黒の洋館においでませ!⑤
wifiが復旧しました!しかし今度はスマホが壊れました。慣れないパソコンで打っています。
「次は麗子。俺の妻だ」
「おぉ」
世界さんが妻というと迫力がある。強そう。放射状の強調マークが付いてそうだとおもった。
_人人人人人_
>俺の妻だ<
 ̄Y^Y^Y^Y ̄
こんな感じのイメージ。思わず仰け反った。
麗子さんの扉はシックで上品な、今紫色だ。両開きの大きな扉で、取っ手の金が鈍い光を放っている。
ノックする。
「はーい」
返事の後、中から身長が小さめの女性が出てきた。145cmくらいだろうか。月白色の長い髪にインナーと前髪に葵色が入っている。日傘の似合いそうな女性だ。
「こんにちは!みんなの幸せが私の幸せ!シュナだよ!」
両頬を人差し指で突き、片足を曲げる。私のお決まりのポーズだ。ここに来てから4回くらいこれをやっている。
「あ、シュナちゃーん!神集会以来だね!界司もいらっしゃい」
「よう、麗子」
両手を広げて歓迎してくれる。世界さんも挨拶をする。
「にしても、新しく入ってきたからって集会を開くなんてね!本当に珍しいよ。度胸も凄いし」
「あはは、ポペードールにはしてやられましたね。まぁ出会いもあったから良かったんですけど。」
友達も増えたし。唯理有にムーサ達に、エロスにアレスなど。
「麗子さんは何をなさっている人なんですか?」
「私?アイドルとモデルと、下界の幽霊の導きと、恋愛相談!皆を愛でいっぱいにするのが私の役目なんだ!」
両頬を抑えて、可愛らしくそういう。
「麗子さんは戦闘とか拷問とかはしないんですか?」
「そうだねー。拷問の方はやろうと思えば出来るけどー、あんまりやんないかな。戦闘は強くないし」
「そうなんですね」
黒の神だからといって拷問や戦闘に強いという訳ではないらしい。まぁ確かに、唯理有とかも弱そうである。悪口ではない。
「それから…こんなことも出来るよ」
妖しい艶やかな雰囲気を醸し出して、麗子さんは私に肉薄する。私の擬似心臓が高らかに鳴った。
「愛の暴力♡」
麗子さんは私の顎に手を添えて、そう唱えた。すると、私は麗子さんが愛しくて愛しくて堪らなくなった。
「れ、麗子さん…♡どうしよう、麗子さんのことが愛しくて堪らないです」
私は目をとろんとさせて、麗子さんに擦り寄った。
「ふふ、これが私の力だよ!対象から対象に任意の深さの、任意の種類の愛情を抱かせるの。そうだ、それから私に敬語は使わなくていいよ。麗子ちゃん、って呼んで?」
唯でさえメロメロなのに、更に上目遣いで可愛い言葉も囁いてくる。頭がぼーっと茹ってしまって回らない。
「麗子ちゃん.…」
「こら、待って、キスしないの」
「おい、シュナ、麗子は俺のだぞ」
キスしようとしたら待てを食らった。私は犬のように従順に待てを遂行する。あぁ、早く触れたい。世界さんにも咎められた。
麗子ちゃんがパン!と柏手を打つ。私はハッとして、頭から熱が引いて冷めていく。途端に、迷惑をかけた様な気になって、申し訳なくなってきた。
「はい、終わり。どう?」
「ごめんね、麗子ちゃん…。凄く強い神力だった」
「でしょ?愛は世界を変えたり滅ぼしたりすることも出来る、凄い力なんだよ。」
納得である。だから、愛を司る麗子さんは、戦闘力はなくても強い神なんだろう。
「私は人に愛憎入り混じった感情を抱かせることも出来るし、純愛を抱かせることも出来るんだよ。だから白と黒両方の性質があってね、両色類なの。普通は白か黒どっちかなんだけどね。ある種、超越者なんだよ」
「力は使いようってこと?」
