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07.手に入れた記憶で対策

 


 知性体を取り込んだ事でこの世界の大まかな情報が出揃い始めたのでは無いだろうか。


 母体にされていた人間種達は生きる気力のようなものが根元から無くなっていたのか、ボクがアナスタシアを取り込んだ光景を見ても逃げ出す気配すら無かった。


 その後の展開なんてものは言うまでもない事だろうね。たった十八の命とはいえ、広域な安全地帯を有する知性体だ命一つの知識量、経験量共に今までの命とは次元が違う。


 そんな中でも圧倒的な知識量を持っていたのはやはりアナスタシアだった。流石は小国とはいえ国の王族だ。


 有益な情報、例えば周辺の人間種の生存圏とその詳細をかなり詳しく覚えていた。これでボクの中の人間種に対する脅威度が最底辺に下がる事になる。


 というのも、こと人間種に限った話ではあるけれど飛び抜けた一部以外はボクの知る人間種と大差が無いというのが判明したからね。


 多少魔力の影響で筋力以上の力を出せたり電力に頼らない代わりに個人の魔力で稼働する機械製品を扱うなどの細々とした違いはあれどもボクを殺せる存在足りえない。一部の英雄英傑の類にさえ気を付ければいいと判断するよ。


 次にボクが警戒すべき対象、ボクの命十八万強を殺し尽くせる可能性がある存在が確実にいる事が確定したのはボクの中では大きな情報かな。


 やはりというか何というかドラゴンを筆頭に魔物や魔獣と呼ばれる中に災害と称すべき個が存在しているようだ。


 その中でも厳重に警戒すべき龍種(ドラゴン)、精霊、天使、悪魔の四つの種族と二つの例外が存在しているようだね。


 まずは四つの種族から最初は龍種。


 龍や竜と同一視される存在ではあるけれど、違いはいわゆる格に関係しているようだった。


 竜は亜竜などと混同されているように対処可能な力の弱いドラゴンを指す事が常のようで、強力な爬虫類も場合によってはこの竜へと分類されるようだね。


 でもこれはボクに被害を与えられる存在では無い、だから消去法でいえば龍がボクが警戒すべき対象になる。


 龍と分類された龍種は大きく分けて二種類いる。片方は生物としての能力を極限にまで高めた究極生命体とでも言うべき生物の頂点とも言える圧倒的な物理力を持つ災害指定生物。


 曰くその羽ばたきは竜巻を起こし、その咆哮は地を揺るがす生物にとって最も近づきたくない生物とボクは評価している。


 でもこれもボクの脅威に、ボクを殺し尽くせると思う存在では無い。そしてボクならこの生物を殺すことが可能だ。


 ならばもう一方、龍と評される存在の中で生物の枠を食い破った正真正銘の化け物。


 法則を用いるのでは無く司る存在、真龍(トゥルー・ドラゴン)


 生物としての枠を薙ぎ払い、龍種という概念として世界に顕現する災害、物理的に屠る事は不可能に近く仮に運良く倒したとしても何れ復活する実質不滅の意思を持った災害だ。


 ボクはこれに無傷で勝つ光景が浮かばないから、この災害には最大限に警戒をしていこうと思うよ。


 次に精霊だ、言わずと知れた自然を司る種族だ。自然そのものと言い換える事が出来る存在、意志を持った自然現象。


 これもある意味災害や天災と呼ぶべき存在で勝つ勝たない以前の問題としてどう対峙する存在なのかが分からない。


 例えば風の精霊は風の身体を持ち風を操る存在として考えれば、風を操る総量の大小は様々なれど、では風を殺してくださいと言われれば今のボクでは殺せない。つまりは勝負にすらならないんだ。


 精霊には喧嘩を売らないでおきたいところだね。


 次に天使だ、これは居るか居ないか分からないけれど広く信仰されている神の眷属だとされている存在で精神生命体と呼ばれる血肉を持たないエネルギー体だ。殺す方法は精神を崩壊させたり、変容させたり、染め上げるというボクに打って付けの相手ではあるね。


 ただ、天使達にも階級があり平民階級の天使(エンジェル)や役人階級の大天使(アークエンジェル)と町長階級の権天使(プリンシパリティ)と下級位階の天使は存在のベクトルが異なるだけで人間種と変わらない存在というのがボクの見解だよ。人間種には打ち勝つ事のできない存在だろうけれどもボクには脅威足りえない。


 中位位階の天使も同様で王を示す能天使(ポテスタテス)は支配階級としては優秀だけれども竜に対抗できるかと言われれば疑問が残る、更に上位の力天使(ヴェルトゥテス)は亜竜程度の戦闘能力しかなく、それは人間種程度軽く捻るだろう。


