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ぼっちヒーラー、ゲームの世界に転生する   作者: 猫ともふもふを愛する大臣
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4話 ゴウキ視点


俺の名前はゴウキ、王都アルベルンのギルドマスターをやっている。昔はバリバリ冒険者をやっていて、幼馴染たちと共にSランクにまで上り詰めたんだが、歳には敵わず潮時かと思って引退したんだ。


そんな折、ギルドからの打診があってギルドマスターになったという流れだ。冒険者の頃と違って書類仕事がほとんどで息が詰まりそうだが、俺みたいな奴が育ってくれるかもしれないと考えると自然とやる気が湧いてくる。


それに、給料も良いしな。そして今日もいつものように机に向かって仕事をしていた俺だが、突然とてつもない気を俺のパッシブスキル闘気の心得が感知した。


(なんだ!魔物か!?)


こんなデカい気を放てる奴が人間なわけない。俺は昔の名残で腰にかけていた剣に手をかけながら、ギルドのカウンター口へと向かった。


だが不思議なことに何も騒ぎが起きていない。いや、抗議している少年の声は聞こえてくるが……年齢確認に引っかかった?よくあるやつだな。っておい!まさか──


俺は扉を開けて声の主を視認した。服装的には治癒士っぽいが、12歳ぐらいだろうか?その年じゃ、小さい頃から鍛えていてもヒヨッコがいいとこだろう。だが、そのやけに容姿がいい少年からは肌がピリつくほどの気が放たれていた。


気とは生命エネルギー、その量を見れば相手の強さはおおよそわかる。この少年は明らかに異常だ。人間が放てる気ではない。恐らく、人ならざる者なのだろう。


直感的にそう判断した俺は、目の前の人物が安全な存在か否かを確かめるために行動を起こしていた。


「話は聞かせてもらったぜ。俺の名前はゴウキ。すげー強そうな気を感じたから来てみたら、こんなガキとは驚いたな」


あくまで平静を装い、警戒しながら俺は少年に話しかける。すると、受付嬢のミラに頭を叩かれる。これでも一応上司なんだが?まぁ、緊張がいい感じに解れたから助かったんだが。


それからギルドの管理下に置くために特別措置で試験を受けさせることにしたのだが、少年は口下手のようでしどろもどろになりながら返事をしていた。


訓練場に出ると試験の説明をしてから剣を抜く。どれほどの実力か、確かめさせてもらおう。俺は元Sランクだ。全盛期と比べると劣るが、今でも十分トップクラスの実力を持っている。格上の魔物なら何体も倒してきたんだ。負けるつもりは毛頭ねぇ。


「武器はなんだ?ないならあそこの籠から適当に取っていいぞ」

「大丈夫、です。持ってます」


そう言って少年が取り出したのは長い杖だった。神聖さを感じさせる白い素材で形取られたそれは、所々に厳かな金の装飾がなされ先端には白い稲妻が走る水晶が嵌め込まれていた。


(あの存在感……間違いねぇ、あれは神話級アイテム!)


神話級アイテムとは国に一つあればいいぐらいの希少なものだ。それらはどれも絶大な効果があり、戦争の火種になることすらある。


伝説級アイテムなら一つだけ俺にもある。それがこの俺が持ってる剣なんだが、やはりあの杖と比べると質が違いすぎる。何なんだあれは……ってよく見たら服もじゃねぇか!なんなんだアイツ!



「両者準備はできましたか?……はい、大丈夫ですね。それでは始めてください」


内心穏やかではない俺をよそに試合の火蓋を切って下された。


「先手は譲るぞ。お前の力、見せてみろ」


俺は心を落ち着かせると、余裕そうに話しかける。すると少年はコクリと頷いた。一撃受ければ大体の実力は予想できる。先手を譲るというこの行為は、未知の相手に対処する方法を探るためだった。


(さて、どう出る……)


相手の出方を待っていると、神秘的な六角形の光が彼を包む。確かあれは……クリスタルウォール。大聖者の上位技能じゃねえか、冒険者時代はお世話になったなー。


そんなことを考えているうちにどんどん技能を発動しているようだった。


(大天使の加護はまだしも、陰陽結界……だと)


「な、これは……!」


今度は空間から光の鎖が現れ、俺を縛るとそのまま粒子になって消える。神聖国で見覚えのあるその技能に俺は目を見開いた。


「で、デバフも使えるんだな」

「はい、ヒーラーですから」


誤魔化すようにそう言った俺だが、内心は戦々恐々としていた。


(おいおいおい!EX技能3つも使ったぞあいつ!上位職をマスターしないと発現しない技能を3つも!上位職を複数マスターしたなんて話聞いたことがねぇ……EX技能をほとんど見たことがない野次馬どもは気付いてないみたいだが、これは流石にねぇだろ!)


