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神様にお任せ!!  作者: 砂之寒天


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101/102

one more time, next life〖完〗

次回作(既に書いて出している)(天才魔法使いシュナは魔王フェナと恋人になる!

https://ncode.syosetu.com/n2710kp/)に繋げる話です。

もう1作アポロン(+稀花+??)×シュナ関連で出すつもりです。


なう(2025/11/09 13:04:23)

追記:イラスト追加しました!

挿絵(By みてみん) 


心地よい日が続くこの頃。シュナはアポロンと一緒に、ピクニックをしていた。


 風は涼しいが、長袖1枚あれば過ごせるくらいだ。柔らかい東風が、2人の髪を撫でた。

 青い芝生は柔らかい。朝露は既に乾き、青々とした姿を存分に晒している。


「お日様あったかいね!アポロンのお陰だ」

「ふふ……そうだな。いっそシュナだけを照らしていたい」

「うちのお花も照らしてね、咲かないと悲しいから」

「分かった」


 座っている2人は肩を寄せ合って、お互いに体重を預けている。アポロンからは金木犀の香りが、シュナからは真っ白な石鹸の香りと少しフローラルな香りがした。

 2人の髪が太陽を受けて煌めく。


 穏やかな日だった。


 ふと、シュナは預けていた体を立たせ、背筋を伸ばした。猫が膝から降りるように、突然。


 どうしたんだろう、とアポロンがシュナの方を見る。

 シュナは口をもごもごして、言いづらそうにした。


「何か言いたいことがあるのか?」

「うん……あの……実はね……」

「うん」


 シュナは暫くもごもご小さく、あー、とか、うーん、とか呟いていた。その間もアポロンは何も言わず、優しい瞳でシュナを見つめて待っていた。

 そして5分ほどした頃に、やっと決心がついたらしい。申し訳なさそうな顔をしながら、シュナはスカートの裾をギュッと握り、手に汗をかきながら、やっと言い出した。


「私、転生しようと思うの」

「……は?」

「えと……新しく描きたい未来ができたから。あと、新しい世界を担当することになってて。こっちにも分身は残すけど、本体はお墓に綺麗に安置しようかなって。だから、」

「ちょっと待て。死ぬってことか?」

「うーん、まぁ、そんな感じ」


 アポロンの顔から、感情が抜け落ちた。たった一つの光を失いそうなのだから。その顔はまるで亡霊のようだ。


「有り得ない。お前が居ない世界なんていらない。お願いだ、考え直してくれないか」

「うーん……私も結構悩んだんだけどね。まぁいつでも戻ってこれるようにはしとくからさ!人生は旅っていうし、少し旅行するだけだよ」

「だけどな、シュナ。次の人生を歩むってことは、そこで新しい恋人も出来るわけだろ?俺以外がシュナの恋人になるのなんて許せないし、その清らかな肌に誰かが触れるのを考えるだけで、気が狂いそうだ」

「私もアポロンに他の人が触れるのは凄くヤダけど……」

「なら、俺の気持ちも分かるだろ?」

「うーん……」

「頼むよ……お前がいないとダメなんだ、俺は。生きていけない」

「そうだよねぇ……」


 シュナも、酷なことを言ったかな、と思い直した。


「そもそも、なんでそんな事を思いついたんだ?」

「え、えと……」


 シュナは頭の中で反芻する。

 こちらでの生活が一段落ついたから。新しい生活をしたい。新しい世界に旅立ちたい、と思ってしまうのは、ワガママだろうか。まるで自立していく思春期の子供の様で、あまりにも、周りの悲しみを鑑みなすぎるだろうか。


「それは、あんま言えないけど。やっぱり早計だったかな。もう少し考えるよ」

「……。そうしてくれ」

「うん」


 なんとなく不穏な空気を残したまま、2人は秋の穏やかな、しかし明るい太陽に照らされていた。

 不穏だが、しかし、シュナはまた口を開く。


「えと、だからね。いつでも転生できるように、生前葬をしようと思って」

「……ふぅ。まだそんなことを言うのか?」

「え?」

「言ってるだろ、シュナがいない世界に意味は無いって」


 アポロンはすくっと立ち上がる。シュナはその姿を目で追う。見ると、その手には小さな太陽の炎。

 その目に光はない。しかし、真っ黒な炎が、彼の瞳の中で燃え上がっている。


「シュナ、俺は今からこの世界ごと、お前を壊すから」

「え!?」

「シュナが転生を選ぶなら、その隙も無い間にシュナを滅する。シュナのいない世界に意味は無いから、この世界ごと壊す。分かるか?」

「わ、分からない……」

「俺に殺されてくれるか?」

「えっ、えっと……!」


 シュナは頭がぐるぐるした。訳が分からなくて、脳が沸騰してしまいそうだ。


「そもそも、俺に見初められた時点で俺から逃げることは許されない。許さない。俺から離れられると思うなよ?」


 シュナはゾクゾクした。正直、アポロンのこういう重いところは好きなのだが、まぁ、それが今の自分に向くとなると、かなり重たい。


「俺に殺されてくれ、シュナ」


 アポロンは底冷えするような恐ろしい声で、目で、シュナに炎をかざす。


「はわわ……あちゃー……ちょっと、ワンモアタイム!!」

「!?」


 すると、シュナは指を天に突き刺し、神力を発動した。なにをするのかというと、時間を巻き戻すのである。

 舞月の特権かと思いきや、シュナもそんなことをしてしまう。全くデタラメである。


 世界が巻き戻る。

 太陽は少し昇って、影は短くなる。落ちた葉っぱは木に戻り、散った花も咲き直す。


 2人はまた、寄り添いあって、太陽に照らされた。


 シュナは考える。


(もう少し言い方を考えないとな……)


