュナ推しである。
「辛いな、頑張ってるなぁ、シュナ。何かしたい事あるか?ゲームでも買い物でもしようぜ」
「いけませんね、これは。駄目にされてしまいそうです。もういいです、第2科目も合格としましょう。」
少し赤くなったアスモデウスが、シュナの姿から元の長い黒髪を結ったアスモデウスの姿に戻る。
「もういいのか?まだ甘やかし足りねぇ位だが」
悪い顔で両手を広げるアポロン。
「シュナ様にやって差しあげて下さい」
ぶすくれるアスモデウス。こうもいい男だとなんだか悔しいのだ。
「次はパイモンの番です。パイモン、やっておしまいなさい!」
「任せなさい!!私の色気に耐えられるかしら?」
丁度その時、シュナ達が帰ってきた。
メイド喫茶から帰ってきたシュナと唯理有と妃花は、衝撃の現場を目撃してしまう。
アポロンをパイモンが押し倒している。魔法少女のコスプレをして、胸をはだけさせて。
「は…?」
呆然とするシュナ。
「ちょ、シュナ!!これは違うんだ!!」
「うっわアポロン氏やったでござるな」
「うわーwwアポロンそれはないよ」
焦るアポロン、囃し立てる唯理有と妃花。
「あ、アポロンの馬鹿ー!!!!」
そう吐き捨てたシュナは、そのままどこかに走り出して逃げてしまった。
「待ってくれシュナ、!ちょ、パイモン退いてくれ!!」
「あっ!ごめんなさいですわ」
呆然としていたパイモンは、慌ててアポロンから退く。
アポロンは急いでシュナを追いかけ始めた。
「え、拙者達置き去り??」
高身長イケメンこと、ウェーブの長い黒髪、唯理有。今日はオシャレしているのでイケメンが際立っているが、それはそうと困惑していた。
「えー唯理有どうする?」
ロリータ系の服装とハイトーンの金髪を巻いた妃花。見た目に反して話し方はギャルっぽい。
「どうするって…追いかけるでござるか?」
「妃花はいいけどぉ?唯理有抱っこしてってあげようか?」
「ふほっw正直助かるでござるwじゃ、そういうことで、悪魔達また後でね」
「あ、はい」
冷や汗をかいたまま棒立ちになっていたアスモデウスは、生返事をする。これはまずい事になった。冷や汗が止まらない。
「シュナ様の事はアポロンさんに任せましょう。私達は謝罪の茶会の準備をします。アルマロス達も食べていきますか?」
「案外冷静なんだな。流石アスモデウス。それはそうと、お茶会は参加させてもらおう」
ということで待機組は謝罪パーティの準備をする事にした。
逃げ出したシュナと追いかけるアポロン、唯理有と妃花の行方や如何に!?




