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09. 唐突な呼び出し

 


 あの悪魔は一体なんだったんだろうか。いや取り込んだからどう思ってボクに統合されたのかは分かっているけれども。


 悪魔の感性は今一つ理解し難いのはボクの精神性が人間に近いからだろうか?……それは無いか。


 あの悪魔は滅びるなんて感想を持っていたけれど真実滅びを望んでいた訳ではなく、悪魔を取り込んだボクという悪魔の一部として存在しようという不滅の悪魔らしいといえばいいのだろうか。そんな感じでボクになったようだ。


 ともあれあの悪魔自体はボクを染めようとはしなかった様だけど、彼の経験と記憶はかなりの濃度があって飲み込むのが少し難しかったね。


 さすがは万に迫る年月を経験した悪魔だと賞賛するべきだろう。


 魔術に関する知識も魂にまつわる秘術も悪魔としての性質に関しても捻れた角の悪魔は研究していたようで丸々ボクの知識になったのは大変ありがたい事だね。


 さて、これである程度目標は達成してボクが脅かされない環境は手に入ったと言える。


 異界生命体は依然として未知数だけど、この世界においては上位四種族が手に負えない自然災害から同じ国に住んでいるプロの格闘家レベルまで脅威度が下がれば十分と言えるだろう。


 つまり早急にすべき事が無くなったという事なんだけど……


「キャラメイクでもしような。」


 いつまでもライカンスロープスタイルという訳にもいかないだろうという事と精神生命体は割と自由が効く種族だ。


 実際は全裸でも身体を服のように見せることも出来るキャラメイクのために生まれたかのような便利種族だ。


 実際は魔力で形作る事に長けた種族というだけ何だけど気にするだけ無駄だね。風評被害?知らないよ。


 ボクの種族はボクの想像とは余り類似点は無いけど吸血鬼らしいので、姿だけは想像に寄せていこうと思うよ。


 体のベースは竜種だ。あくまでもベースであって精神生命体化するにあたり形は自由に変えられる。


 人型のモデルベースはアナスタシアにして外見年齢十六歳程度に固定する。


 元々王女はかなり整っているスレンダーなモデル体型をしている。

 悪行く言えばペタンというやつだ。それがいいんだろ!と声を荒らげる紳士諸君はいま一度着席して欲しい。


 ところでボクの性自認はどちらかと問われればどちらでも良いとボクは言う。


 何故ならゴブリンの性事情を知っているし経験が確かにボクの中にあり、人間種として犯された経験と記憶、人間種を犯した経験と記憶が同時に混在しているため最早ボクはどちらとも呼べない存在になっているのだろうね。


 元々が雄よりだったとしても無理やり犯されて雌になる雄が少なからずいる事から割と曖昧なものなのかもしれない。


 閑話休題


 話を戻してキャラメイクの続きをしていこうか。


 髪は腰まで伸ばしたストレートロングでいわゆる姫カットでサイドを顎のあたりで揃えて前髪を眉の少し下で揃えた。アナスタシアの地毛が金色だからかコレジャナイ感が凄いね。


 吸血鬼と言えば金髪か銀髪で意見が別れるイメージがない訳では無いけど今回はボクの趣味へと走って黒髪にする。姫カットといえば黒髪だろう。


 顔の方は余り弄らなくても問題ない程に整っている為左右を対称にする程度で収めておいて、瞳は彼岸花のように深い緋色にする。


 全体的なイメージは座敷牢に幽閉された姫をイメージした感じだろうか。それに合わせて簡素な着物と袴を魔力で編んで纏う。


 うーん、当初の吸血鬼っぽいキャラメイク案から微妙に離れて成長した座敷童子みたいになったけど……まぁいいか。これはこれで気に入ったし。


 これから知性体を相手にする時はこの姿を基本に動こうか、この世界だと黒髪のように濃い色素はすごく珍しいようだし初手から舐められるような事はまず無いはずだ。余程の考え無しでもない限り。