 何も言わずに行くのは嫌だ。でもホントのことを言ったら通してもらえない。


 ホントのことと、嘘を混ぜよう。


 シュナは、今度は寄り添ったまま、口を開いた。


「あのね。新しい世界を作る担当になったから、そっちに出張するの。本体はこっちにおいとくから、気にしなくていいんだけどね。そっちは自由に動かすから、色々人間関係も変わると思うし、一応言っとこうと思って」


 嘘も混じっている。新しい世界を作るのは本当だが、実際は分身を置いていき、本体が行く。


「俺もついて行く」

「えっ?こっちの太陽の管理どうするの?」

「……どうでもいい」

「あらま……」

「……。シュナ、本当は、そうじゃないんだろ」

「え"っ」


 太陽の輪郭が雲に滲んだ。アポロンの頬にも、涙が滲んだ。

 シュナは図星だったので、濁った声が出た。


「……もう、俺の事は好きじゃないか?」

「えっ、そんなことない!!!本当に大好きだよ」

「なら、なんで俺から離れようとするんだ?」

「えっ……えっと……」


 アポロンは本格的にホロホロ泣き出してしまった。暴言など吐いたりはしない。ただ、静かに。涙を流していた。


(あんま……言えないけど……別の恋愛もしてみたいんだよな……アポロンの事は好きだけど、浮気はしたくないし……)


 そんなこと言えない。

 正直に言うと真っ直ぐな愛で世界が滅んで、嘘を言うとアポロンが泣くらしい。


「……俺との恋愛に飽きたか?倦怠期か」

「ぐっ……まぁ……そんな感じ……?」

「じゃあ、いつでも戻ってきてくれるのか?」

「アポロンはそれでいいの?私結構酷いことしてると思うけど」

「いい。シュナが俺のとこに戻ってきてくれるなら。何より、この関係が終わる方が怖い」

「っ……」


 シュナは流石にアポロンが可哀想だった。


「……ごめんね」

「いい。お前を好きになった俺が悪い」

「……そう言われると、立つ瀬がないけど」

「……お前が、嫌になるまで。俺とこのぬるま湯に浸かっていてくれ」

「うん……」


(じゃ、近いうちに行こうかな……)


 無慈悲である。シュナはフットワークが軽いので。


「行き先は教えてくれるのか?」

「え、教えないよ?だってその世界壊そうとするでしょ?」

「シュナが作った世界を壊す気は今のところないが……まぁ、どうなるかは分からないな」

「でしょー?頑張って探してね」

「あぁ。執着には自信がある」

「ふふ、そういうとこも好きだよ!」

「全く……」


 アポロンに、この自由な蝶の羽ばたきを遮ることは、出来ないらしかった。やれやれ、と、お転婆娘を見るような心地で、シュナを優しく見つめた。


「愛してる」

「ふふ、私も大好きだよ!」

「……シュナの心にずっと残っていたいが、傷を残すのは可哀想だ」

「優しいね!私の事傷つけたら嫌いになるからね」

「っ……あぁ、肝に銘じておく」


 そりゃそうである。シュナの事は姫のように丁重に扱わなければならない。


「ずっと私の事好きでいて、なんて言えないけどね」

「そんなこと言わなくていい。そんなこと言わなくても、俺はずっとお前の事が好きだから」

「ふふ……私、アポロンに愛してもらえて幸せだよ!」

「俺もシュナと一緒にいれて幸せだ。ありがとう」

「こちらこそ!ありがとう」


 そんな感じで、シュナはアポロンと別れを告げた。


 それを、最後にした。


 転生する日。シュナは悪魔達とメアリーとパーティを開いた。理由は、新しい世界を作るという大仕事を任されるからだ、と伝えておいた。


 でもなんとなく、1年以上も付き添ってきた仲だからだろうか。皆、何かが変わるのは分かった。だけど、シュナが何も言わないから、何も聞かなかった。


「乾杯〜!!」


 皆でお酒を飲んで、美味しいご飯を食べた。もちろんチーズケーキも一緒に。


 最後、シュナは秋の空の下、家を出た。


 これまでの1年間に思いを馳せる。沢山の事があったけど、どれも大切な思い出だ。


 爽やかな風が吹く。目を閉じて、息を吸った。肺が少し冷たくなって、頭がスッキリする。


「……うん、行こう!いってきます」


 そっと別れを告げて、シュナは新しい世界へと旅立って行ったのであった。



おしまい

心中エンドと迷いましたがやめました。


この作品以降のシュナは、分身です。


終わる終わる詐欺でしたが、また続くかもしれないし、本当に終わるかもしれません……ですが区切りがつくのは確かです!


ここまで読んでくださり、ご愛顧くださり、ありがとうございました!次回作も頑張りますので応援してくださるととても嬉しいです(*´︶`)よろしくお願いします!


星5、感想、リアクション、ブックマークなどお待ちしております!ありがとうございました!


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