そんなことを考えてる俺に対して、彼は光のレーザーを放ってきた。初心者治癒士が初めに覚えることで有名なホーリーレイだ。


火力が低く、敵の妨害をする程度の使い方しかできないそれを俺は剣で受ける。しかし、あまりの重さに軌道を逸らす以外の選択肢がなくなった。


「ぬぅぅ!重い!」


うまく上に軌道を逸らすと、今度は俺の番だと言わんばかりに気を剣に纏わせて斬り掛かる。技能発動後には僅かな硬直があるからその隙を利用したのだ。硬直かは回復してないその少年は無防備に俺の攻撃を受けた。


ザン!


確かな手応え、その筈だった。


だが、少年は衝撃で少しノックバックしたものの、ダメージを受けてる様子はない。ただ不愉快そうに眉を顰めただけだ。


「なっ、馬鹿な……なんだこの手応えは。俺はレベル64だぞ!」


レベル60台は英雄レベルの能力、それ以上の存在は中々いない。なのにこれは何だ。上位技能の闘気斬を使ってこれはあり得ないだろう。やはり、こいつは人間じゃない。


思わぬ事態に硬直していると、その隙を突かれて光の雨が俺を襲った。


これまた威力の低い通常技能のはずなんだが、光の雨一粒一粒が確実に俺を重症へと追い込んだ。咄嗟に後退するが、皮膚は爛れ全身が激しい痛みに襲われている。普通ならここで降参すべきなのだろう。


だがな、俺は負けず嫌いなんだよ。何としてでも一泡吹かせてやる。上位技能で無傷なら、これを使うしかねぇよな?


「ふぅ……」


俺は剣を天に掲げると全身の気を剣へ集めていく。これを放てば俺はもう気の使いすぎで戦えなくなる。だが、上位技能でノーダメージなら俺のEX技能『ルミナスストライク』を喰らわせる他ないだろうよ。


「ギルドマスター、それは!」

「くらぇぇ!」


そして闘気の刃が放たれた。地面を抉りながら進むそれを前に、あろうことか少年は受ける姿勢のようだ。


(油断大敵だな!強すぎるやつは慢心からくる油断から負けるってのが定番なんだ!流石にこれは受けられまいっ!)


ザシュ!


光の刃は少年に当たると霧散していく。それが晴れると、そこには無傷の少年の姿があった。先程より眉が顰められていて、眩しいと言外に言われているようである。


(は?嘘だろ……)


「そんな……まさか、これも効いてないのか?くそ、信じられん……降参だ」


俺の心はポキリと折れた。


しかし、これでこの少年の正体はおおよそ分かった気がする。彼は、いや彼のお方はきっと神様なのだろう。そうでなきゃ神話級アイテムの複数所持や、あり得ないあの強さの説明がつかない。


神話では、人を導くために神様が人間に化けて地に降りるという話がある。神聖な光の力を使い、人を正しき方向に導きケガや病気をもつ者は治し……きっとあのお方はそういう存在なんだろう。なるほどな……俺なんかでは勝てないわけだ。


その後、彼を連れてギルドに戻り、登録を終わらせた。人間に正体をバラしたくないであろう彼の意思を尊重し、俺は頑張っていつものように振る舞ってみせた。


だがよ……ミラちゃんから鑑定石見せてもらったんだが、流石にレベル99は正体隠す気あんのか?って思っちまう。名前だってそうだ。


名前というものは神様に与えられる。ゆえに変更することはできないし、神様だって人が将来困らないように名前をつける。だから普通、ぼっちヒーラーなんて意味不明な名前は存在しない。


だが、もしこの名前が人間のものではないと仮定したら?彼のこの名前は、我々では理解できない神語なのかも知れない。それだったら意味不明と感じるのも納得できるというものだ。


全く……口下手なのも人語をあまり話さないから何だろうが、そんなんじゃすぐバレちまうぞ?困った神様だぜ。ステータスに関しては外に漏れないよう厳重に管理しなきゃいけないな。

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