 ライカンスロープの方もやっつけ仕事ながらそこそこ気に入っているのでそっちも使える機会があれば使っていこうかな。




 ◆❖◇◇❖◆




 はて?ここは何処だろう?よくあるイメージの屋敷、その庭園の一角のような場所だろうか。

 以前にもこんな事があったけれど、また何処か不明な世界にでも飛ばされたのだろうか。


 もしそうなら転移対策もしないといけない。対策方法なんて全く思いつかないけれど。


「安心してください、今回は少なくとも異世界転移ではありませんよ。」


 ふと声が聞こえる方に目を向けてみるとティーテーブルでお茶を嗜んでいる休憩時間にスーツ姿で喫茶店に入ったOLのような女性がいた。


「異世界転移では無い、と。ではここは何処なのでしょうか?それとボクの心を読んだりとかしてるのかな?」


 最低限ボクの現状を知っていそうな存在が目の前にいる以上、そこに聞かないなんて選択肢は存在しない。


 彼女はボクにティーテーブルを囲む椅子に座るように手で促し、僕が座るとお茶を出し話し始める。


「別に心を読んでいるわけではないですよ。ただそう思っていそうだなって君の経緯から予測しただけです。」


 今の話が本当だとすれば彼女は少なくとも現在読心を使っている訳では無いと、使えないとは言っていないしね。


「そしてごめんなさい、君をここに呼んだのは私です。ここは私の仕事部屋のようなものと思っていてください。」


「なるほど一先ずはそう理解しようか。で貴方はボクにどういったご要件があるのだろうか?」


 ここに来てから彼女の気配の類が一切読めないのは些か不自然だ。ボクを召喚出来るだけの知識あるいは能力があるにも関わらずこの無とも言える気配は有り得ない為に理解するべく仮説を立てる。


 一、完全なる気配の遮断。これが出来る時点でボクより上位の存在確定で、考えるだけ無駄になる。


 二、存在が強大過ぎてボクが環境と勘違いしているというもの、これも本当にそうであるなら考えるだけ無駄だ。


 結論として最低でもボクよりは上位の存在である事と想定して動くのが安牌だろう。


「まず、自己紹介をさせて下さい。私の名はレティシア、この世界フリグラムの管理者です。」


 なるほど管理者。世界の管理者っていうのはあれだろうかいわゆる神というやつじゃないだろうか。


「今回、君に起こった出来事は非常に稀な事で、私の他にも数多いる管理者の中からも数兆年に一度の異常と呼ばれる程に数多くの奇跡とも呼ぶべき偶然が重なってのことでした。まずはその説明をさせて下さい。」


 願ってもない事だ。つまりボクの境遇を神の視点から解説してくれるという事だろう。





 管理者レティシア曰く。


 事の始まりはローゼンヘイム王国を支配しようとしたウォシュピア王国がローゼンヘイムの公爵バレンタインを懐柔して内部から崩壊させて、援助という形で勇者を送り込むという頭の痛い作戦に端を発している。


 公爵を抱き込むまでは上手くいったようなのだが、異世界召喚を応用した勇者召喚の方で問題が起きたのだった。


 そっちがボクに関わる問題だそうで、勇者召喚に組み込まれた寿命消費成長機構と呼ばれる勇者を制御する為に埋め込まれる術式で、文字通り寿命を消費して才能を引き出す術式は正常にボクの身体に埋め込まれて現在ではボクの一部と言ってもいいくらいには身体器官の一つとなっているのだそうだ。


 それは正常に作動したのだけど、問題は召喚座標と勇者への改変に対する負荷については一切の設定がされておらず、召喚後に不帰の森に誤召喚されそこで、本来は朽ち果てる筈だった。


 事実朽ちているのは間違いないのだけれども、そこでアンデッドとして起き上がるのは相当に低い確率だったのだという。


 召喚体がアンデッドになる発生率はそれ程でもないのだそうだが、ボクのような亡骸の召喚体がアンデッドになる為には、お粗末な召喚陣に殺されて飛ばされた先がアンデッドの発生し易い数多の死者を出している不帰の森のような環境だったという、箱の中に時計のパーツを入れて振ると時計が出来るレベルの偶然が必要なんだそうだ。


