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天人五衰  作者: 月迎 百
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美樹 ーみきー

こんな感じにちょっとずつ、視点や時代をずらして書いていけたらと思います。


どうぞよろしくお願いします。


 駅前のカフェで外を見ながら彼を待っている。

 寒い冬の日なのに心が温かい。

 それはきっと恋をしているからなんだろう。


 冬至さんとは大学の図書館で出会った。私が大好きな画集を手に取って眺めていたので、思わず声をかけてしまったのだ。


 声をかけてから、これって逆ナンパというのでは……と冷や汗をかいたが、冬至さんは嫌な顔をせず優しく対応してくれ、お互い好きな絵についての話を少しした。


 それがとても楽しく、また会いたいと思った。

 彼から、水曜日の午後は図書館によくいるからと言われて、ドキドキした。


 図書館で時々会って話すだけなのに、私は冬至さんをどんどん好きになっていったのだ……と思う。


 今日は初めて、図書館以外で会うことになり、うれしいけれど緊張している。


 雪が降ってきた。


 雪は……、嫌い。


 特に夜の闇の中にちらつくように静かに降る雪が嫌い。


 私と弟は暖かい部屋の中にいて、外を見ていることしかできなかった……から。


 彼が現れた。カフェのガラス越しに私を見つけて微笑んでくれた。


 微笑み返そうとして、彼の後ろの夜の暗さと白い雪の中での微笑みに、心が悲鳴を上げた。


 私の、私の母を殺した男が、庭からガラス越しに私に向けた微笑みと全く同じだと。


 顔が強張る。手が震える。

 

 おかしい、おかしい!

 あれから16年も経っている。なのに、なぜ、同じ顔なの?

 

 なのに同一人物だということがわかってしまう。


 冬至さんは私の表情から悟ったのだろう。


 あきらめたようなかすかな微笑みを浮かべるとこちらに背を向けて去って行った。


 涙が零れ落ちる。


 

 行かないで欲しいという愛しい気持ちと、母をなぜ殺したのかと責める気持ち。


 私は去って行く冬至さんの背中が視界から消えても、しばらくそこから動けなかった。

読んで下さりありがとうございます。

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