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28話 過去への決着

「はぁっ!」

 ミルシュは自身を電撃へと変え、一瞬で俺の目の前に現れ大剣を振ってくる。

 これがこいつのもっとも強いところだ。瞬間移動魔法とは違う原理で、圧倒的な機動力と威力を持った攻撃を仕掛けられる。

 「くっ!」

 俺はその攻撃を剣で受けると、浄化魔法を使ってミルシュの剣を壊そうとするが、ミルシュはまた電撃へと姿を変えて躱してきた。

 「オレはどうしても納得できないんだ。君もヴィクトリアさんもサイも、虐殺なんてするようには全く思えない。何より、サイが死を偽装していたのが一番の謎だ」

 ミルシュは質問しながらも攻撃を崩さない。話す時ぐらい攻撃をやめてほしいものだが、まあ元からこいつはそういうスタイルなのだ、今更言っても仕方ない。

 「そりゃしてないからな。言って信じてくれるかは分からないが、サイはアジテートに狙われてたんだ。だからあいつは死を偽って隠れていた」

 俺は猛攻をいなしつつ、回答する。手数が多すぎて、このままでは押し切られそうだ。

 「アジテートか。君が前に彼女を批判していた時は証拠がなかった、だから信じられなかった。今回はあるのか?」

 痛いところを突いてくる。実際そこは紛れもない事実であり、俺が証明しなければならないポイントだった。

 「おっしゃるとおりだ。俺は証拠を見つけられなかったし、見つけてもお前らは操られていてどうしようもなかっただろう。前はな」

 あの時の俺は、魔人のことすら知らなかった。だからアジテートに良いようにされた。

 でも今はサイがいる。彼女ならこの状況を覆せるはずだ。

 「サイ、頼む」

 (あいよ〜)

 俺達とサイは魔法で連絡が取れるようにしているのだが……こいつ、やたらノリが軽いな。張り詰めるのも良くないし構わないが。

 サイが打ち込んだ魔法は地面に命中し、その周りの空間を魔法で染め上げた。

 「これは……記録魔法か。サイがよく記念にと使っていた魔法だったな。これで真実を見せるってことか」

 「ご名答。俺が偉そうにするのもどうかと思うが、よく見とくんだな」

 空間が映し出すのは、サイが記録した光景。俺と揉めていた時の記録こそ残っていないもののかなりの数の悪事が残っていた。よくこんなものを記録していたものだ。

 「……確かに、これを見るにアジテートは相当な悪事を働いていたみたいだな。それは分かった。次に聞きたいのは、俺が見た君達が虐殺をしている様子についてだ」

 「見たって言っても本当に俺達はやってないし、街に来てすらいないとしか言えないんだ。今来たのも、アジテートを倒すためだけで住民に危害を加える気は全くない」

 おおかたアジテートが変身魔法を使ったのだろうが、俺達の無罪を証明するものはほぼないようなものだ。

 「そうか。話を聞いている感じでは、確かにお前達の行動は一貫している。だが、サイの死の偽装だったり今回のこの謎の雨と良い、お前達に疑わしいところがあるのも事実なんだ」

 「あーもう面倒くさい! これでも食らえ!」

 突然、サイが俺達の間に割って入ったかと思うと、ミルシュの身体に手を当てて彼を気絶させた。

 「ちょっサイ! お前がこっち来たら向こうはどうすんだよ!」

 「あの二人なら大丈夫。それに、僕とアルツトが現場にいないといけない事態になっていてね、さっさとこっちは片付けたい」

 「うぁあ……ああ」

 ミルシュはフラフラと立ち上がり、俺達を交互に見る。一体何をされたのやら。

 「最終手段のつもりだったんだけど、僕のここ一ヶ月間の記憶の一部をぶち込んだんだよ。食らった本人に負担がかかるし、下手するとミルシュの人格にも影響を及ぼしかねないからやりたくなかったんだけどね」

 サイが俺の疑問に答えるように解説してくれる。聞いているだけで相当やばいものだということが分かるが、果たしてミルシュは無事なのだろうか。

 「ああ……君達が無罪だってことはよく分かったよ。申し訳ない気持ちで一杯だ。早く皆のところに戻って君達を襲うのをやめさせるよ」

 「なんか洗脳してるような気分だな。これ本当に人に向けて良いものなんだよな?」

 ミルシュのあまりの心変わりの早さに、俺は心配そうにサイに尋ねてみる。

 しかし、返答をしたのはミルシュの方だった。

 「あー、大丈夫。これはちゃんとした本心だ。君達が魔法の雨を降らした時からずっとアジテートの過去の発言の違和感が止まらなくなっていたんだ」

 「あの雨はアジテートにかけられた《扇動》の力と呼ばれるものを解除するためのものだよ。あんただけでなく、本来ならマターとか他のパーティーメンバーにも有効なはずなんだけどね。そもそもあいつは唆しているだけだから、違和感を持てないのかな」

 「まあ、そうなんだろうな。それで結局急がないといけない理由はなんなんだ?」 

 「あいつ、ありとあらゆる攻撃を反射するバリアを張ってくるんだよ。その対策として僕とあんたの力が必要なんだ。後は単純にマターとバズが厄介。ミルシュ、早く止めてきて」

 「分かった。すぐに共に向かおう」

 ミルシュは俺達の両手を掴むと、再び戦場へと舞い戻るのであった。

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