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神様にお任せ!!  作者: 砂之寒天


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ifルート:鈴を探して

アンの能力が鈴の詳細な位置まで及ばず、異世界の星で鈴を探すことになる秋斗の話です。

アンの元に話に行ったところからです。

「話は分かった。鈴の居場所を探してみようぞ」

「お願いします…!」


 アンの元に来て、事情を話した白越と秋斗。


「ふむ。01Kの世界の星に居ることは分かったが…この星のどこにいるかが遠すぎて分からぬ。転移門を繋いだら、我は疲れて力が使えなくなるじゃろう。星までは送るが、そこからは己で探すが良い」


 アンは渋い顔でそう言う。


「分かりました、おおきに。大体の居場所が分かっただけでも助かるわ」


 辛そうに笑顔を浮かべる。


「じゃ、繋げるぞい」

「お願いします」


 転移門を前に、覚悟を決める。


「鈴。今、会いに行くで」


 そう言って、転移門を潜った。


 中級の神の一部や、上級の神は食事が要らない。しかし鈴は己と違い神になったばっかりで、下級の神だ。食事も水も要る。どこかで野垂れ死ぬ可能性もあるのだ。

 早く見つけなければ。焦りが滲む。


 しかし焦りとは裏腹に、鈴は中々見つからない。色々な村で鈴の容姿や特徴を聞いて回るが、居場所の手がかりは得られなかった。


「いやぁ、知らんなぁ…」


 そんな返答を聞く度に落ち込んでしまう。

 しかしかぶりを振って、気合いを入れ直す。


「次は…砂漠やね」


 地図を見ながら呟く秋斗。


 早く、心まで純白な鈴に会いたい。無事であって欲しい。そう思いながら、渺渺たる砂漠を歩く。この星の中から鈴を見つけるのは、正に砂漠の中からダイヤモンドの粒を見つけるようなものであった。


 会わなければ会わないほど、会いたい気持ちは高まっていく。

 どれほど歩けば鈴に会えるのだろうか。心が折れそうであった。早く見つけてあげられない己が不甲斐なくて泣ける。が、鈴も待っているはず。早くその声を聞きたい、と思いながら、折れそうな自分を叱責してまた歩く。


 日が上り、暮れていく。何回も何回も、それを繰り返した。


「鈴…。」


 綺麗な星空を見上げる。澄んだ空が、鈴の心を思わせた。懐かしくなって、でも会えないから溜息を吐く。この星の中から探すことにならなくて良かった、と思う。アンの力に感謝するのであった。


