神集会の準備
今回の集会では、他の神の力も頼ろうと思うのだ。そのための下準備を始める。
1つ目は、ムーサと呼ばれる7姉妹の女神達との舞踊である。ムーサとは舞踏を司る神様達である。
天界のパルナッソス山にある邸宅に来た。
「初めまして、新神のシュナです。今度神様を集めて集会を開くのですが、その際に一緒に踊りを踊って欲しくて来ました」
大小様々な7姉妹がそっくりの顔で、珍しいものを見るような目でこちらを見る。ストレートの金髪を、皆それぞれのアレンジをしている。黄金のリボンをしていた。
代表して、長女のカリオペイアさんが答えてくれる。
「いいわよ。ただし、舞踊で私と勝負すること。種類は何でもいいわ」
舞踏を司る神と勝負!?とんでもない事である。
しかしシュナ、踊りには自信があった。前世ではバレエを習っていたのだ。大会で優勝なんかもするレベルである。
「分かりました。じゃあバレエを踊ります」
「バレエね。分かったわ」
「頑張れー姉様」
カリオペイアさんを応援するのは三女のエウテレペーさんである。
「新神も頑張ってぇ!」
私を応援してくれるのは四女のタレイアさん。声音に幼さが残るが、大きさは普通の高校生くらいある。
邸宅のホールを借りて、踊ることになった。
「衣装は貸してあげるわ」
「ありがとうございます」
チュチュに着替えた。柔軟をしっかり行い、アップをして取り掛かる。しなくても体は動くが、感覚的にしておいた方が動きやすい気がした。
私は天界では使えるスマホを取り出して、くるみ割り人形の花のワルツを流し始めた。
優雅に踊り始める。滑らかな動きだが、止めるところはしっかり止める。指先から足先まで神経を通した、丁寧な踊り。
軽やかにしなやかにジャンプし、クルクルと回る。高く足を上げて見せる。
フィナーレではホール中を軽やかにクルクルと回り、決めポーズをする。
1曲踊り終えた。
「へぇ、中々やるのね。滅多にお目にかかれないレベルだわ」
「ありがとうございます」
「次は私の番ね。金平糖の踊りをやるわ。曲を流しなさい、クレイオー」
「えぇ」
踊りが始まる。
ツン、ツンと音がしそうな鋭い歩み。繊細な足さばき。薄暗い森のような、降りしきる雪の中の様な、怪しい曲調の中踊る。
重さを見せないジャンプ。優雅で美しかった。
何度も足を高くあげる場面も、一つ一つが丁寧だ。笑みを崩さない。
静かに、金平糖の踊りは終わった。
「いい勝負でしたわよ?お姉様方。」
7姉妹の次女、クレイオーが言う。
結果は、4対4の投票で同点で引き分けであった。
「あら、なかなかやるじゃない?まぁ、貴方が負けたとしても協力してあげるつもりだったけどね。」
「そうなんですか?何はともあれ、良かったです」
「敬語も要らないわよ。一緒に踊ったら友達よ。連絡先も交換しましょう。練習する必要があるわ」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
「えぇ。折角神を呼ぶんですもの、楽しませないと。どうせアイツらのことだから、折角呼ぶなら楽しませろって言うわ」
カリオペイアがニヤリと笑う。
「精一杯頑張るね。よろしくね!」
「えぇ、よろしく」
こうしてムーサ7姉妹と踊る約束が出来たのであった。
週に2日程、集まって練習をした。踊るのはくるみ割り人形。もう練習いらないのでは?というくらい皆上手かった。
センターは恐縮だが私が行う。私の会だから当然かもしれない。
「貴方、筋がいいわよね。いつからバレエやってるの?」
「うーん、15年前くらいからかな」
死んだのが20歳で、5歳の時からやっていた。
「へぇ、通りで。舞踏の神の私達に引けを取らないなんて、なかなかよ」
「ありがとう。皆と踊れるの、光栄だし嬉しいよ」
心底嬉しそうな顔でシュナは笑う。ムーサ達は、なんだか落ち着かない気持ちになった。
「貴方って…少し人たらしね。会が心配だわ」
「そうかな?」
「えぇ。求婚の一つや二つ、されそうだもの」
「神ってフットワーク軽いんだね」
「それもあるけど、貴方が可愛いのよ」
カリオペイアの顔が少し赤い。
「今日、泊まっていくかしら?」
「いいの?じゃあお言葉に甘えて」
嬉しいことである。もうそんなに心を開いてくれたとは。アスモデウスにも連絡を入れておいた。
〜〜~
「ムーサ達とお泊まり…仲がいいのは喜ばしいことですが、妬きますね…」
アスモデウスは静かに嫉妬していた。
「ん?シュナ様泊まりか?」
近くを通ったオリエンスが聞く。
「えぇ、そのようです」
「へぇ。練習頑張んのかな」
「確かに、そうかもしれませんね」
練習ならば、仕方ないか。
(まぁどうせ1日だけです。毎日共に過ごしている私の方が上ですね)
勝手にマウントをとって、満足するアスモデウスであった。
〜〜~
ムーサの5女エラトーと6女ポリュムニアーと7女ウーラニアーは小学生くらいの大きさである。
皆でお風呂に入った。広いお風呂だ。
