第七話-町のこと-
すっかり暗くなって宿に戻る。手にはラディルからもらった質素なりにもしっかりした素材だろう手触りの洋服を持っていた。
部屋に入り、重たい鎧を脱いで、それに着替えるとベッドに仰向けで横になった。体がずぶずぶと沈んでいく感覚が心地よい。
「はぁ……。」
思わすため息が出てしまった。しかし、これ幸せを感じた時のため息ではなく悩みを抱えたときのそれだ。優柔不断な僕にラディルが選択肢を与えたためだ。先刻の出来事を思い出す。あの後、ラディルはいったのだ、『だが』と。
『だが、俺は意味も分からず人を売ったりはしたくない。そこでだ、お前を俺のところで雇ってやってもいい。
て言っても、もう空きがないからな、食料調達係りになっちまうけど、れでも豚箱に入れられるよりはいいだろ。』
通常で考えれば迷わず雇われると考えるのかもしれないが、ここが異世界なのならば僕らがこっちに来たように、戻る方法があるのではないか。そう考えると、一刻も早く元の世界に戻りたいと思う。もっとも何の情報も無しにどうこうできる問題ではないから、やはり、雇ってもらうしかないのだろう。
とか考えているとさっき眠っていたはずなのに、また眠気が襲ってきたので、目をつむるとすぐに眠ってしまった。
翌朝、目覚めたのは意外にもまだ早朝だった。風呂場へ行き、食事を済ませて、さらに食休みをしてから、町長の所へ行こう、という算段を立てて、その通りにした。ラディルは直ぐに許可をくれた。
「それじゃあ、早速だが行ってくれ、カイン!」
そう言ってカインを呼ぶ。
カインは嫌な顔をせず、こちらを向いた。
「ついてこい」
おとなしく後を着けていくと、物騒な武器や、鎧の類いのものが所せましといわんばかりに置かれていた。
なんだか妙な流れだぞ?
僕は思った。
「これだ」
カインは無愛想に言って、棒状の何かを投げる。
その質量に思わず落としてしまった。
剣だった。それも、ただの剣ではない。日本刀だった。
それを拾いあげて、格好をつけているわけではないが、肩にのせる。
カイン自身は槍を手に取っていた。
「着いてこい」
日本刀の位置を変えながら、周りから奇異な目を向けながらカインの後をつけてく。ふいに、恰幅のいいオバサンに話し掛けられた。
「あら、カインちゃん、食糧調達?ご苦労ね。そっちの子は?」
食糧調達…まさか狩人的なサバイバル食糧調達なんてしないって信じてる。
「こいつは…旅の流浪人です」
言った後に、しまったという風に顔を背けたのは、おおよそ僕の恰好が旅人のそれとかけ離れていたからだろう。
にしても、この世界には旅人がいるのか。
「そうかい、旅人かい。たまには親元にも帰ってやんなさいよ。心配してると思うから。それじゃ、私も急いでるから、これで。町長によろしくね。」
僕らの脇を通り抜けていくおばさんに軽く会釈してから、歩き出す。
ずいぶん長い間歩いたと思ったら、すでに家はなく、僕らは森の中にいた。
「一体どこまで」
と、僕が言うと、
「ここでいいか」
と、カインが言った。
するとタイミング良くそばの茂みの中から、兎によく似た小さい動物が出てきた。
何をするのかはわかっていた。
カインはひと思いにそいつを一貫した。
別に動物虐待がいやだったわけではないが、僕は空を見上げた。
その後僕はいやいやながら三匹の小動物を殺した。
「なんで日本刀・・・」
そう呟いたのは、ベッドで疲れをいやしている時だった。
話を進めるには強引さが必要ですね