 1年が経とうとした時、とある村で、それを知った。


「あぁ、白髪の神様?丁度1年くらい前に、居たよ。雨乞いをして下さってな。雨が降って助かったものよ」

「ほんまか!!今はどこにおるっ!?」


 もの凄い剣幕で詰め寄る。


「なんか…天気の神様に連れられていったよ」

「そうなんか!」


 とりあえず、無事であろう事は分かった。

 この空の上に、鈴がいる。


「この村の守護をしてくれてるんだよ。聖像があるから、そこに話しかけたら届くかもしれん」

「分かった。そこまで連れてってくれや」

「おう」


 小さな公園に行くと、そこに鈴と知らない神の聖像があった。


 聖像に叫ぶ。


「鈴ーっ!!ワイや、秋斗や!!探しに来たで!!」


 叫ぶと涙が零れそうになる。

 すると、上から鈴がリンとなる音が聞こえた。ハッとして空を見る。

 空から雲が降りてくる。


「秋斗さーん!!」


 雲から体を乗り出した鈴が、笑顔で手を振っている。


「鈴!!」


 万感の思いであった。嬉しくて涙が出る。


 雲から下りた鈴を抱き締める。


「体大丈夫か?変なことされてへんやろな!?」

「大丈夫ですよ。断ってます」

「されそうになっとるやんけ!!」


 思わずつっこむ。


「あぁ、君が鈴ちゃんが言ってた恋人?」


 隣にいた天気の神が話しかける。


「せや。自分が鈴のこと世話してくれてたんやよね。ほんまにおおきに、ありがとうございます」


 秋斗は丁寧に頭を下げた。


「あぁ、いいよいいよ。可愛い子見つけた〜と思って世話してただけだし」


 手をひらひらとふる太陽のような髪色の神。


「では、帰らせていただきますね。ありがとうございました」


 鈴は丁寧に頭を下げる。


「えっ僕君のこと養ってあげたのに、帰っちゃうの!?」


 当然の言い分ではあるのだが、中々面倒なことを言う。


「それは本当に感謝しているのですけど…私も帰りたいです」

「そうだよな、そうだよなぁ…あ、分かった!」


 手をポン、と叩く天気の神。

 そしてハイライトのない目で、仄暗い笑みを浮かべる。


「攫っちゃえばいいんだ」


 鈴に雷が落ちる。鈴の姿が消えた。


「な、何するねん自分!!」

「鈴ちゃんはあげないよー!」


 そう言って、雲に乗り天界に行こうとする天気の神。

 秋斗も黒色の翼を出し、それを追う。


「待てやー!!!」

「やだよー」


 追いかけてるうちに天界に着いた。


「うわっ家着いちゃったよ」

「自分!!戦うで相手しぃや!!」


 鬼の様な形相で、秋斗は刀を抜く。そして電光石火の如く接近した。必死に避ける天気の神。


「ちょ、僕今武器とか持ってない!!タンマ!!」

「首飛ばしたるわ!!」

「ごめん!!返すから!!」


 殺されるより速く天気の神は土下座した。


「ふん、初めからそうしぃや」

「だって彼女可愛いんだもの…」

「それは同意するわ」


 天気の神は1度家に戻り、鈴を連れて戻ってきた。


「悪かったよ。良かったらまた来てくれよ」

「遠いところですし…まぁ、長い神生のうちには会えると思います」

「気ぃ向いたらくるわ」


 そう言って、地上に送って貰う。天気の神とは別れた。空に昇っていく天気の神を見送る。

 そして、重大なことが発覚する。


「え…てか帰りどないしよ。ワイ転移使えないねん」

「えぇ!?私も使えないですよ…!」


 衝撃の事実であった。


 一緒に顔を見つめあい、そして空を見上げる。


「…ん?なんやアレ」


 何やら1つの黒い点が勢いよく降ってきている。


「どれですか?…え、こっちに来てませんか!?」

「ほ、ほんまや…!どないしよ鈴!!」

「どうしましょうどうしましょう」


 2人は抱き合ってあわあわと震える。


 地上から30mくらいの距離になると、それはゆっくりのスピードになって降りてくる。


 それは…


「え!!世界さん!」

「迎えに来たぞ、秋斗、鈴」


 外側が黒く、内側が赤い重厚なマントをはためかせながら降りてくる。空から威圧感が降ってくる感じであった。

 そして、その影には…


「皆の幸せが私の幸せ!シュナだよ!」


 両頬を指で突いて、片足を曲げたポーズをとるシュナが居た。


「シュナ!!自分来てくれたんか!!」

「うん!ちょっと時間を超えて、空間も超えてきちゃった。張り切ったよ〜」

「シュナのお陰でお前達の位置が分かったんだ。鈴が見つかる時も」

「私が時間越したからさ、戻っても一日しか経ってないよ」

「ほんまにぃ…」


 ちょっと次元が違いすぎて遠い目をした。


 何故シュナが鈴を探しに行かなかったのか。それは、このイベントがあると2人の仲良し度が上がるからである。


(あんまり長く探してたら私も手伝ったけどね。あと、鈴ちゃんの身に危険があるとか)


 小さく言い訳をするシュナ。


「じゃ、帰ろっか」

「そうだな。帰るか」


 いつもとは少し色を変えた、特別な転移門を開く。今日は赤である。時空を超える効果を付けたので、気分的に変えたのだ。


「お先にどうぞ」

「あ、おおきに」


 転移門を潜る。

 そこは黒の洋館であった。久しぶりの家に、懐かしさを覚える。


「迎えに来てくれて、おおきに、ありがとうございます」

「いいよー!手伝えて良かった!」


 明るい笑顔でそう言うシュナ。


「秋斗さん、探してくれてありがとうございます。寂しかったです」


 しょんぼりしたまま笑顔を浮かべる鈴。秋斗は思わず抱きしめた。


「ワイが守れんでどうするねん、って、何度も自分のこと責めたわ。鈴が、鈴が無事でほんまに良かった」


 少しの間抱きしめ合う。


「良かったねぇ」

「シュナさんと世界さんも、ありがとうございました」


 鈴がシュナ達に向き合ってお辞儀をする。


「俺は何もしてないが」

「私の事呼んでくれたの世界さんだよ」

「まぁそれもそうか」


 納得する。


「あの、養ってくださったあそこの天気の神になにかお礼が出来たらいいなと思うのですが…」

「あぁ…じゃあ好物でも送っとくよ!世界さん、用意してくれる?」

「構わない。送るのはシュナに任せるがいいか?」

「勿論いいよー」


 かくして、鈴は無事元の世界に帰ってこれたのであった。

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