小夜 ーさよー
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなり挑戦しています。
今回で3作目となります。
1作目は異世界(前世・悪役令嬢もの)、2作目はSF(幼馴染の恋愛&聖女もの)でした。
少しずつ書き進められたらと思っています。
読んでいただけたらうれしいです。
冬至兄さんのことを考えている。
乗った船が海賊に襲われ、行方がわからなくなっていると。
私があんな不吉な内容の手紙を書いたからだろうか。
でも、冬至兄さんにしか頼めなかった。
『私を殺してほしい』
この離れで過ごすようになってもう3年になる。
あの時、産んだばかりだった天音もかなり大きくなったことだろう。
夫はやさしい人なので、太郎、花音、天音の3人を大切に育ててくれるだろう。
私はもう妻、そして母としての役目は果たせない。
それなのに世話になって生き永らえているのがつらい。
何度か自分で命を絶つことを考えたが、いざとなると子どもたちの幼い時の顔が浮かぶ。
もう3年会っていない。どんなに大きくなっていることだろう。
夫も舅、姑も、だんだんと私との関りを少なくしていき、私の死を待ってるような気がする。
離縁は私の実家とのつながりもありできないから、ただ待ってる。
ただ私が死ぬのを待っている。
夜、ふと人の気配に気が付くと冬至兄さんが会いに来てくれていた。
夢かと思った。幽霊になって私の願いを叶えに来てくれたのかと思った。
「小夜、本当に死にたいのか?」
「兄さん、覚悟はできています。なのに、いざとなると自分では死ねません……。
お願いです。私を殺して下さい」
「……わかった」
兄さんが私の首に優しく触れた。
お願いしたくせに、こわいと思った。
心の乱れを感じ取ったのだろう。
「俺は一度死んで身内の命を喰らう化け物となった。
小夜、俺に命をくれるかい?」
いつものようにやさしい、でも震えている兄さんの声。
うれしくて涙が出た。
これで私の死はただの無駄な死ではなくなる。
うなずくと目を閉じた。
「冬至兄さんのためならば喜んで……」
読んで下さりありがとうございます。
まだこちらは連載中ですが、私の頭の中で2作目の主人公のアキラがヴェスの暴走(?)をかなり不安がってまして、礼とアスランがふたりの休暇を切り上げて仕事をさせるようです。
そっちの話が終わったら、こちらの連載を続けたいと思っています。
よろしくお願いします。