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8話 齢四千年のエルフ

武の町、アレスに到着した俺達は協力者に会いに酒場に来ていた。本人がここを希望したのである。

 「あ、アルくん久しぶり〜。話は手紙である程度聞いたよ、大変だったね〜」

 「おお、来てくれたのか」

 俺達が酒場の端の席で待っていると、背後から白い髪をした、長身の一人の女性が顔を覗かせていた。

 「初めまして、ノーティーちゃん。ヴィクトリアはね、ヴィクトリアって言うの。よろしくね!」

 「よ、よろしくお願いします」

 ノーティーは引き気味に挨拶をする。その仕草はまるでヴィクトリアを恐れているようだった。

 「緊張してるのかな? まあヴィクトリアは怖いよね」

 ノーティーがヴィクトリアを恐れる理由。それは圧倒的な筋肉をもった彼女の姿だった。

 俺は見慣れているので大して驚きはしないが、俺も初めて見た時はその風貌にビビりちらかしたものだ。

 「怖い、というより驚きの方が勝っています。あなた、エルフですよね? エルフって聞くと割と魔法使いのイメージが強かったものでつい」

 ノーティーはちらりとヴィクトリアの長い耳を覗く。ヴィクトリアは四千年も生きている、長寿であるエルフの中でもとても長生きなエルフだ。

 「よく言われるねー。修行の成果だよ、ヴィクトリアも最初はひ弱な子だったもの」

 「そ、そうなんですね。今の姿からは全く想像できないです」

 「それもよく言われる〜」

 閑話休題。自己紹介はここで終わりだ。

 「それで、その様子だと協力してくれるのか?」

 「良いよ〜、ヴィクトリアも皆に危険が及んでるのなら助けたいし、なによりアルくんの料理が恋しくなってたからね」

 「本当か!? それなら話は早い、ぜひ協力してくれ!」

 扇動の魔人を倒すということは、実力の関係上奴を確実に殺すことになる。

 それを受け入れてくれるかは、少しだけ不安だったのだ。

 「ちょっと待ってください。手紙でも書きましたが、扇動の魔人への対策のために我々に何か対価を求めていただきたい」

 「あ、そうだったね。対価か〜、まずは衣食住の保障。それから鍛錬の相手になってもらうこと、それが要求かな」

 彼女らしい要求だ。一見控えめに見えるが、彼女にとって鍛錬は命の次に大事なもの。彼女が求める要求としては最大のものだ。

 「分かった、それで手を打とう。ノーティーもそれで良いか?」

 俺は同意を求め横に座っているノーティーの方に首を向けたが、そこにノーティーの姿はなかった。

 「——ノーティー!?」

 俺が気づいた時には、既にノーティーは酒場の中央を目掛けて駆け出していた。

 俺は何事かと思いそちらに目を向け、そこに一人の女が立っていることに気がついた。

 「よく来ましたね『扇動』!! 今こそ決着をつける時です!」

 扇動の魔人、アジテート。赤い髪に魔女の帽子、魔女のローブ。高い身長にクールな顔つき。

 奴の見た目をした人間が、たった今入店してきたのだ。

 「久しぶりだね、『悪食』。まさか君とそこのえーっと、アルト? とかって男と組むとは思ってもみなかったよ」

 アジテートはノーティーからの攻撃を受け流しながら、何事もないかのように世間話を始める。

 「アルツトだ、仮にもパーティーの仲間だった奴の名前も忘れたのか。それで? 死にに来たってことで大丈夫か?」

 俺は冷や汗を垂らしながら、アジテートに向かって槍を向ける。なぜ奴が今ここにいるのかは分からないが、殺るなら今がチャンスだ。

 「まさか。君はこのワタシを殺せない。もし殺せたら、君の大切なオトモダチの命を奪ってあげるからね」

 「……ッ!」

 ハッタリかは分からない。だが、奴のその発言には凄味があり、俺にはついその最悪のシナリオが頭によぎってしまい、動けなくなってしまった。

 「追跡の魔人はよく仕事をしてくれた。せっかくならそこの邪魔者を始末してくれると助かったんだけどね」

 アジテートは邪魔者、と言ったタイミングで俺を睨みつける。分かってはいたが、最初から奴は俺なんか眼中にないのだ。

 「逃げた隠蔽の魔人はキツいお仕置きをするとして。君達にはここでワタシの恐ろしさを直々に味わってもらうとしよう」

 「ねぇ、アルくん。あれが例のアジテートって人?」

 事情を飲み込めぬヴィクトリアが不安そうにこちらを見てくる。そういえば彼女は奴と初対面だったか。

 「そうだ。あれが全ての元凶だ」

 「そっか。なら殺していいんだね」

 刹那。ノーティーとアジテートの戦いにヴィクトリアが乱入し、アジテートを正拳突きで酒場の壁まで一直線に吹っ飛ばした。

 強烈な一撃を受け、アジテートは頭を掻きながらよろりと立ち上がる。

 「乱入、そして分身体とはいえこうも簡単にやられるなんてね。全く、恐ろしいやつもいたもんだ」

 「アジテートちゃんさ、昔どっかで見たことあると思ったんだよね。あれは確か300年前ぐらいだったかな、その時も他の人を誘導して無謀なダンジョンに行かせて人を殺してたよね?」

 「殺したとは人聞きが悪いことを言うね。勝手に死んだだけだよ」

 「そうなんだ。救えないね」

 俺達が話を進めている間、周りでは人が大騒ぎし、どちらが勝つかなどの賭けを始めていた。

 さすが冒険者の群れというべきか、逃げるという考えがない。 

 「さて、このまま引くのはワタシの矜持が傷つくし少し悪戯をしていくとしよう」

 アジテートはそう言って、近くにいたハゲ頭の男を魔法で撃ち殺す。

 「聞くといい、身の危険も察知できない阿呆共! お前らは今から死ぬ。だがもしその男を殺すことができたなら生かしてやる」

 もちろんその男というのは俺だ。目障り、というより一番殺しやすいと思われているのだろう。

 「ふざけんな! 誰が人殺しの言うことなんか——」

 ぷちゅっと音を立てて声を上げた人間の頭が潰れる。一瞬にしてパニックになった酒場は、もう誰の手でも止めることができなくなっていた。

 「最初に使った手は金。最もチープなやり方だったから、今度はもう少しマシな手段を取らせてもらったよ」

 「これでマシなのかよ。強引すぎるにも程がある」

 「状況が整ってないからね。そこまで言うなら今度特大のスピーチを披露してあげよう」

 「遠慮するよ、耳が腐る」

 そうこう言っているうちにも、俺目掛けて一人の男が恐怖に染まった顔で突進してくる。

 「うわぁぁぁぁぁ!!」

 「無理するな、人を殺したこととかないクチだろ」

 俺はそれを槍で軽く薙ぎ払う。多少の実力はあるようだが、恐怖で全く実力が活かされていない。

 だが、男が一人突進したのを皮切りに人々は一斉に俺に向かって突撃してきた。

 「思った以上に使えないし助けてあげるよ」

 それに加えて、アジテートは人々の身体能力を強化させてきた。非常にまずい状況である。

 「ダメ押しにもう一発」

 アジテートはそう言って俺の背後から炎を放ってくる。避ければ人々に当たってしまう、とはいえ防御すれば人々に刺し殺される。

 まさに、絶体絶命のピンチだった。

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