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30話 第二形態

巨大なピンク色のエネルギー体となった、アジテートの力は絶大だった。

 まず最初にサイが殴り飛ばされ、魔法による追撃で殺されそうになったのをヴィクトリアが庇いダウン。

 次に俺は浄化魔法を乱射しアジテートに風穴をいくつも開けるも、すぐさま回復されて雷魔法でぶっ飛ばされてしまう。

 「頭が追いつかないなもう!」

 ミルシュはマターとバズを引っ張って戦線離脱し、その後もサイとヴィクトリアを引き下げようとしたが、その前にアジテートに迎撃されてしまった。

 「ねぇ、ノーティー。あんたはあたしの真の力を知っていたわね? どうして勝てると思ったのかしら。こんなにも実力が離れているというのに!」

 「ぐふっ!」

 アジテートは近くにいたヴィクトリアを蹴り飛ばしながら、ノーティーを挑発する。

 その発言は俺の中で、以前サイが言っていた、死にに行かせる気かというニュアンスの発言と重なった。 

 「あなたの方こそ分かってませんね。その実力差を埋めるために、わたしは仲間を集めたんです。アルツトさん、回復を」

 「オーケー。それから疲労回復だな」

 俺は味方を対象に広範囲の回復魔法を使うと同時に、ヴィクトリアとノーティーに精気を飲ませて直接体力を回復させる。

 「ほい隙あり」

 サイは油断しているアジテートにぬるりと接近すると、反射するバリアに手を触れ破壊を試みる。

 しかし一瞬でとはいかないようで、バリアに密着している間にアジテートの魔の手が再びサイへと襲いかかろうとしていた。

 「させない!」

 そこに俺は浄化魔法を撃ち込んで、アジテートの動きを一時的に止める。とにかくあのバリアは厄介だ、サイに無茶をさせてしまう分、俺達が全力でサポートしなければ。

 「はぁっ!」

 続けてアジテートが空中に複数の魔法陣を展開し、サイに砲撃を行うのをヴィクトリアが片っ端から魔法陣ごと破壊する。 

 「よしっ、解除成功! 今だよ!」

 「馬鹿だねぇ。解除されたならもう一回張り直せば終わりよ」

 サイが解除した途端に、ヴィクトリアは再び同じバリアを展開する。

 「無駄だよ! 僕はただ解除しただけじゃないんだ。もうその手は通用しない!」

 サイは再び一瞬にしてバリアを触れずに破壊し、アジテートのそのピンクの肉体に触れる。どうやらバリアは完全に克服したらしい。

 「そう。で?」

 「あがっ!」

 アジテートはサイの目の前で自爆を覚悟してか、爆破魔法を使ってサイを黒焦げにしてしまった。

 「サイ!」

 俺はすぐさまサイに回復魔法を使い、彼女を連れて後ろに下がる。

 「ごめん、調子乗った」

 サイは本来後方支援。アジテート相手に触れて《侵入》を使おうとしたことを謝っているのだろう。

 「無茶しすぎないでくれ。後少しで俺も治せるか怪しいラインだったぞ。でもやっただけの価値はあったみたいだな」

 アジテートはサイに《侵入》の力を使われてか、あの反射バリアを張れなくなっていた。それに心なしか攻撃の動きも遅い。

 「僕の《侵入》は名の通り、魔人達の耐性も貫通するからね。もっと色々弄りたかったけど、これ以上近づいたら死ぬから大人しく結界の外から援護するとするよ」

 サイはそう言うと、瞬間移動魔法を使い戦線離脱する。サイは本来前線に出る人間でない。それなのに来てもらったのだ、感謝しなければ。

 俺が再び前線に戻ると、アジテートはヴィクトリアと決死の肉弾戦をしていた。そこにノーティーが的確に魔法と影を放ち、アジテートの身体を着実に切り裂いていくが彼女はすぐに身体を再生してしまっている。

 「まったく、キリがないね。まるで霧と戦ってる気分だよ」

 「再生の分体力は削れているはずですが……実感がありませんね」

 「そろそろ気は済んだ? それじゃ終わらせるわね」

 アジテートはあくびをすると、巨大な魔法陣を空高くに生成した。

 「……まずい!」

 アジテートが使おうとしているのは、おそらく——

 俺が思考を終えるよりも先に、アジテートは魔法を発動していくつもの鎖を発生させて一瞬にして俺達を拘束した。

 「あんた達にはタイムリミットがある。一つはあたしがこの雨の魔法を克服し、《扇動》の人の思考を操る力を復活させること。ただあたしは根本的に思考操作を無効化されるのを防ぐ方法はない」

 「くぅっ」

 必中だったのだろう。俺も反射で回避ができなかったし、タイムリープをできるヴィクトリアもあっさり捕まってしまっていた。

 「だから雨雲を破壊する他ないが、雨雲は結界の上ときた。だからもう一つのタイムリミットを利用する」

 アジテートはそう言って、俺の方に手のひらを向けてきた。

 「それは回復役のあんたを殺すこと。だけどあんたは勘が良い、普通に殺すことは困難だ。だが拘束した今なら容易に殺せる」

 「……」

 俺は黙っていた。正真正銘の絶体絶命でサイの援護を期待する他ないが、おそらく間に合わない。

 ここまでの圧倒的な差。今までこいつに俺達は遊ばれていただけだったのか。そう思うと、とても悔しかった。

 「じゃあな、めんどくさかった奴」

 アジテートの手から光線が放たれた瞬間。ノーティーが俺を思いっきり突き飛ばして、代わりに攻撃魔法を受けた。

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