出会い
1話です
西暦1023年
ある一人の女の子が、夜道を一人で歩いていた。
この頃、季節は秋で空気も少し肌寒かった。
あたりはすっかり紅葉し、そして葉も少しずつ落ち始めている。
この日は満点の月が夜空にぽつんと浮かんでおり、女の子にはその月が一人ぼっちでいるように見えた。
(これから、寒くなるぞー)
風が吹き、木々が揺れる。
赤い葉っぱたちが飛び回って女の子の周りが明るく照らしているようだ。
「今日は満月、私はなんて運が良いのだろう。ふふっ」
女の子が不敵に笑みを浮かべる。
そしてその後、この女の子に天地がひっくり返るような怪異がおこる。
不思議で、美しく、高貴な怪異。
高貴な彼女は今後一切の姿を消し、世に現れなくなった。
しかし、偶然にも彼女の事を見た詩人が一人いた。
そしてその詩人は、この日のことをこのように思った。
天の仏が私達の元に参られた。
私は神を見た。
高貴なるお姿をたしかに目にした。
これは歴史の転換点であり、新たな時代の始まりだ、と。
その詩人は、そのことを歌にしたが残念なことに誰にも読まれることはなかった。
故に、彼女の行方は誰も知らない。
〜西暦2023年
「ちょっと優ー、早く起きなさーい」
「はーい」
俺の名前は天野優。どこにでもいる一般高校生だ。
高校生になればなにかが変わると思っていた。
今までの退屈な日常を破壊してくれるような刺激があるのだと、そう思っていた。
しかし、俺の思っているような刺激はそう簡単には現れなかった。
もうすぐ、高校生になって初めての夏休みだというのにこれじゃ中学と何も変わらないじゃないか。
灰色
そう。俺の青春は、花を彩るようなバラ色ではなく、何にも染まっていないただの灰色だ。
俺にも日常を彩ってくれるものがあればいいんだけどなあ。
(彼女でも作るか、いやそもそも俺のこと好きなやつなんているのか?)
どうしたものだろうか。
なにか日常を破壊してくれるような、そんな刺激はいつか俺に訪れるのだろうか?
キーンコーンカーンコーン
学校が終わった。
どうしよう、そのまま家に直行しようかな。
「おーい、優カラオケでもいかないか!!」
「何だよ緑原、俺はカラオケにはいかねーぞ。歌なんて歌えないし、今日は家に帰るつもりなんだ。」
俺に話しかけきたのは、緑原駿
中学からの腐れ縁で、運悪く同じクラスになってしまった。
「それに、お前には可愛い彼女がいるだろう。俺なんかと遊ばないで彼女とでも遊んでけ」
そして忌々しいことに、こいつには美人の彼女がいる。
なにせこいつは少し顔がかっこいいから女子にモテるのだ。
「そんなこと言うなよ優。お前だって作ろうと思えば作れるんじゃないか?彼女。お前意外と女子にモテてるらしいぞ。」
緑原は少し、ニヤけた顔でからかうように言った。
「俺をからかうな。今は彼女なんていらないんだ。俺はもっと、、いやなんでもない」
「優、明日からどうせ夏休みだから遊ぼうぜ!」
「はぁー。わかった。明日から夏休みだしな。今日くらいは付き合ってやるよ。」
(なんかいつもこいつに言い負かせられている気がする。}
「よし。カラオケ行こうぜ!!」
「おい、緑原。なんで浅野さんまでついてきてるんだ」
浅野心美。緑原の彼女だ。
正直、彼女と話したことはあまりないで俺としてはとても気まずいのだが。
しかし、浅野さんはうちの学年でもトップを争うくらい可愛いことで有名だ。
「優くんは、私がいるの嫌かな?」
浅野さんが僕に圧をかけるように言う。
(嫌なんて言えるわけ無いだろ、、)
「い、嫌じゃないです。」
「なら良かった。」
(なんか目が笑ってない)
そして、俺はカラオケ内で完全に空気になっていた。
どうして、このカップルと一緒にカラオケに入らないといけないんだよ。
何も楽しくなかった。最悪だ。
まあ、二人は楽しんでるしそれそれで仲睦まじくていいのかな?
「優、また今度なー」
「優くんバイバイ~」
やっと終わった。あの二人を相手にするのは中々神経を使う。
(あっ、やべ。もうこんな時間か。早く家に帰らないと)
あたりは暗く寝静まり、空はすっかり暗闇に飲み込まれていた。
(少し、お腹が空いたしコンビニでも寄るか)
コンビニでサンドウィッチと飲み物を買う。
たぶん、お母さんがご飯を作ってくれてると思うから量は少なめにして買った。
にしても静かだな。周りは静寂に包まれていてまるで自分だけ別世界に入ったかのようだ。
「血を、、」
(あれ、なにか聞こえる)
「、、を、、を吸わ、、」
やはりなにか聞こえる。
血?
声のある方に近づいてみる。
「血を、、、、吸わせて、、、」
更に近づく。
「血を、吸わせてくれ」
そしてそこには、驚くことにやせ細った女の子が一人倒れていた。
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