世界さんとシュナと鈴
作中で、超学生様の、オーバールックの名前を出しました。良い曲なので、読者の皆様ぜひお聞きください。
本日は体調が優れなかったので投稿が遅れました。ちょくちょく休むこともあると思います。それでも見てくださるととても嬉しいです。よろしくお願いします。
「な、なんだお前…?」
朝起きた世界さんは、自室にいる女性の霊に戸惑う。眠い目を擦る。幻覚ではないらしい。
「なんだお前。どっか行け」
シッシッと手で払うと、幽霊は胸を抑えて嬉しそうに泣きそうな顔をした。それはどんな感情なんだ??
話しかけても、
「アッ」
とか
「エッ」
と言ったきり何も話さなくなってしまう。
とりあえず梅千夜が淹れてくれたコーヒーを飲む。梅千夜は世元の執事をしている。
「おはよう世界さん。なんか幽霊つけてるのだね」
「そうなんだよな。困ってる」
「幽霊さん、どういう事情なんだい?」
「アッ…エッ…。」
梅千夜が話しかけても答えてくれない。
後から起きてきた麗子にも、
「え、なんか変なのつけてるじゃん、界司!どうしたのそれ」
と言われる。
「分からん。離れないんだよ」
「ふーん。幽霊さん、どうかしたの?」
「アッ…!…。」
「うーん、話してくれないね」
同じように黙りこくってしまう。
他の黒の神に相談しても同じであった。世元は困り果ててしまった。
他の黒の神が出てくる度に、凄く喜んで飛び跳ねている。
その霊はどこに行くにも着いてくる。仕事中も隣にいるし、寝る時もそばに佇んでいる。
幽霊は寝顔を瞬きもせずずっと見ていた。
流石にお風呂についてこようとした時は止めた。神力で風呂に結界を張る。
(懐かしいなこれ…)
一時期、神をやりながら現世にいた時は同じように風呂やトイレに結界を張ったものであった。なんかファンや成仏したい霊がいっぱい来たのである。
結構自由に色んな生活をしてきたのだ。
とりあえず天界に送ろうと事務の者に伝えるが、何故か受け取ってもらえない。
しかも、天国側に事情を聞いてもなんだかはぐらかされるばっかりだ。圧をかけると、泣きそうになりながら逃げてしまう。
「…はぁ…?」
そこで世元は、シュナの存在を思い出す。
「アイツなら、なんとかしてくれるかもしれねぇな」
そういう訳で、シュナに連絡をいれた世元であった。
〜〜~
携帯が鳴る。
シュナは携帯を取って、通知を確認した。
世界さんから連絡が来ている。
"シュナ、お前除霊とか分かるか?時間がある時に黒の洋館に来て欲しい"
除霊?そんなの地獄にいる世界さんなんて得意分野じゃないんだろうか。
取り敢えず了承の旨の連絡を送り、後日予定を取り付けて世界さんの元を訪れる。
黒の洋館に来た。
リビングにいた梅千夜さんに世界さんの居場所を聞く。
「あぁ、黒の間にいるのだよ」
「分かりました、ありがとうございます」
黒の間は世界さんの私室の一つである。なんかめっちゃ広い、真っ暗な空間だ。
奥の方まで歩くと、王座のような椅子に世界さんが座っていた。全く、様になる。思わず膝をつきたくなるオーラがあるのだ、この王様は。
すぐ側には、女性の幽霊。透き通るような白い髪をボブカットにしていて、可愛い鈴のような薄い黄色の瞳をしている。耳には鈴のピアスを付けている。身長は高めだ。
「ようこそ、シュナ。態々ありがとう」
世界さんが顔を上げて話す。
「うん、こんにちは、世界さん。この方が例の?」
「あぁ」
「あ、黒の神様じゃない神様…!」
霊がやっと話したので、世元は驚いた。
鈴のような可愛い声をしている。
「こんにちは、シュナです。世元さんに呼ばれて来ました」
「どうもご丁寧に…私は鈴と言います」
普通に優しそうな霊である。
「どうして世界さんに憑いているんですか?」
「それが…天界の方で神にお願いをしまして」
世元は、霊が黙ると困るので黙って話を聞く。
「お願い、ですか?」
「はい。私、天界に住んでいるんですけど。そこで沢山働いて善行を積んで、白の神にお会いしたんですね。それで、世界さんの元に行きたい、とお願いしまして。」
