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01.プロローグ

 


 拝啓、僕に出会った全存在の皆々様お久しぶりです。ついでに今まで面識を持たなかった存在の方々にもはじめましてとご挨拶したいと思います。


 茶番だとは思いますが僕のイマジナリーフレンドの方々にはもう暫くお付き合い願います。


 さて、唐突ですが皆様は血餅というものをご存知でしょうか?一般的には歯を抜いた後に出来るプルプルの血の塊、あるいは滴る程に出た鼻血を一度止めた直後にフンッ!と吹き出した時に出てくる謎のアメーバでしょうか。


 どちらにしても美しいと感じる物でも手を叩いて笑う物でも無く、多くの場合は目を逸らすか不快そうに眉を顰めるかでしょうか。


 特殊な感性を持った者なら前者どちらかに共感を示すか興奮する可能性だってあるけれど、そんな少数は大胆に切り捨ててしまいましょう。


 ここまで唐突かつ長ったらしい前置きを聞いてそろそろ皆様はこう思うのではないでしょうか?『だからなんだ』と。


 確かにこれは本題ではなく僕が聞いて欲しい内容の前座なのです。あくまで前座ですが僕としては問題の重要争点にしたいくらいには必須のキーワードである事を忘れないで下さい。


 では本題なのですが、ある日突然の事です。ここはどこ?私は誰?の状態で状況を整理した結果、人間であった記憶の保持と推定未開の湿地森林に転移あるいは拉致された状態で放置され、知覚情報と状況からお前はその血餅であると宣告されたかのように錯覚する程に僕自身が血餅であると確信した場合、僕はどうすればいいですか?


 何分人生経験が少ないもので何をどうしたらいいのか全く経験が活きない訳です。あ、人間から血餅に変わる過程を記憶していないという事も参考にお考え下さい。


 もし有識者の方が居られましたら僕の脳内へ直接D(ダイレクト)M(メッセージ)を送ってくだされば幸いです。



 ◆❖◇◇❖◆



 下らない思考で多少は息抜きが出来たでしょうか、ええ、ええ、最初の最初の頃は可能性の一つとして某スライムの方を先輩と呼び慕える日が来た可能性を考えましたとも。


 しかし蓋を開ければ某スライムの方は先輩方の一人と呼び慕える可能性が浮上したことで大枠での異世界転生ジャンルに突入しているのでは無いでしょうか。


 心情的に一番近いのは僕ほどでは無いけど知らない世界に飛ばさせられた後に、僕ほどでは無いけど身に覚えの無い姿に変えられた某エラ呼吸疑惑のある釣竿が似合う太郎さんですが彼は推定見覚えのある浜辺に知り合いに送り届けられ、曲がりなりにも自分の意思で姿が変わったと僕は伺っています。


 そもそも僕がさっきから例に挙げているのは徹頭徹尾創作の話であり現在の僕には関係のない話です。


 あぁダメです、思考がこんがらがっています。今は事実確認の時間です、事実を、事実だけを愛でて行きましょう。



 現在は意識覚醒から昼夜のサイクルから判断して四日目の昼と推定します。その間、睡眠摂食その他の生理現象を能動的に行った実績はありません。


 この事から僕の生命維持に必要な行動を怠ったにも関わらず、現在生存と共に不調や飢餓感その他生理現象に依る不具合は無かった事実を示します。


 失敗したあんかけ用の餡に沈んだ見るも涙ぐましい不定形で半固形の塊に赤黒い色をつけたような僕の容姿でも、移動が可能であるという事は不可解ながら主張すべきです。


 移動方法はアメーバのような圧力を使った滑るような移動では無くて、ナメクジのような表面を波打たせての移動のようでした。が、意識をすればアメーバのように移動することは可能でした。


 次に生命維持の観点から湿り気のある地面と水場からは極力動かない方が身のためだとやや不確定ながらも確認する事が出来ました。


 というのもある時、周辺確認の一環で木に登り遠くを見ようとしており、その木の中ほどの時にふと身体に違和感を覚えそこへ視界を向けました。


 視界といっても全身が眼球のようなものなので他者から見ればそれまでの行動を継続しているように見えるでしょうが。


 それはともかく、視界を向けるとそこには推定僕だったモノが木に乾いて付着しています、イメージとしては泥濘を歩いた後にアスファルトを歩いた時に着く泥の足跡のようなものでしょうか?


 それに気付くと早々に僕は遠方確認を放棄してそのまま柔らかそうな場所に落下し、急いで泥濘へと避難しました。


 避難してから落ち着いて自分の身体に意識を向けると木を登る前と後とで一回り程身体の体積が減ったように感じます。


 その事から僕は乾くと死ぬのでは無いかと仮説を立てましたが、僕はまだ死にたくないので検証はしません。まるで本当にナメクジになったような気分です。


 さて、ここまでが僕が現状把握している判断材料なのですが、乾くと死ぬ危険性があるという事が判明しただけでもまだマシな方だと思いましょう。


 とりあえずは何故こうなったかを考えるのは避けて、この状況でどうやって生き残るのかを考えましょう。


 まず僕を殺す方法は脊椎動物とは異なる構造を持っているがために乾燥や炭化と言った菌やバクテリア、アメーバの様な微生物的な殺し方になると予想しています。


 その特徴から僕はこの環境下なら余程のことがない限り死ぬ事は無いはずです。次に摂食や成長が可能かどうかですが、成長が出来ないと僕としてはかなり都合が悪い、失った身体が二度と返ってこないとなると乾燥耐性0の意志を持ったアメーバ(増えない絶滅危惧種)の爆誕です。


 つまり摂食可能かどうかで僕の明日が決まってしまうのです。これまで絶食していた誰かさんには目を背けながら食べられそうな物を探しましょう。


 ・・・しかしこの辺り、動物の糞があまり落ちていませんね。せっかくの泥なのに猪も居ないのでしょうか?僕自身に餓死は恐らく無いので焦らなくても問題は無いと我ながら楽観的です。


 しばらく彷徨っていると探し求めていた僕以外に動くものが・・・



 ・・・あれは、蟻?



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