第13.5話 突然の来訪者
13.5
「……やっぱり仙台は牛タン、山形は芋煮、福島は喜多方ラーメンかしら……」
「おい……」
「それで青森はせんべえ汁で、秋田は稲庭うどん、盛岡は冷麵……うん、我ながら完璧ね」
「おいと言っているのだが……」
「あ、ごめんごめん……もちろん、じゃじゃ麵とわんこそばもちゃんと抑えてあるわよ」
「そうか、それはなによりだ……って、違う! そういう話ではない!」
若い男はちゃぶ台をドンと叩く。目の前に座っていた眼鏡で黒髪ロングの女の子が驚く。
「な、何をそんなに怒っているのよ……ジンライ」
ジンライと呼ばれた男が顔をしかめながら尋ねる。
「貴様はさっきから端末を片手に何をぶつぶつと言っているのだ?」
「え? 何って、東北地方の名物よ。旅行に行くのならしっかり下調べをしておかないとね」
「は? 旅行だと?」
ジンライがさらに顔をしかめる。女の子が小首を傾げる。
「ええ、MSPの件で東北に行く機会がこれからなにかと増えてくるでしょ?」
「舞、まさかと思うが貴様……俺様に同行するつもりではあるまいな?」
「え? まさかと思うけど私を同行させないつもり? 世間知らずのアンタ一人じゃどんな無用なトラブルを巻き起こすか分かったもんじゃないし……」
舞と呼ばれた女の子が何を今さらといった感じで呆れたように首を左右に軽く振る。
「……誰が世間知らずだ、勝手に決めるな」
「勝手にって、それはこっちの台詞よ……⁉」
突如庭から物凄い爆音が響いてくる。ジンライと舞が驚く。
「な、なんだ⁉ ドッポ、状況はどうなっている⁉」
ジンライは手足が伸びて、目と口がついている、小型の銀色の球形ロボットに語りかける。
「……ポッドガキンキュウチャクリク……シキベツコードハウヨマテチョコウコクデス」
「なっ⁉ ウヨマテチョ公国だと⁉ ムラクモの奴か⁉ おのれ、性懲りもなく!」
ジンライと舞は庭先に飛び出す。モクモクと白い煙が上がる中、丸いポッドが開く。
「ポ、ポッドが開くわ!」
「舞、危険だ! 下がっていろ! ……む?」
ポッドの中から人が現れ、おもむろにヘルメットを取る。ジンライと舞たちと同年代の女の子である。女の子が赤色のミディアムヘアーをかき上げて、周囲を見回しながら呟く。
「えっと……座標的にはこの辺で合っていると思うんだけど……あ! 見つけた!」
「ん? 貴様はもしや……んんっ⁉」
赤髪の女の子がジンライに勢いよく抱き付いたかと思うと熱いキスをする。
「な、なっ⁉」
突然のことに舞が啞然とする。
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