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05.レプティリアン式浸透侵略法



 取り込んだゴブリン達は巡回警備隊の様なものだったようで、そこに現れた全身鎧との間で戦闘が行われたようです。


 それはともかくソロ級改め隊長は全身鎧に執心していたようで(中身ではなく)何がなんでも手に入れたいと考えた末のあの死闘だったようですね。とまぁゴブリンの方は中々にくだらない理由でした。


 まぁ、ボクになった時点で存在が希釈されたようで大人しいものです。


 全身鎧の方は中々ドラマチックな背景を持っていたようで引けない戦いがあそこにはありました。


 今やボクに成り果てた全身鎧の正体は、内乱によって滅びた小国ローゼンヘイムの姫アナスタシア・ロゼリア・ローゼンヘイムの側近にして護衛騎士ゲオルグ・ソーンという人間だったようです。


 なかなかに固有名詞の暴力ですね、ですがもう少しだけ続きます。


 ゲオルグは孤児で幼い頃アナスタシアに拾われてから恩を感じアナスタシアにせめて少しでも助けにと武を志しました。


 何処かで聞いたような話ですが、実際でもこういう話はあるんですね。さておき。


 それからは血の滲むような修行の末にアナスタシアの護衛騎士に選ばれ、護衛騎士として成り上がって行き、遂にはアナスタシアの嘆願もあり貴族の一員として認められソーンを名乗る事を許されたとの事です。


 これだけで物語が一本書けそうですね。ボクはもう結末を知っているので買いませんが。


 物語ならここで姫と護衛騎士は結ばれ幸せに暮らしました。となるのでしょうが残念ながらこの物語はバッドエンドだったようで、アナスタシアとゲオルグは想い合っていたという所まではその通りでした。


 それを良く思わないバレンタイン公爵家が介入し、事態は急展開を迎えます。これ幸いにと好き勝手に動き出した寄子の貴族たちが暴れ回り、引くに引けなくなったバレンタイン公爵家が新王を僭称し内乱勃発です。


 普通はこうなる前に事態が収拾するはずですがゲオルグの記憶にはありません。


 恐ろしい程早く城まで攻められている事実を知ったゲオルグは自室にいるアナスタシアを逃がそうと部屋へと行きましたがそこには誰もいませんでした。その代わりに一枚の手紙があり、その内容はアナスタシアはこの内乱を収める為に公爵の所へ行くとの書いてありました。


 この時のゲオルグは動揺してたのでしょうね。この手紙の内容を額面通りに受け取っていました。常識的に考えて一国の姫が一人ないし使用人とこんな速度感で動ける筈は無いと思うのはボクが斜に構えているだけなのでしょうか?


 そして物語は最終章へ項を進めます。


 公爵の所へ何とか辿り着いたゲオルグは公爵にこう言われました。


「アナスタシア王女殿下は私の想いには応えてはくれなかった。


 故に私の物にならないアナスタシア王女殿下は必要ない、不帰の森に捨て去り今頃はゴブリンの群れの女王をしているだろうさ」


 ローゼンヘイムにはロマンチストしか居ないのでしょうか?無理やり手篭めにするなり方法はあったでしょうに。あれですか?貴族のプライド的な何かですか?


 拉致はセーフで無理やりはアウトと考えているとボクが勝手に思っているだけでしょうか。まぁ拉致は憶測でしかありませんが。


 そうしてゲオルグはアナスタシアを求めて文字通りとなった不帰の森へと姿を消しました。


 アナスタシアが本当にゴブリンの群れの中でママをしているのか今となってはどうでも良いですが、ボクとなったゲオルグへの義理を多少は果たしましょうか。



 ◆❖◇◇❖◆



 ※ゴブリン語からの吹き替えをお楽しみください。



「おいっ!そこの死体拾い!俺様の飯を運んでくる事を許してやる!持ってこいっ!」


 大変に偉そうな戦士階級に命令された死体拾いと呼ばれる階級のゴブリンは卑屈に薄ら笑いを浮かべながら「分かりました、持ってきます」

 と答えます。


「チッ、気持ち悪ぃ奴だ・・・これだから死体拾いは。」


 何度となく言っただろうそのセリフをいつもの様に戦士階級は吐き捨てます。


 これが彼らの日常です。ちなみに死体拾いは戦士階級や支配階級以外の戦いに携らわらない者全てを指します。


 つまりはこの群れの大半が死体拾いという訳です。産まれた時から死体拾い、戦闘訓練を受け敵と戦って打ち勝って晴れて戦士階級になれるのだそうです。


 戦士階級には明確な区別を付けるために初めて敵を打ち倒した日に見えるどこかに戦士階級の証を彫るらしいですね。中々の戦闘民族具合です。


 話が逸れましたね。つまり死体拾いはこの群れの大多数を占めています。つまり何が言いたいかと言いますと。


「お持ちしました」


「チッ、遅せぇよグズが!」


 そう言うと食事を引ったくり死体拾いを足蹴にします。ゴブリンの性質かこの群れの性質かは知りませんがこの部族、同族殺しを滅多にしません。死体拾い殺しは戦士の恥だそうです。


 つまりボクに取っては安全に版図を広げられる苗床という訳です。


 足蹴にされた死体拾いは卑屈に薄ら笑います。


 さて、()()()()()()()()()()()()()



 足蹴にしている方でしょうか?足蹴にされている方でしょうか?それとも外からこれを眺めている他のゴブリンでしょうか?



 ―――――答えは簡単です。



 この場にいる九割強がボクです。――――



 死体拾いは初日で半数を取り込みました。二日目には死体拾いをほぼ制圧したと言っても過言じゃない程に浸透しました。


 三日目には将軍(ジェネラル)魔術師(ウィザード)を取り込み街の構造の凡そは把握しました。これでこの群れの底が知れたので後は行動に移すだけとなりました。


 余談ですけど、ゲオルグの懸念であったアナスタシアは実際にこの街に居るようなのでやはりローゼンヘイムはロマンチストの国なのだなと改めて思いますね。助けるかどうかは実際に会ってから決めましょうか、他にも無数にママはいますし。


 これまで準備に費やしてきましたがようやく実行に移せますね。では箸をつけてからで申し訳ないですが、改めて。



「頂きます。」



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