「それもあるし、何より私がどっちも強くやりたがるから両色類なのかな。私もよく分かんないけど。ヤンデレ、メンヘラ製造機なんだよね」
「自重してくれないと俺が嫉妬してしまって敵わないんだがな」
恐ろしい力である。そんな愛され役の麗子ちゃんを妻に持つ世界さんの心労が窺えた。
「凄いね。麗子ちゃんの好きな食べ物は?」
「ロイヤルミルクティー!」
「私もミルクティー好き!今度お茶しに行こう?」
「もちろーん!」
恋愛の話とかしたい。楽しみである。
「じゃ、またねー」
「うん!またね」
お別れした。
「最後は白越だな。」
長かったような黒の神への挨拶も彼女で最後である。どんな人だろうか。楽しみである。
扉は、障子と木の和風な作りであった。細かい木彫りの彫刻が施されていて、高そうである。達筆な毛筆の字で、ネームプレートに白越と書いてある。
ノックする。
スー、と扉が静かに開く。白い髪をハーフアップにした、ポンパドールの女性が出てきた。目は朱色で、ピアスと髪留めも朱色。真っ白い袴を着ている。世界さんと同じような上位者のオーラがあって、恐ろしい。
だが、私の度胸も磨かれている。いつものポーズをとる準備をした。
「シュ「あぁ、シュナか。…すまん、被った。世界も、よう」
「おう」
思いっきり話始めが被ってしまった。きまずい。白越さんも気まずそうである。
ともかく、声が落ち着いていてクールな女性であった。神聖な雰囲気が漂っている。
気を取り直して、ポーズをとる。
「皆の幸せが私の幸せ!シュナだよ!」
実家のような安心感。
「うん、知ってる。神集会も、実はいたよ。世界とは別行動だったけど」
目を細める。
「そうなんですね!ありがとうございます!」
「あぁ、敬語はなくていい。見たところ、お前上位だよね。宗教開いてるからか?オーラで分かる」
初めて言われた。私にもオーラとかあるのか。もしかしたら誰かに言われたことあるかもしれないけど。
「誰かから教えてもらわなかったか?高尚ポイントってやつ。それと年功とかに応じて位が変わるんだけど。まぁそうはいっても神同士にそんな位の違いはないと私は思っているんだがな。だから皆積極的にポイントを稼いではないと思うんだが」
若干ポペードールから聞いた話と違うような。確かポペードールは、神は人助けに興味がないから高尚ポイントを貯めないと言っていた。そんなの神によってまちまちかもしれない。
「あ、ポペードールから聞いたよ!確か人助けでポイントが貯まるんだっけ?」
「あいつか…適当なこと言ってないといいが。そうだな、あと信仰でもポイントは貯まる」
適当なこと言ってそうである。なんたってシュナに神集会を開かせた張本人なので。
「なるほど。白越はなにをしてる人なの?」
「戦闘だな。それから、政治と、いろんなやつの願いを叶えてやってる。下界にも天界にも神社がある」
白越はフィジカルが本当に強い。スピードは速いし一撃も激重。世界トップレベルの戦闘力を誇るのだ。世元と戦っても劣らない。
「え!白越も全能持ってるの?」
「全能とまではいかない。強力な浄化、呪い、祝福を授けられる。あと結界も張れる」
「どのくらい強いの?」
「呪えば人は死ぬし国は滅ぶし、浄化すれば難病も治る。絶縁すれば来世でも会わないし、縁を結べば来世も夫婦だ」
「強いね」
結構冗談みたいな強さである。私が言えたことではないが。
「白越の好きな食べ物は?」
「和菓子と酒」
「なるほど」
今度ルツェルンの和菓子屋さんのお菓子を渡そうと思った。
「世界さんと戦ってるところ見てみたいな」
「お前みたいなやつは他にもいるんだ、配信サイトに動画が上がっている」
