世界を救う世元達
神々の不和。戦争。それは世界の崩壊を意味していた。
宇宙が崩壊しかけ、神々が生きることすら難しくなってしまった世界。
そこに降り立ったのは、最高神の1人、世元であった。
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数多ある世界を見張るのは、世元達である。
無線で世元に連絡をとる唯理有。
「もしもし世界さん?EZ7の世界で神が戦争起こしてるでござる。時期に滅びそう。至急応援求むでござる」
「了解、唯理有。今行こう」
世界が滅ぶ直前に、そこに降り立つとされる伝説上の神。それが世元達である。
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世元達が拠点としている世界、若しくは過去に拠点としていた世界以外では、世元達は伝説上の存在であった。
カオスより古い存在が、神々を見守っているとか。
そこにいるだけでダメージを負うような不毛の世界。
そこに降り立った世元は、まず世界を修復した。ひび割れた次元の壁を直し、温度を正常に戻した。
次に、世界を壊しかけた神々を力ずくでねじ伏せる。
世元が本領を発揮すると共に、そこの重圧は増す。そこで最高神をしていたゼウスですらも、膝を着いて頭を下げるほどだった。
「お前達、やりすぎだ」
「貴方は…?」
「俺は世元界司。崩壊しかけた世界を救いに来た神だ」
何があったのかは知らないが、未だ怒り狂う神々を特大の闇魔法で沈める。
それだけで、天地がひっくり返るのではないかという衝撃だった。黒い雷が天と地を結び、間にいた神々はあまりの激痛に悶えた。
見たものは、これが王の力なのかと畏怖を抱く。あるものは、圧倒されてぼーっとしてしまった。
正気に戻った神々は、世元に気付いてブルブル震えた。
「す、すみあせんでした」
唇を青ざめさせ、泣きそうな顔で謝る神々。喉が引き攣るのか、上手く話せていない。
事の発端は、ある神の悪戯であった。
夫婦の神がおり、間の子供の姿を夫の浮気相手に見えるようにしてしまった。妻は知らずに子供を殺す。
真実を知った妻は夫と悪戯をした神に強い憤りを覚える。度を過ぎた悪戯をした神を殺そうとするが、その神に唆された他の神、そして夫との戦いとなってしまう。
親族も巻き込んだ泥沼の戦いとなり、それを収めようとした他の神々も更に巻き込んだ。
激化した戦争は、世界を崩壊させかけるに至った。そこに駆けつけたのが世元だった訳である。
世元はすぐさま真実に気付き、悪戯をした神をタルタロスに封じた。
「二度と出てくるなよ」
「そんな…!悪かったよ、許してくれよ!」
世元は相手にせず、マントを翻して神々の元へ戻る。
真実を知った神々は深く嘆き、そして、世元に跪いて感謝した。
「ありがとうございます…」
「いい、これが仕事だ」
堅かった表情が少しだけ和らぐ。世元は去っていった。
子供の命日には鎮魂祭が開かれることとなった。
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世元がピンチに陥った時。助けてくれたのは、麗子であった。
黒の神々が世元の統治に反乱したのだ。まだギリシャ神話の神々の殆どが生まれる前であった頃。
世元は時々ドジである。そこが唯一の愛嬌みたいな所はあるのだが、それで迷惑を被った部下の神々が、怒って反乱を起こしたのだ。
内容はこうである。唯理有は何度か転生しているのだが、1番初めの転生前の唯理有も、機械に精通していた。
世界の仕組みは唯理有に頼んで機械仕掛けにしている所があるのだが、ある世界を作る時、押す必要があるボタンを世元が押し忘れたのである。
それは無限を司るボタン。そこの世界だけやけに滅ぶので、おかしいと思った黒の神が確認したところ、上記の事実が発覚したのだ。
このような事は度々あった。のでそれに怒った黒の神が反乱したのである。
麗子は愛の女神の一柱。
麗子は黒の神々に世元への愛を振り撒き、更に世元へも部下への愛を与えて(元々愛情はあったが)、黒の神々と世元が愛し合えるようにしたのだ。
恋愛的な意味では無い。親愛のようなものである。
それによって反乱は終結し、協力し合う体制に戻ったのであった。
この出来事があってから、黒の神々と世元はかなり仲がいい。世元は管轄下の部下達を可愛がっているし、部下達は世元を尊敬し、愛情を持っているのだ。
黒の神々は個性豊かな仲間達という風であり、その個性を愛し合えるようになったのは、麗子のお陰であった。
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そもそも、世界というものが出来たのも世元達のうっかりが原因であった。
