レジ打ち店員は防御魔法の天才
「今日こそは! 店員を倒してくれようぞ! くらえ! 【我が同胞の闇の主よ、この場に力の権化を
「お客様、レジ袋は必要でしょうか?」
「なっ、今、詠唱の途中だったではないか! れ、レジ袋とは何だ?」
「あ、はい。それではレジ袋3円になりますー。こちら温めますか?」
「ああ、温かいのは美味しいからな。勿論温めるぞ……って店員! 聞いているのか! 我は、魔王なのだぞ!」
「ありがとうございました~お待ちのお客様、こちらへどうぞ~」
「おい、我、ま、魔王じゃと言うとろうに~!」
◇
最強最悪の魔王と呼ばれる我も、腹が減っては支配も出来ぬ。この星を滅ぼす前に腹ごしらえと、”コンビニ”と書かれた建物で出会った”店員”なる生物。今思えば、それがこの決闘の始まりであった。
最強魔法の詠唱を、いつも途中の問いかけで詠唱破棄されるのが厄介なのだが、”感染予防マスク”とやらで口元も表情も見えず、それを事前に回避するのも難しい。
何よりこの店員の目の前には、”アクリル板”とやらの物理魔法障壁が常時あり、それではと、精神作用の魔術を使うも、「責任者を呼んで参ります」という詠唱で、”店長”とやらにばかり被弾し、肝心の店員へのダメージにはならない。
しかも、列の割り込もうものなら、「列の後ろに、間隔をあけて、お並びくださーい」と睨んでくるのだ。感覚を開けるじゃと?!第六、第七感覚すら凌駕する領域があの店員にはあるのじゃろうか?!
そうこうしながら、コンビニに通い、スイーツの新商品を楽しみながら決闘を重ね、我は遂に打倒店員を果たせるアイディアを思いついたのだ。
◇
「いらっしゃいませー」
「袋はマイバック、温めは願う、箸は一膳、おしぼりはいらぬぞ」
「はい、お会計、580円です。お支払いは?」
「魔王Payで」
フハハ!この時を待っていた。
この魔王Pay、支払いの時の音をオリジナル音声に変えられるのだ。このオリジナル音声を地獄火炎の簡略詠唱にすれば、支払い音が鳴った瞬間にアクリル板の向こうのレジごとドカンよ!
~魔王Pay♪地獄火炎発動!~
クハハッ!来るぞう!
~ワーイ!チャージバーック♪~
「あ、おめでとうございます。全額キャッシュバックキャンペーンに当選ですね」
その後、魔王はスマホと共にドカンと地獄火炎で良く燃えたのは言うまでもない。
「ありがとうございました~お次のお客様こちらへどうぞ~」
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