「え、ほんと?」
驚きだ。だがやはり皆思うことは一緒なのだろう。
「シアタールームで一緒に見るか?3Dで見れるよ」
「そんなのあるの?」
「ある。地下だからすぐそこだ。ついてこい」
華美なレッドカーペットの廊下をあるいて、共有ルームに戻る。そこから別の扉を開くと、映画館があった。
「え、すっご」
「好きなやつは自室にスクリーンを置いてたりする」
真ん中辺りの席に座る。世界さんも隣に座る。白越がスクリーンの下で何やらスマホと機器をいじっている。
~~~
やがて、大画面に真っ白な部屋で対峙する世界さんと白越が映し出された。画面の横にはライブコメントが流れている。
『待って世界さんお腹出してる』
『腹筋バキバキじゃんカッコよ』
『そこに住みたい』
そう、世元は短い丈の黒シャツを着ている。白越も白い運動着だ。
「撮影は唯理有。…の作ったドローンカメラ。透けるから戦闘も安全に撮影できる」
神の技術っぽい。
「これどこ?」
「私の別荘の白の部屋。とても広いし、私の結界で保護してあるのもあって頑丈だ。」
画面内の二人が不敵な笑みを浮かべる。
「準備はいいな?」
「あぁ」
「じゃあ…始めっ!」
世界さんの覇気のある開始の合図が響いた。
二人が急接近して拳が交差する。その様を至近距離で見ていた。世元の拳が白越に先に当たって、白越が吹っ飛ぶ。
『えこれ何m飛んだ??白越さん生きてる?』
『頑張れ』
『カッコよすぎる鼻血出てきた』
『鼻血ネキ、ティッシュどぞ』
『さんがつ』
受け身を取りながら転がる白越。
「痛ぇな」
青筋の浮かんだ額。吹っ飛んだ所から一っ飛びで接近する。白越の拳をガードした世界がたたらを踏む。白越の蹴りを仰け反って避け、腹筋で起きてきた世元が勢いそのまま白越に殴りかかる。世元のパンチが迫る映像が迫力満点でとらえられていた。しかし素早く避けられる。
今度は白越のアッパーが決まって、世元が高く宙を舞う。世元の赤い目がギラリと白越を睨む。空中で体制を戻した世元が体を捻って白越の頭を蹴る。
腕でガードされる。が、ひるんだ瞬間に反対から頭を蹴った。もろに食らった白越がまた吹っ飛ぶ。
手を床について、倒立を経て体をぐるりと縦に回し、体制を戻す。
白越もタフであった。世元に二回吹っ飛ばされてもまだ立つ。生半可な一撃ではないのだが。普通受けたら体が弾けて死ぬレベルなのだ。
それから殴る蹴るの応酬が続き、二人はボロボロになっていく。
『かっけええええええ』
『頑張れ白越様』
『世界さん勝ってええ』
最後、世元に吹っ飛ばされた白越が立ち上がろうとして、力が入らなくて諦めて、両手を挙げた。首を横に振る。
「降参だ、もう立てない」
「おう、お疲れさん。いい試合だった」
世元の勝利で試合は幕を引いた。世元が白越に手を差し出す。それをとる白越の、二人の視点から撮影された。
『88888』
『迫力やばかった、途中怖くて避けた』
『殺されるかと思った、尊さもだけど怖くて』
『やっぱり黒の神は箱推し』
コメントが高速で流れ、二人を讃美した。
終わった後、傷だらけのボサボサの二人がカメラの前で話す。口から血を流すなどしていた。
「あー、楽しかった。」
世元が前髪をかきあげながら笑顔で言い放つ。対等な相手との本気の喧嘩程滾るものはない。
『まtttttって』
『スクショスクショスクショスクショ』
『ここが墓』
『人が死ぬ』
宙に映し出されるコメントを見ながら、白越が不思議そうにする。
「私はかきあげる前髪がない…」
髪を梳きながら白越が言う。ポンパドールで前髪を上げているのだ。
『しょぼん白越さん尊い』