完璧に支配された小さな世界で遊んでいた幼い世元、アン、白越、麗子。4人で仕組みを考えながら作った、可愛い世界である。
因みに4人の名前は、元々神語で別の発音の名前があったが、意味的にはこれなのでこのように呼んでいる。
「界司、これの後片付け宜しくね!」
幼い麗子が世元に片付けをお願いする。これが駄目であった。
「おう」
おもちゃ箱に小さな世界を仕舞おうとした世元。しかしうっかり転けてしまい、小さな世界を時空のどこかへと無くしてしまったのである。
時の激流に飲まれていった世界を見て、幼い世元は呆然とする。
しかしすぐ切り替えて、
「まぁ、いいか」
と言ったのであった。
これを何度か繰り返したり、うっかり制御装置を稼働し忘れたり、etc…で世界の数はどんどん増えていった。
そのうち世界で遊び疲れた4人が、新しく神を作って世界の支配や発生を任せたのが、世元直轄の黒の神々であった。その後に出来たのがカオスやウラノスといった神々である。
彼らは優秀であった。世元が無くした世界を尽く見つけ出し、管理し、世元達に逐一報告したのである。
大体川底に散らばったビー玉を探す要領であった。
「世界さん、ここの世界で新しい最高神が出ましたよ。是非見に行ってあげてください」
彼は晴右。冷たいが、身内には優しい。いつも寒気がするような怖い笑顔を浮かべている。愉悦を司っていて、敬語を使う。
「世界さん、あっちの世界で神が戦争起こしてるよ!見る?」
彼女は異折。暴走を司る神だ。暴れっ子だし、すばしっこくて加虐的である。小学生くらいの女の子である。
世元達は大人になってから責任感を持つ様になり、今では各々仕事をこなしている。
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地獄とは、重罪を犯した者が死して尚裁かれる世界である。
地獄で受刑者達に罰を与えるものは、黒の神であった。毒を毒で制すような、どっちが受刑者か分からないような人達である。
その中で2狂と呼ばれる2人がいる。
「あはははははwははははw!!」
笑いながら受刑者を甚振るのは、夕鶴。愉快を司る。常に爆笑していて、殺人的、加害的。倫理観はない。
楽しければ何でも良くて、殺人も楽しく熟す。
因みに勉強が苦手で頭もあまり回らない。事務仕事は苦手である。
もう1人は、霞央留。快楽を司る。快楽こそ至高といった思想を持ち、人を殺すことに快楽を感じる。
細身の受刑者がくると、大概まず腕の骨を折る。
曰く、
「手首細いねぇ。折りたくなるよ。」
との事であった。
何故黒の神の役割を担ったのかと聞くと、
「ただ、人を支配したり…殺したりするのに抵抗がない神同士で集まっているだけだよぉ。」
と返事が来る。本当に、どっちが受刑者か分からなかった。
「ほらほら、いくよー」
「苦しい、苦しい。むり、やだ、たすけて、!!!!あああああ!ああああああ、ああ、。うあああああああ、あああああうう。」
地獄に来てしまった者達の結末は悲惨である。精神攻撃も肉体攻撃も熟す黒の神々は、多種多様な残虐な方法で受刑者を甚振る。
しかしそれが世界平和なのであった。黒の神々の名の元、罪は平等に裁かれるのである。つまり必要悪で、天罰であった。
他にも黒の神は沢山いる。
不安を司る寧々。
本人は様々な不安障害を持っていて、それを対象に移すことで苦痛を与える。常に手が震えていて泣きそうな顔をしていて、気が弱い。人前を怖がるし、被害妄想も激しい。
「怖いよう、うぅ」
狂気を司る小鞠。
近くにいる対象に、狂気を与える。呂律も頭も回らず、常に口から吐瀉物が零れている。目の焦点が合っておらず、血走っている。薄灰色のミディアムヘアをしている。晴右と恋人である。
「※kw!△↑r」
妄想を司る舞怡。
対象に激しい妄想と幻聴を植え付ける。コントロールの効かない思考は、与えられた者に混乱と恐怖を与える。
本人もよく色んなイマジナリーフレンドに話しかけている。幼い女の子。
「それでねー、皆がこっちみて笑ってるの!怖いよねぇ」
化学を司る白ヰ《しろい》。
ハイテンションなマッドサイエンティストで、色々な劇薬を作っては受刑者に飲ませる。
白いボブカットに、黒のハイライトカラーが入った髪色をしている。
「これはーッ!!新薬でーーすぅ!!飲もうねぇーーっ!!」
他にも、〜なのだよね、が口癖の梅千夜、勤勉で勤労な謐華、アクティブな夢女子の妃花、関西弁の秋斗、皆の親父な銀千犀、皆の保育園の先生のような和泉など、色々な天使や神がいる。
個性豊かな黒の神達をまとめあげるのが、世元界司な訳であった。
今日も、地獄には叫び声が響く。
その中には、黒の神々の笑い声が入っているのであった。
ここだけの話、この間のマリアの拷問は不評だったのですが、懲りずにちょっとだけ黒い話を書きました。私の趣味です。ヴィランが好き。