 そうして晴れてアンデッドになったボクに二つ目の奇跡、いや素養というべきものが発覚したそうだ。


 本来生物は魂の大きな変異には耐えられずに気が狂ってしまうのだという。アンデッド、その中でも吸血鬼というのはその魂を大きく変容させて起き上がる為にまず間違いなく精神を崩壊させて理性なき不死者になるのが常識なのだそうだ。


 稀に自我を持った吸血鬼も魂を一つ二つ取り込んだ時点で精神の主導権争いに敗れて主導権が移りやがて何処かのタイミングで引き分けて精神が崩壊をして理性なき不死者に帰結するのだという。


 本来そうなるはずだったボクが現在こうしていられるのは執念とも妄執とも呼べるほどに我が強く、普通では精神が崩壊していても不思議では無い程の精神の変容にも適応出来る存在だったからという事だ。


 ボクが首を傾げていると管理者レティシアは一つ例え話をしてくれた。


 常に都会の喧騒が全て一語一句ハッキリと聞こえている状態で全てを理解しながら日常生活をするようなものだと。


 あぁ確かに初めはそんな感じだったような気がするね。あまりに鬱陶しいからボクとして染め上げてボクの一つにしたんだったかな。


 そうして完全な自我を保った吸血鬼のボクは皮肉にも召喚した時の制御機構を取り込んだことが原因で吸血鬼の枠から外れた存在になってしまったのだという。


 吸血鬼の本来持つ能力は吸収と変容でありその能力とは、吸収は対象の存在を吸収し吸血鬼の命と自我を増やす能力であり、変容は吸収した存在の形と能力を再現する能力だそうだ。


 それを拡張する身体器官が寿命消費成長機構であり、吸血鬼になった時点で寿命は尽きて本来であれば無用の身体器官になっていた筈の機構が真価を発揮したという。


 吸収によって得られるものは命と自我の他に本来使われない、使いようの無い余命という名の寿命がボクにそのまま加算されるという事だ。


 こうして得た寿命によってアンデッドの弱点耐性を無意識の内に獲得し強化して行ったのだという。


 更には吸収と変容も強化をしていった様で、吸収によって外部から寿命を摂取し、その寿命を使って吸収した対象の経験と筋力や知恵などを才能と見なし加算していった。


 それと同様の事を今まで取り込んで来た魂群全体へと行いボクとして力を馴染ませる事によって全て魂群が並列存在として同一の能力を持つ同一個体として存在する事が可能になったのだそうだ。


 ……つまりボクが使えるありとあらゆる力は寿命という名のリソースがあれば任意で強化出来るということなのかな?


「それが今の君という存在です。」


「丁寧な説明ありがとう。でも分からないね、どうして今なのかな?」


 考えても見てくれないか?管理者を名乗る目の前のOL風の女はボクをここに呼ぶ機会なんていくらでもあった。


 それが今というのは些か腑に落ちないんだ。まぁそれが管理者と言われればそれまでなんだけど。


「それは私が君をお呼び出しした理由にも絡んで来ます。まず私たち管理者は基本的に世界の中にいる存在には干渉致しません。」


 だろうね。でなければボクが現在に育ちきるまでに何らかの対処をしている筈だ。彼女が言うボクのスペックなら少なくとも人類を滅ぼすくらいは出来るのだから。


「しかし君は少し……いいえ規格外に成長を遂げてしまいました。それこそ管理者の領域にまで踏み込み始めています。」


「それで首輪を付けて飼ってしまおうという事かな?」


 子飼いにする事が出来るならそうした方が管理は楽だろうしね。でも彼女は否定を口にする。


「正直に言えば一世界の管理者に君は荷が重すぎるのです。精霊程度の霊格なら盟約で縛る事も意味を持ちますが君は違います。なので私としては早く成長しきって欲しいのです。」


 これは驚いた。どういう意図があるのかは分からないけれど彼女はボクに更に育つ事を願っているようだ。



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