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31話 魔人の正体

「なっ、お前何をやって!?」

 「ノーティーちゃん!!!」

 ヴィクトリアが金切り声を上げる。その叫びはあまりに悲痛で、聞いていられなかった。

 ノーティーが俺を庇って、ぐったりと地面に横たわっている。

 その事実がどしんと重くのしかかっていた。

 「後は頼みましたよ……お二人とも。せめて鎖は切っていきます」

 ノーティーはそう言って自身の影を使い、俺達を戒める鎖を切断してくれた。

 そしてノーティーは、黒い影を辺りに飛び散らせて、消えてしまった。

 「あーあ、せっかくの獲物が死んじゃったよ。これはあんたらに惨たらしい死を持ってして償ってもらうしかなさそうね」

 アジテートは再び俺達に手をかざして、魔法の発動を開始する。

 「……?」

 黒い影がなぜか残っている。彼女が亡くなったのなら、これも消えて然るべきではないだろうか。

 黒い影を辺りに飛び散らせて消えてしまう。よく考えてみると、おかしなところだ。たとえ魔人であっても、血は赤いし肉体は普通に存在をしている。

 「「「——を顕現せよ。アーティファクト•プレデター」」」

 影から一瞬何かが飛び出したかと思うと、次の瞬間にはアジテート左半身が、一瞬にしてなくなっていた。

 「ぐぉああああ!!」

 「な、なんだ?」

 「よく分からないけどチャンスだよ!今のうちに浄化魔法を撃ち込んで!」

 「あ、ああ!」

 俺はヴィクトリアに言われるがままに浄化魔法を溜め込んで、最大出力で放つ。

 「あ、あがぁっ!」

 アジテートは再生が追いついていないようで、まるでスライムのように身体が溶け出していた。

 「はあっ!」

 ヴィクトリアも持っていた槍を振り回し、再生されそうになる四肢を片っ端から切り落とす。何が何だが分からないが、このチャンスを逃せば後はない!

 「……この手は、できるなら最後まで使いたくなかったんです」

 「お前は……ノーティーなのか?」

 俺の視界に入っていたものは、まるでノーティーが今のアジテートのように変身したような、黒い怪物だった。

 「そうですよ。醜いものでしょう? わたしはそこの女と同じ怪物となったのです。もっともそこの女はわたしがこの姿になれることを知らなかったですけどね」

 ノーティーが何かを隠しているのは知っていた。それが俺達のためになることも、本人が隠したがっていたことも。

 アジテートにいわゆる第二形態があったのを言っていなかったのも、無意識のうちに言うのを避けてしまっていたのだろうか。

 「やってくれたな。まさかあんたもこの領域に到達していたとはな」

 「本来、到達すべきでない領域ですよ。人間でいられなくなるのですから」

 ノーティーは次々にアジテートに追撃を加えていき、首を切り飛ばす。

 「でもこれであなたを倒せるのであれば、わたしはもう人間に戻れなくなっても構わない」

 「っこいつ! 仕方ない。ここは逃げさせてもらうわ」

 アジテートはノーティーを蹴り飛ばすと、走って逃げ出そうとする。

 (逃がさないよ)

 そこにサイの拘束魔法が降り注ぎ、アジテートを雁字搦めに拘束した。

 「終わりです。余裕のように見せかけて、再生も本当は限界だったのでしょう?」

 「だからどうした! あんたらなんか一人ならあたしの足元にも及ばないくせに!」

 「そうですね。でも敵をこんなに作ったのはあなたの自業自得です。せいぜい自分を責めて、後悔しながら惨めに死んでいってください」

 ノーティーは影の口を大きく開けると、アジテートを捕食した。

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