神集会②
「続いて、アレスとアスモデウスによる試合です。」
シュナがアナウンスをする。
「「おおお!!」」
主に男性神から歓声が上がる。戦いは面白いらしい。
アナウンスに合わせて、ラスボス戦で流れていそうなBGMが流れ出す。
片方の舞台袖からは、アレスが。もう片方からはアスモデウスが出てきた。
アレスは槍をもっていて、アスモデウスは足と腕に装甲をつけている。
見つめ合う両者。レフェリーはシュナだ。
「…始めっ!」
両者とも弾かれたように接近する。
アレスの槍がアスモデウスに迫る。アスモデウスは装甲のついた手で掴み、そのまま引いた。しかしアレスはバランスを崩さない。体幹が強すぎるのだ。
が、アスモデウスの拳がアレスに入った。
風の切る音が凄い。
「う"っ…なかなか重い一発じゃねぇか」
「それはありがとうございます。負けませんよ」
「ほざけ」
アレスは槍をぶん回してアスモデウスから逃れる。
もう一度接近した。
アレスが槍で連続攻撃をするが、なかなか当たらない。
「お前速いな!?」
「えぇ、この間成長しました」
アルマロスの時の話である。あのスピードは疾速であった。
槍を投擲し、アスモデウスが避けた所にアレスの飛び蹴りが決まった。
「ぐっ…!一撃でこの重さ…これは何度も食らうのはいけませんね」
「逆になんで耐えられるんだよ、硬すぎるだろ」
普通の人なら軽く穴が空くレベルである。アスモデウスの耐久性が異常であった。
スピードでアレスの後ろをとるアスモデウス。
「なっ、どこに、」
そのまま頭めがけて助走をつけて振りかぶった。
その拳は辛うじて防ごうとしたアレスの槍にあたって、槍が粉砕する。
「俺の槍がっ!」
それに気を取られているうちに、アスモデウスはアレスの頭に回し蹴りを行った。頭に直撃し、アレスは意識を失う。
この勝負…
「アスモデウスの勝ち!」
であった。
「「うおおぉおお!」」
歓声があがる。白熱した戦いであった。
「まじか、アレスが負けるって強すぎるだろ」
「あれ魔王だよな?視察しに行った天使が言ってたぜ」
「通りで」
観客は大盛り上がりであった。
アレスは意識を取り戻し、負けを悟ったらしい。がっくりと肩を落とした。
シュナが出てきて、終わりの挨拶をする。
「本日はお越しくださり誠にありがとうございました。用意した演目は以上です。どうぞこの後もごゆっくりお過ごしください。暫くステージに居ますので、御用がある方はお越しください。シュナでした」
拍手の中、シュナはお辞儀をする。そして、何やら悪魔達が用意した椅子に座った。
「帰るか〜」
「シュナちゃんありがとなー!」
そういう神に笑顔で手を振るシュナ。さながらマドンナである。
デメテルが来た。今回料理の材料を提供してくれた、おっぱいの大きい豊穣の神である。
「料理、美味しかったわよぉ!」
「良かったです〜!デメテルさんのお陰です、ありがとうございました」
「いいのよぉ。この間なんだか豪華な菓子折りもくれたことだしぃ?」
そう、シュナはこの間お礼に菓子折りをデメテルに送った。因みにアレスとムーサ達にもお礼の菓子折りを送ってある。
「また何かあったら言うのよぉ、いつでも力になるわぁ」
「はい!ありがとうございます」
デメテルは手をひらひら振って去っていった。
続いて来たのは唯理有だ。
「おつおつ〜、シュナ氏!面白かったですぞw」
「お楽しみいただけて良かったです!」
「そ、それでさ。連絡先交換しないでござるか?君みたいな面白い人と、友達になりたいんでござる。どう?敬語もなしで」
「え、いいの!ありがとう、よろしくね!唯理有!」
「ふひひwよろしくでござる」
「いぇーい」
「?あ、いぇーい!でゅふふwではまた!」
ハイタッチをしてバイバイした。友達が増えて嬉しいことである。
続いてムーサ達である。
「今回は大成功だったわね。貴方もより有名になったんじゃない?」
