負けないぞ
はたらく人の深呼吸
右向けばヘコヘコ頭を下げる同僚が
左を向けば白目をむいてる管理職
休憩室で一服しようと
買った缶コーヒーがぶ飲みしては
ゴミ箱のなか缶を投げ入れる
風ふく窓があった
閉めるのを忘れたんだろ
見上げた空は高圧的で
今にも泣き出しそう
逃げ出したいな
嫌だなと
あの鳥のようにと
幾度となく願った
くるくる回る日常に
足元すくわれ
立っている場所が分からない
前向けば自分よりうまく
立ち回っている人たちがたくさんだ
後ろ向きは嫌われるらしいね
やめとくよこんちくしょ
下向けばこぼれたコーヒーを
たかる虫たちうごめいて
それがなんだか不気味で不気味
踏もうとしたら散ってゆく
……まぁいいけどさ
「何してるの」と君が言う
私よりうまく世の中を渡れる人だ
ライバルなんておこがましいか
入社一ヶ月
なのに君は余裕だねなんて言葉
放つと嫌われる
だから言わない
でもホントはすごくすごく
羨ましいな
こんな自分が嫌いで嫌い
「どうして君は声をかけるの?」
素朴な疑問すぐさま君は
こう言った
「かけたかったから」
よくわからないけれど嬉しい
話していたら休憩室に光がさした
君が輝く私も少し輝いて
そんなこんなで仕事は続く
空っぽの缶コーヒー
入ったゴミ箱見つめて私
「……負けないぞ」
こぶし握りしめて呟いた
歩けば動く私の視点
いつか誰かの指標になればいいな
今はまだ見えない道を模索中
仕事は続く社会のためとかくそくらえ
生きるために私はたらく
それができれば
とってもとってもえらい人
褒めてくれたって良いじゃない
頭下げてた同僚にご飯を奢る
白目向いてた管理職にはエナドリを
声かけてくれた新人に
笑われないようもう一度意気込んだ
……負けないぞ!




