冬至 ーとうじー
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなり挑戦しています。
今回で3作目となります。
1作目は異世界(前世・悪役令嬢もの)、2作目はSF(宇宙人・幼馴染の恋愛もの)でした。
ミステリーやホラーものの設定を考えるのも結構好きでして……。
ライフワーク的にそんな世界を少しずつ短編で作っていけたらなという作品群になる予定です。
ゆっくりと細く長く書いていくことにします。(たぶん違う明るい作品をその間に書きたくなると思います)
不定期の更新になりますが、よろしくお願いします。
冬は日が落ちるのが早い。しかも雪までちらついてきた。
俺は駅へと急いだ。厳密に言うと駅近のカフェだが。
美樹と待ち合わせしている。
俺は美樹が生まれる前から知っている。
美樹はどうだろな。
目が合うほど……、それを会ったと解釈するならば、美樹が4歳の時に一度会っている。
今、美樹は20歳。
関わらない方がいいと三郎丸からも言われていたし、俺自身も十分わかっていた。
でも、美樹の大学で偶然に出会ってしまった。
いや、偶然と言いながら、美樹の姿を探していたのは事実だ。
三郎丸に「お前、まだ最初の妹を引きずってるのか!」と言われたが、美樹と付き合うようになったのは純然たる偶然なのだから仕方がない。
三郎丸、俺はお前のように家族を憎んではいなかったのでね。
最初は、妹が……小夜自身が死ぬことを望んでいたから助けたのだ。
だから、小夜の次の犠牲者から俺は本当の人殺しになったのだと思う。
自分を生かすための……。
雪が降ってきた。
駅を通り過ぎ、交差点の信号待ちをしていると、約束したカフェの外から見えるガラス張りのカウンター席に美樹が座っているのが見えた。遠くからだってわかる。
三郎丸によると血がつながっている相手のことは敏感に察知できる能力があるということだ。
我々にはな。
でも、たぶんこれは違うと思う。違うと思いたい。
信号を渡り、カフェのガラスの壁に近づくと美樹が顔を上げた。
俺を見て微笑む。
軽く吹き付けてくる雪の小さな粒が自分の体温で融けるのを感じる。
俺も美樹に微笑み返した。
美樹の目が見開かれ、動揺した表情を見せた。
その表情からは驚きと悲しみと恐怖が感じられた。
4歳の時もそんな目で俺を見てたね。
思い出したか……。
俺はフッと小さく笑って、両手をコートのポケットに突っ込むと踵を返した。
次に美樹に会う時が来るのだろうか……。
会いたい気持ちと会わない方が良いという気持ちと……。
夜の闇とちらつく白い雪。
俺はこのまま闇に消えたいと思った。
読んで下さりありがとうございます。