 中位最上位の主天使(ドミナティオス)は存在の格こそ精霊に準ずるものがあるけれど影響力は亜竜程度であり天使の性質上ボクに負けは存在しないだろう。


 問題は上位三隊だろう。神に最も近い上位三隊は何れも神に準じた能力を宿している。


 座天使(ソロネ)には魂を運ぶ権能が与えられ、死の概念を司る存在とされている。故に死のある存在は座天使を敵にすることそれ自体を愚かと忌避する存在だ。ボクは条件次第では座天使の権能を覆せると思っているけれど、どうだろうね。


 智天使(ケルビム)の権能は知の集約と拡散をし知を司る権能を神より与えられた存在と理解している。


 天地に遍く全ての知性体から知能を奪える権能を持つ存在と考えればその脅威度は理解できると思う。


 そして最高位。熾天使(セラフィム)に至れば対抗手段なんて存在しないといっても過言でば無いとボクは感じた。


 神より与えられたとされる神罰代行が強過ぎる。気軽にタイピングした文字をバックスペースを押して消すかのように存在を削除する権能は対抗手段が皆無な事象であり例えボクが十億の命を有していようとも覆らない圧倒的な格の違いがあるのだそうだ。


 天使の上位三隊の天使は半ば御伽噺のような存在で出会うことは無いだろうけども極力関わらないようにする方がいいだろうね。


 警戒すべき四種族最後は言わずと知れた悪魔と呼ばれる種族。この種族は大別して天使とそう変わりない精神生命体ではあるけれど天使と大きく違う点がいくつかあるんだよね。


 まず悪魔と一括りにされているのは悪魔(デーモン)大悪魔(アークデーモン)の二つだけだけれど悪魔は天使でいうところの中位位階までで大悪魔ともなれば多かれ少なかれ最低でも精霊や上位三隊の天使に匹敵する秘術や格を持っているとの事。


 大悪魔は貴族階級になぞらえて自身達の序列を作り悪魔公のような上位貴族は神にすら匹敵する程の格と実力を持つとされている。


 そして他三種族と最も違う点は覚悟があり、階級さえ気にしなければ気軽に召喚が可能な所だね。


 悪魔召喚は禁忌ではあるけれど、その危険性から知らずに召喚なんて事は起こりえないようにこうするな、ああするなという風に悪魔召喚に関する禁止事項があり、それを逆算すると悪魔が召喚出来るというアナスタシアの王族としての基礎知識がボクの中にある訳だ。


 上位天使の権能が無いものと考えれば狙い目かも知れないね。


 次に例外二種について。


 例外二種の内一種は異界生命体(インベイダー)だ。これは召喚術や侵略、迷い込んだこの世界の法則に縛られない生命体で、召喚によって拐われた異世界人などがここに入るのだとか。


 最後に未確認異常存在(アンノウン)と呼ばれる特定の条件で生まれる災禍を体現した存在たち。極めて稀に生まれてその大半は成長し切る前に討伐あるいは消滅する程初めは弱い存在とされているけれど一度権能に目覚めてしまえば初期段階でも龍に匹敵する驚異となる存在だ。…なんだけれども。


 例の一つに吸血鬼(ヴァンパイア)があったんだ。


 ただ吸血鬼ってボクの想像と違ったんだよね。普通はコウモリの羽根を生やした八重歯のチャーミングなナイスミドルか美女のイメージだったんだけど。


 この世界の吸血鬼っていうのはアンデッドの一種で数十年に一度残骸が発見されるか、討伐されるかのどちらかという程珍しいアンデッドらしく、その上戦場跡で誕生したとしても翌日には干からびるくらい乾燥に脆弱なアンデッドだそうだ。


 事実討伐履歴の多くが湿気のある地下墓地や薄暗い沼地といった環境での討伐であり草原や平地での討伐は確認されていないとの事。


 では何故そんな吸血鬼が未確認異常存在(アンノウン)に分類されているかと言うと、過去一度だけ吸血鬼が同じくアンデッドであるリッチを取り込んだ事から事件が始まったらしい。


 簡単にいうとリッチを取り込んだ吸血鬼はリッチの姿をとって無差別に生物を襲い取り込んでいった。


 最終的には人間種が国の垣根を越えて、その吸血鬼を討伐した。そして未来永劫その事を忘れないように吸血鬼を発見すればその場で討伐するという取り決めがなされ、発見されればその残骸が見つかるまで周辺諸国を巻き込んだ捜索、討伐騒ぎになるのだという。


 そしてその吸血鬼の最初期の姿は人間種一人分の血肉を全て液状に変えスライム状にした血肉の見た目をしていたって…。










 ――――――それボクじゃない?



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