長女カリオペイアが、腕を組んでこちらを見る。
「うん!ムーサ達が手伝ってくれたからだよ。ありがとう!」
「いいのよ。また踊りに来て頂戴」
「そうですわよ、シュナ?これきりなんて寂しいですわ」
「また遊ぼうねー」
「うんうん!こっちからも連絡するからね、シュナ!」
皆それぞれの言葉をかけてくれる。次女クレイオーも、3女エウテレペーも、4女タレイアも仲良くなれたみたいで良かった。
「うん!ありがとう。また遊ぼう!」
「バイバイ、シュナ!」
「また一緒にお風呂入ってね!」
「絶対の絶対だよー!」
5女エラトー、6女ポリュムニアー、7女ウーラニアーであった。皆小さくて可愛かった。
続いて、海棠色の丸みショートの髪型をした少年が来た。弓矢を持っている。
「あっ、僕はエロス!性愛と恋心の神さ!あっ、君がマッチングパーティを開いていると言っていたから、あっ、協力したくて話しに来たんだ」
なんか話す度に喘いでいる。存在が18禁な感じである。くねくねしながら話している。
「協力と言いますと?」
「うんっ、君が開くマッチングパーティを僕が見守るのさ!あっ、恋愛的に相性のいい人を引き合せる手伝いをするよ、僕の力でね。あっ、恋愛に関する予言もしよう」
「それは心強いです!是非お願いします」
「うんっ、それから、1つ予言をしてあげよう!あっ、君は今から運命の人と出会うよ」
「運命の人…?そうなんですね、ありがとうございます」
「あっ、それじゃ、また今度ね」
印象の強い人であった。エロスさんは去っていった。
次に来たのは、長い金髪のイケメンであった。筋肉が色っぽい。誰だろう?
シュナはまだ気付いていなかった。これが神生屈指の出会いであることを。運命の歯車が周り出していることを。
「初めましてだな、シュナ。俺は太陽神アポロン」
聞くだけで腰が砕けそうな声である。シュナはこんな美丈夫がいるのかと驚いた。
「初めまして、アポロンさん!本日はお越しくださりありがとうございました」
「あぁ、敬語はいらねぇ。単刀直入に言おう。俺と付き合ってくれ、シュナ」
野次馬していた神達、お迎えに来た天使達がピタリと静かになった。
私?私はというと、失神しそうである。擬似心臓がバクバクとうるさい。何がどうなったらこんなイケメンに告白されるのであろうか。シュナの頭は空回りする。
椅子の背に壁ドンされる。顔が、顔が近い。
「は、ふぇ」
「俺と恋人になったら毎日愛を囁こう。好きなだけ竪琴を聞かせよう。一緒に太陽から星を見よう」
私は目眩がした。目がぐるぐるである。
幻聴かもしれないがLove so sweetが流れ出した。
残念ながら幻聴ではない。ふざけたパイモン達が流したのである。パイモンは心臓に毛が生えた剛の者であった。
「…よろこんで!」
「よっしゃあ!」
真っ赤で涙目になったシュナが、笑顔でそう言った瞬間、サビが流れ出した。
瞬間、ステージに銀テープが発射され、風船が浮いて、しゃぼん玉が飛んだ。
「え、これ誰が用意したの…?」
「なんか有りましたわ」
こっちに来たパイモン曰く、なんかあったらしい。
「片付けといてね…」
「えぇ、新しい恋人様に仕事は任せられないですわ?」
「もう…」
茹でダコになったシュナは、両手で顔を覆った。
「おめでとーアポロン!!」
「幸せになれよー!」
野次が飛んだ。
「愛してるぜ、シュナ」
「ありがとう、嬉しいよ」
愛を囁かれると、ピンク色の幸福感で全身が満たされる感覚がした。シュナの瞳孔が開いて、眦が下がる。シュナも恋に堕ちたのであった。
この一瞬で神生が2転3転してしまった気がした。
お祝いムードの中、突如、空気が濃密に重くなった。上から押しつぶされるようなプレッシャーを感じる。
迎えに来ていた天使がバタバタと倒れていく。低位の神々は膝を着き、過呼吸になりかけている者もいる。中位の神は顔こそ青いが立っている。上位の神々は余裕そうである。寧ろ、少し喜んでいるような?
