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1話 悪食少女

 「アルツト・バルツァー! お前を我がパーティーから追放する!」

 一体いつから、彼らはこうなってしまったのだろう。

 元々俺達のパーティーは、ただモンスターを討伐し、そのお金で旅をするだけが目的のパーティーだった。

 それがいつの日か、このパーティーはとにかくモンスターを狩りまくり、強さだけを求めるパーティーになっていた。

 「わかったミルシュ。ところで俺は料理人兼食糧保存係だ。後継はいるのか?」

 「いる。アジテートだ」

 アジテートという魔女は深く魔女の帽子を被っていて表情は詳しく分からなかったが、その口元は笑っていた。

 「そうか。無礼を承知で言う、俺はそいつを信用していない。何か妙だと感じたら逃げろ」

 アジテート。こいつは危険な奴だ。

 ミルシュは以前、ある仲間が死んだ時に強さを求め始めていた。

 そこまでは健全だった、あれは他者を助けたいという彼の思いがあったからだ。

 しかしアジテートが来てから早一ヶ月。このパーティーは完全におかしくなった。

 ミルシュだけでなく、殆どのメンバーが力に取り憑かれたかのようにそれを追い求め、日々死にかけるような鍛錬を続けている。実際に無理のしすぎで俺の蘇生が間に合わなければ死んでいた者まで出る始末だ。

 最近ではとうとう違法なポーションや黒魔術に手に染める者も出てしまった。

 「本当に無礼だね。あたしは君に恨まれることをした覚えはないよ」

 「その通りだ、失礼だぞお前。なおさらうちには置いておけん、今すぐ出ていけ」

 2人は俺に対し怒りを向け、ミルシュは俺を押して扉の外に追い出そうとする。

 これは、ダメだ。

 「……すまなかった。俺は疲れているのかもしれない、今のは気にしないでくれ」

 俺はただ後で何かが起きないかと期待して助言をしたにすぎない。下手に詰め過ぎればアジテートに警戒される。

 「最後にこれだけ持っといてくれ、俺の浄化魔法をありったけ詰めた瓶だ」

 「分かった、これはありがたく使わせてもらう」

 俺は弁解を諦め、ミルシュに瓶だけ渡してパーティーの元から離れた。

 正直、俺はこうなった犯人がアジテートだという確信を持っている。

 俺は仲間の洗脳を解こうと様々な手を施したが、どれも効果がなかった。

 それを疎ましく思ったのか、奴は何回も俺を事故死に見せかけて殺そうとしてきたのだ。

 しかし、俺がそれを仲間に告げたところで、信じてもらえる事はなかった。

 あの魔女、アジテートは必ず倒す。放置する理由はない。

 だが、今は流石に分が悪い。協力者を募る必要がある。

 カタギでは駄目だ、これは俺の復讐。それに一般人を巻き込むわけにはいかない。

 「さて、これからどうしたもんかな。俺が余計なことを言ったせいでこんな時間に放り出されちまった」

 辺りはとっくに日が落ちていて、真っ暗になっていた。近くに宿屋があれば良いが、今から入れる保証はない。

  「……ん? 何やってんだあいつら」

 考え事をしていた俺は視界の隅で、人目のつかない洞窟に向かってコソコソと歩いていく男達の姿を捉える。

 「追うか」

 自分はついつい物事に首を突っ込みがちなところがある。自分でも分かっているのだが、どうしても好奇心が勝るのだ。 

 俺が彼らに気づかれないように尾行していると、俺はその前にフードを被った、小柄な黒髪の少女がいることに気づいた。

 「もしやあの子を襲う気か? だがまだ分からん、盗み聞きをして情報を探ろう」

 俺は耳を澄まし、男達の話を聞く。

 「こんな時間と場所にガキが一人なんて、馬鹿な奴もいたもんだ、お前ら準備はいいか?」 

 「もちろんだ兄貴! やっちまおうぜ!」

 なるほど、やはり完全にクロだ。トラウマになる前にさっさと潰すか。

 「人智を持って敵を焼き滅ぼせ、ピューリファイア!」

 俺が呪文を唱え終えると、炎が俺の手に装填される。この魔法は対象を設定し、それのみを焼き払う魔法。同士討ちの危険のない、便利な魔法だ。

 だが、俺がその魔法を撃つことはなかった。

 「うん、やっぱり夜食は最高ですね。あなたもそう思いませんか?」

 金髪の少女が出した黒い何かが男達を刺し、男達を一瞬で倒したのだ。

 「お前は……誰だ?」

 怖い。何が怖いかって、俺はこの少女に恐怖を抱けないのだ。モンスターも、山賊も大抵殺気を放つものだ。

 だがこの少女にはそれがない。正確には、とても巧妙に殺気を隠している。

 「私は悪食の魔人。人間から生まれた突然変異種です」

 「魔人だと!? それに悪食って……まさかそいつら食べるのか!?」

 「ははっ、乳牛を食べる人がどこにいるんですか? 私が食べたのはこの人達の精気、嗜虐心、血、そして記憶です。記憶は単純に今の出来事を忘れさせるためだけですけどね」

 少女は満面の笑みを浮かべ、男達を黒い何かから解放する。どうやらすでに食事は終わっていたらしい。

 「嫌だが納得できる解説だな。ということは食用の人間は普通に食うってことかよ」

 「まあそうですね。そんな人いないですけど、皆副産物の方がおいしいので」

 「それは助かった。カニバリズムに目覚められたら、村が一つ消えかねない」

 俺はそう言いながら、少女が出してきた黒い何かを避ける。

 まったく、油断も隙もあったものではない。

 「今のを避けますか。せめて苦しませずに記憶を消してあげようと思ったのに。こうなったら実力行使と行きましょう」

 少女は自身の影を実体化させ、俺に向かって放ってくる。おそらくあれが男達を倒したものの正体だろう。

 「あー、こういうのを飛んで火に入る夏の虫って言うんだろうな! 発射!」

 俺は先ほどまで貯めていた魔法を少女に向かって放つ。もちろん対象は変更済みだ。

 「炎? ありがとうございます!」

 「げぇ、喰われた!?」

 少女は俺の放った炎を喰らい、完全にかき消してしまう。

 考えろ、考えろ考えろ考えろ! どうやったら勝てる? どうやったら交渉のテーブルにつかせられる?

 俺は頭を高速回転させ、少女に対抗できる手段を必死に考える。

 「そうだ! これを使えば……なんとかなれぇ!」

 俺は素早く激辛スパイスを自分のリュックから取り出すと、中身を辺り一帯にぶちまけた。

 「きゃあぁぉぁぁぁぁぁぁ!!」

 少女はまともに食らってしまったようで、地面に倒れて苦しみ悶えていた。

 「さあ交渉の時間だ悪食の魔人。この俺、アルツトの仲間になる気はないか?」

一部実地調べ等が必要になるため更新遅くなるかもです、ポイント等は特になくても適当に進めてきます

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