血を求めるラジオ
夏のホラー2022投稿用
短くてすみません。
――――皆さんは“血を求めるラジオ”の話を知っていますか?
そのラジオの存在を調べるにあたり話を遡れるだけ遡ってみたら、世界が第二次世界大戦で混沌とする前までしか遡れませんでした。
その最古の話は曖昧なもので、どこかの国の内部で紛争が起き、その際に紛争地となった田舎町の地主の家に有った、戦闘で飛び散った血で汚れたポータブルラジオです。
当時はポータブルラジオと言っても、従来の据え置きラジオより少しだけ小さくて、持ち運びがしやすくなっただけ。
ポケットに入れて〜なんて小さくは出来ません。
今では簡単に安く手に入るポータブルラジオですが、当時ではまだまだ高価な道具でした。
なので先程の紛争の話で、持ち主が居なくなったラジオを略奪しようと思うのも当然です。
――――そこからです。
世界に数多あふれる凄惨な事件の中に、つまり殺人や、殺人後に死体を地中へ埋めるなどして“行方不明者”が発生する事件。
その中の一部に、血を浴びたラジオの写真が、現場の記録として散見されるようになったのは。
特に凄惨と言われる事件の現場では、高確率で発見される血で汚れたラジオ。
偶然と思われるでしょうか?
血がかかっているのが、全く同じ外見のラジオ でも。
事件当初の記録にはあるのに、記録された一ヶ月後にはこつ然と姿を消していても。
あなたは偶然だと言い張れるでしょうか?
数ある事件を狙って引き起こし、人間の血をすすって消えるラジオ。
そんなのは無いと言い切れるでしょうか?
電波だけでなくヒトの死の気配も受信して、あちこちを渡り歩くラジオ。
趣味の悪い噂話と笑えるでしょうか?
今は某所にあるアンティーク博物館で、当時の名機としてガラスケースの中に保管され公開されているモノが、そのラジオと言われています。
ですが、実は違うのかもしれません。
今も新しい血を求めて、どこかの家を狙っているのかもしれません。
あなたはそのラジオと、出会わない人生でいられますでしょうか…………?