『(´・ω・`)』
『(´・ω・`)』
「因みに神力ありなら俺が1秒かからず勝つ」
「私の呪いが効果を発揮するより世元の炎雷の方が速くて強いんだよね。結界先に張っていいならまた別だが」
「それで数秒後、数日後に万病で苦しむ羽目になるんだよな」
『秒殺世界さんかっけえ』
『解釈一致すぎる』
『あああああ尊い』
『風邪とかで弱ってる世界様も見たい』
『それあり、冷えピタ貼って氷嚢乗せて体温計咥えて下さい』
「あー、麗子に頼めば風邪メイクとかもできるかもな」
「世界は頑丈だからな。滅多に体調は崩さない」
「そうだ、俺の炎雷見るか?白越、結界強いの頼む」
「全力で張らないといけないな」
白越が真面目な顔になって、摩利支天印を組む。本気で強力な結界を張るときは組むのだ。白い、果てしなく高い天井と途轍もなく広い部屋が発光する。結界が張られたらしい。
「いくぞ」
『wktk』(※ワクワクテカテカの意味)
『ワクワク』
世界が手をゆっくり空に挙げる。そして、次の瞬間。劈くような轟音と共に、黒紫の一柱の炎雷が天と地を繋いだ。天変地異?ラグナロク?ともかくそんな様相だったのだ。
ゴオオオオオン!!!!
視聴者は、ある者は恐怖のあまり叫び、ある者は口を半開きにして放心した。ある者は熱狂し、ある者は失神し、ある者はパニックになった。白越は冷や汗を垂らしている。
コメントは流れなかった。皆今目の前に流れた映像を処理しているのだ。
結界があるから良かったが、更に世元が手加減しなければ惑星はひび割れる。空間も裂けて歪む。
「こんな感じだ、どうだ?」
「相変わらずすさまじいな。正しく神の炎雷だ」
やがて生き返った視聴者がコメントをする。
『本当に怖かった』
『ちょっとパニックになりました、怖すぎて』
『カッコいいです流石我らが最高神』
反応は三者三様であった。が、普通に生きていれば滅多にお目にかかれない世元の炎雷を見れたのは幸甚だろう。
「お前ら、今日は来てくれてありがとう。楽しんでもらえたか?」
『楽しかったです』
『心臓バクバクだった』
『カッコよくて惚れ直した』
「それは良かった。またな」
「また」
二人が挨拶をして、動画は終わった。
~~~
「おぉー!」
シュナは思わずスタンディングオベーションをした。とても見入ってしまった。
「面白かったか?」
「それはもう!大迫力だったよ」
「まぁ当然だよな」
白越は頷く。自信家である。これほどの実力なら自己評価が追い付いているに過ぎないかもしれないが。
「そうだ、世界さんって好きな食べ物ある?」
「麗子の手料理。…だがまぁ、変なもんじゃなきゃ食べれるぞ」
「愛妻家ぁ!」
「アポロンも負けてないだろ。だってあいついつか…いや、なんでもない」
世元は言葉を濁した。
「そう?まぁアポロンはいい彼氏だよー、凄い愛情深いし」
「だろうな。あいつの愛情深さは鳥肌が立つ、狂気的だ」
世元は苦そうな顔をした。
「そこまでではないと思うけど」
「まだな。そのうち分かるだろ」
「世界さんには何が見えてるの??まぁいいや。今日はありがとう!黒の洋館のことも、黒の神のこともよく知れたよ!」
「そうか。またいつでも来い、歓迎する」
「うん、ありがとう!」
ということで、黒の洋館訪問は終わった。また沢山約束も取り付けたので、遊ぶのが楽しみであった。
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なう(2025/04/01 21:01:22)
白越の表記揺れが激しかったのと、加えたい言葉があったので編集しました。