「水鉄砲!くらえ!」
7女ウーラニアーが、6女ポリュムニアーに水鉄砲をお見舞する。
「や!やめて!」
「やだよーん。エラトーにも、おりゃ!」
「わ!やったな!」
中々騒がしかったが、元気でいいなぁとのほほんとしたのであった。
お風呂を出て、着替えている時。
「パンツかと思ったら靴下だったよ。靴下じゃおしりは隠せないよ」
7女ウーラニアーが言う。
「んふっw」
「あ!今笑ったでしょ!いま!いま笑ったでしょ!」
「笑ったわよ笑ったw」
カリオペイアはホロホロと笑った。
「おっぱい出てるよ」
5女エラトーが、6女ポリュムニアーに言う。
「うん?知ってる」
「ちゃんちゃーんちゃかちゃかちゃんちゃんちゃかちゃか…」
エラトーは天国と地獄を歌い始めた。
「?」
ポリュムニアーはゆっくり着替えをしている。
「じゃ、じゃーん。はーい私の方がおっぱい隠すの早かった〜!」
「それを競ってたの!」
知らぬ間に勝負に負けたポリュムニアーであった。
数分後
「ちゃんちゃーんちゃかちゃか…じゃ、じゃーん。はいおっぱい隠した〜」
6女ポリュムニアーも負けじと服を着た。
「私の方が早かったし!」
「僅差だよ。コンマだよコンマ!」
「大分差あったけどな…」
微笑ましい光景であった。
その日はゆっくり寝て、次の日自宅に帰ったのであった。
〜〜~
もう一つ、神に協力して貰う余興がある。
それは、戦の神アレスと、アスモデウスの戦いである。
私が戦っても、自力が弱いから面白くならないだろう。やりようはいくらでもあると言えばあるが。例えば、アレスの力をコピーするとか。
アスモデウスを連れて、天界のオリュンポス山に来た。アレスの家の戸を叩く。
高身長のムキムキが出てきた。短い茶髪だ。
「あ?なんだチンチクリン」
「初めまして。新神のシュナです。今度集会を開くので、その際彼と戦って欲しくてお願いに来ました」
「アスモデウスです」
「ほぉ?まぁ戦えるってんなら協力してやってもいいいわ」
「ありがとうございます!」
シュナは光り輝く笑顔をした。アレスは本来口も態度も悪いが、少し笑顔にあてられた。
「…敬語なんてしゃっちょこばったことしなくていいぜ」
「そう?ありがとう!」
「おう」
かくして、戦の神アレスとの約束も取り付けたのであった。
〜〜~
シュナ宅にて。
「そう、だからさ、集会を開くんだよね。」
シュナは思い出して話し始める。
「凄いことですよね。招待の手紙を書かないといけませんね」
アスモデウスが言う。
「そうなんだよね。ちょっとお買い物行ってくる!」
「メアリーも行くのです!」
「行ってらっしゃいですわ」
少し買い物に出かける。
手紙屋さんに行った。
「どれがいいかな?」
「やっぱり一番良いやつなのです。これなんかオシャレなのです」
ということで店の中で一番高い紙で作られたレターセットを選んだ。買い占める。どうせこの後神力で複製するのだが、一つだけ買って複製するのは悪いと思ったのだ。
「まいどありー」
次にお花屋さんに行って胡蝶蘭をあるだけ買った。胡蝶蘭の花言葉は、幸福が飛んでくる。これを神々への贈り物にしようと思うのだ。
これは枯れない魔法をかけて、神力で複製する。亜空間にしまっておいた。
当日は料理も振舞おうと思っている。私と寮のコックさんとキッチンを亜空間に複製して、大量の料理を作ろうと思うのだ。分身の数を膨大な数にするので、一人一人の負担は大きくない。
材料は、豊穣の神デメテルさんに協力してもらった。おっぱいの大きい、身長も大きいお姉様だった。おっとりしている。
「かくかくしかじかで、材料を買わせて欲しいんです」
「そうなのぉ?可愛い新神ちゃんの為だもの、タダでいいわよぉ」
「いいんですか!ありがとうございます!美味しい料理にしますね」
デメテルさんの寛大なお心によって、材料を提供して頂けた。
招待状の内容は、軽い自己紹介、日時、場所、内容、料理のメニュー。それからちょっと文を付け足して終わりである。お待ちしております、と締めくくった。
書いた内容を他のレターセットに転写する。そしてそれを大量に複製し、亜空間にしまった。
神力を用いて、この世界にいる神々の家のポストに招待状を投函した。ポストがない家は、玄関にふわふわ浮くようにしておいた。
アンさんとポペードールには直接渡しに行った。
遊空殿にて。
「ほう、集会を開くか。…変わっておるの、お主」
「うん?まぁとにかく開くから来てね。会場はあのコロシアムみたいな所借りることにしたから」
「あぁ、あそこのう。暫く使っとらんな」
「そうなんだ?」
新人の神ってあんまいないのかな?と見当違いな事を考えた。そもそも集会を開くことが滅多にないのである。
天界には高級なコロシアムみたいな会場があるのだ。
ポペードールの城にて。
「あら、アンタね。キチンと頂いたわ。楽しみにしてるわよ」
「うん!ありがと」
きちんと渡した。
こうして、神集会の下準備を終えたシュナであった。