「!?」
「このオーラは…大王の御成だな」
アポロンが言う。
いつのまにか正面には、長いストレートの漆黒の髪をした、赤い目の男が居た。瞬間転移だろう。ハイライトのない怖い目をしている。黒いマントをしている。皇帝みたいだ。隣には月白色の長い髪にインナーと前髪に葵色(紫色の一種)が入った女性。
「こんにちは、シュナ。会に出席しなかった事、詫びよう。なにせ俺が来るとコレなものでな」
倒れた天使達を指す。成程、あまりの重圧なオーラに耐えかねて人が倒れるのか。
神だから耐えれたが、神じゃなかったら私は小さくなって震えるしか無かったかもしれない。もしくは、そこの天使みたいに失神するか。
低くてよく響く声だ。
言われなくても分かる。この人が世元界司、世界さんだろう。隣にいるのは麗子さんか?
「いえ、構いませんよ。ようこそお越しくださいました。料理など用意できますが、如何いたしますか?」
「あぁ、じゃあ頂こうか。麗子もそれでいいか?」
「いいよー!楽しみだなー!」
麗子さんは幼女っぽい雰囲気がある。この人が世界さんの妻なのか。なんだかギャップのあるカップリングだなと思った。
「にしても、新神なのに俺を前にして倒れないなんてよくやるじゃないか。相当善行を積んだらしい」
「ありがとうございます」
もしかして倒れる前提でいらした??遊び心のあるお方なのかもしれない。いや、もしかしたら倒れないことくらい彼の予想の範囲なのかも。そんな気がしてきた。
「よう、世界さん」
「あぁ、アポロン。元気か?」
「お陰様で。さっき、シュナと付き合えることになったんだよ。何卒よろしくな」
「…あぁ、そうか、今日だったか。おめでとう。末永く幸せになれよ」
アポロンと世界さんは仲がいいらしい。何やら意味深な事を言っているが、何か知っていたのだろうか?私が真実をするのは先になりそうである。
1番近かったコロシアムの椅子にすわっていただいた。
私直々に給仕をすることにした。神力で手に料理の皿を出し、世界さんと麗子さんの前に置く。飲み物もお注ぎする。
「私もお酒ね〜!」
「かしこまりました」
子供っぽいけど飲み物はお酒なのか。
2人とも上品な食べ方だな、と思った。背筋が伸びていて、綺麗だ。
「世界さんは普段、何をしているんですか?」
「地獄の奴らの相手と、世界平和に貢献してる」
「世界平和に貢献ですか?」
「あぁ。色んな世界を壊そうとする輩がいるからな。それから守ったり、世界の仕組みのメンテナンスしたり見直したり。他にもいろいろしてるな」
「忙しいんですね」
「ま、そこそこな。今は大分部下が増えたからやりやすくなった」
それでもなんだか忙しそうである。
「世の中には普通に暮らしてると見えねぇ所に悪い奴らが沢山いる。そいつらの魂に時間かけて罰与えて、反乱するやつらを沈めて…とかもしてるな」
ちょっと物騒な感じであった。
「ごちそうさま。美味しかった」
「ごちそーさまー!料理上手いね!」
「お楽しみいただけたようでなによりです」
「今度、俺の拠点を見に来るといい。黒組の奴らが住んでるんだ。唯理有も住んでる」
「へぇ!それは面白そうですね。ぜひ行かせてください」
「あぁ。じゃあ、またな」
マントを翻して、背を向ける。麗子さんと手を繋いで、転移した。
重圧がふっと軽くなる。
「世界さんと話せるなんて羨ましいぜーシュナ」
知らない神が話しかけてくる。
「世界さんは皆の憧れよ。あのカリスマ性に魅せられた人が多いんだぜ?」
「そうなんですね。貴方は?」
「俺?俺はメルクリウス。商業の神だぜ」
これは好都合だとシュナは思った。
「商業の!では商業に詳しいのですか?」
「あぁ、勿論。なに、なんか頼み事があるのか?可愛い新神のためならなんだってするぜ?しかも、世界さん直々に来たとなると、お気に入りにもなりそうだしな」
「そうなんですか?ともかく、話が早くて助かります。私今度宗教で聖像とか売ろうと思ってるんですけど、それの手伝いをしていただきたくて」
「あー、分かった。やらせてもらおうじゃねえの」
「勿論謝礼は出します。利益から!」
「おぉ、了解」
そうして連絡先を交換して、話は終えた。商業に詳しい人が欲しいと思っていたので、丁度良かった。
かくして、神集会は無事に終わったのであった。
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