「なるほど。どうして他の黒の神にお話しなかったんですか?」
「その、黒の神箱推しで…照れて話せなかったんです。最推しは世界さんなんですけど…」
「なるほど…。」
事情は分かった。
「あ、それで期限が勿論あって…1週間までねと言われました」
「だそうです、世界さん」
「…そうか。分かった」
世元は複雑な気持ちであった。なんで先に報告しなかったんだろう、とか、普通に帰ってくれないかな、とか。ただ世元は優しいので、きちんと対価として善行を積んでいるのであれば、1週間くらい我慢するか。とも思った。
何故天国側は事情をはぐらかしたのか?そんなの決まっている。事実を伝えたら怒られそうだからである。因みに世元はこれでは怒らない。寧ろ報告してくれない方が困った。
天国側の責任として、積んだ善行には応えなければならない。
白の神も、
「他の対価じゃだめかな?君なら神にだってなれるんだけど」
と聞くが、
「いえ、世界さんの元に行きたいんです」
と頑なに譲らなかった。
しかし世元にもプライベートはある。板挟みだったのだ。
ということで、とりあえず世元の元に送って丸投げすることにしたのだ。
「今まではこんなこと無かったんだが…?」
「アッ…。」
「どういう事情だったんでしょうね?」
世元が話しかけると黙ってしまうので、シュナが代わりに聞く。
「恐らく…善行を積んだ量が私が飛び出ているのでしょうね。階層も98でしたし、かれこれ50年近く世界さんに会いたい一心で働いてきましたし…」
「えっ50年!?すごっ」
「熱心なファンだな…」
世元はなんとも言い難い感情を持った。
「まぁ…事情は分かった。折角だ、寛いでいけ」
「ァ、アリガトウゴザイマス…!」
世元は寛容であった。
「もう少し表に出る回数を増やした方がいいのか?これでもモデル誌とか結構出てるんだがな」
そう、世元は天界の雑誌にも乗っている。というか黒の神の雑誌がある。需要が半端ないのだ。全員美形で個性豊かなので。因みにグッズもある。
「ふ、増えたら勿論喜びますが…ご無理のない範囲で…!」
霊はやっと真面に話せるようになってきた。
「あとあれ歌って欲しいです…!オーバールック…!」
「なんか元気になったな」
「シュナさんのお陰で緊張が解れてきました」
「あぁ…まぁ、練習しておこう」
天界にはスマホも動画投稿サイトもある。世元もチャンネルを持っている。
「シュナ、ありがとう。解決した」
世界さんがシュナに向き直って礼を言う。
「うん!良かったよ。またなんかあったら呼んでね」
「助かる。そうだ、昼食食べてくか?鈴、お前も」
世界さんが感情の色の見えない怖い目でこちらを見上げる。
「いいの?じゃあいただいてこうかな」
「あっ…恐悦至極です…!いただきます!!一生の思い出にします」
シュナはアスモデウスに連絡をいれて、昼食はいらないと送る。
食堂に行って、席に着く。
やがて、食事が運ばれてきた。
メニューは、お刺身、天ぷら、茶碗蒸し、煮物、炊き込みご飯、お漬物。料亭に出てきそうである。
「思うんだけどさ、神になって世界さんの元につけば?」
「一般的な善行でここまで来る様な奴だ、白の方に配属されるだろうな」
「それでも同僚になればこうして会うことも出来るじゃない?」
「そうだな。まぁ、俺は構わんが…」
「では次は神を目指して善行積みますね!」
「応援していよう、鈴」
「グッ…ありがとうございます!」
丸く納まったようでなによりだ。
鈴さんは後に白の神になり、その聖母の様な優しさと鈴が転がるような愛らしい声、美しい容姿、優秀な仕事ぶりによって天界で有名な神となる。黒の神を推す強火担である事もまた有名になるのであった。
そして、あんな悲劇が起こるなんて、幸せな彼女達もシュナも知らないのである。
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