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何も知らないくせに

「すみません、見せてもらいます」


 そう言って、布を取り首元を確認する。そこには綺麗な切断された跡がある。傷跡から糸で切断された可能性は高い。だが、正直英斗には傷だけで凶器を判断できる知識は無かった。


「今まで殺された4人は穏健派と言われる人達だったが、彼はどの派閥にも入っていない。遂に獣人の誰が狙われてもおかしくない状況になったんだ。おかげで獣人の宴(ビースターズ)を出ようとする者すら出る始末だ」


 とレオは頭を抱えている。


「俺を殺しても、この殺人は止まりませんよ」


「……なら犯人を捕まえてくれ名探偵さん。何か分かったか?」


「……」


「そうか。出るぞ」


「蜘蛛の獣人とか、糸出せそうな人っています?」


「いや、居ないな」


「そうですか。そういえば、五郎さんと会いましたよ。たいそう揉めてるようで」


「頭の痛いことにな……。ただでさえ、月城さんに殺人の嫌疑がかかる前は、彼も主要な容疑者でな。反感も根強い。実は太刀川が揉める前から仲は良くなかったんだ。……やはり我らが獣人だからだろうか?」


 と悲しそうに言う。


「……ここにクラン『獣人の宴(ビースターズ)』を作る前から彼らは居たらしいですね。あらかじめ、挨拶とかしましたか? そういうのに、細かい人だっていますから」


「それは確かに……獣人達の安全で精いっぱいでそこまで考えてはいなかったな。軽い挨拶はしたんだが……。そうか……確かに礼儀を欠いてたかもしれんな。参考にさせていただく、ありがとう」


「いえいえ」


 英斗は建物を出てレオと別れた後途方に暮れる。結局今日他にめぼしい情報も無く、帰路に就いた。


 家に戻ると、ナナと梓も既に帰っていたようであった。


「ただいま、何か分かったか?」


 英斗が尋ねると、梓は眉を顰めて言う。


「何も! 皆何も分かってないの! 何も知らないくせに!」


 と激昂している。その様子を見てナナが教えてくれる。


『みんなあずさに、さつじんはんといっしょにいたらあぶないからもどってこい、っていうの。で、あずさがおこったの』


 一瞬で察する英斗。あれだけ広まっていたのだ、そう言う人がいてもおかしくはないだろう。このまま梓がここにいては、今後住みにくいのでは、と考える。


「先生、今私がここにいると、今後住みにくいのでは、と考えてたでしょ?」


 とエスパー並に思考を読まれる。


「凄いな、梓」


「先生、顔に出すぎ! 私はそんな恩知らずじゃない! 恩人が罪をなすりつけてられているのに、そこを離れるような真似はしない! 分かった?」


 と大声で言う。梓のその優しさが嬉しかった。


「そうか、ありがとうな。必ず犯人を見つけ出すよ」


「うん!」


「梓、何か情報は手に入ったか?」


「う~ん……あんまり。子供が変なこと調べるんじゃない、って言われることが多くて」


「確かに、そう言われてみればそうだなあ」


 納得ではあるが、これでは殆ど情報が手に入らない。


「けど、1人目、2人目はナイフのような物でやられてたらしい、って聞いたよ!」


「ナイフ?」


 今回と殺し方が違うということだ。複数犯なのか、それとも今回だけ殺し方を変えたのか。


「うん、刃物で斬られたような傷跡だったらしいよ」


「なるほどな。ありがとう梓」


「良かった! 犯人分かった?」


「いや、さっぱり分からん」


 英斗は正直に言う。


「駄目じゃん!」


「本当になあ。なんか探偵みたいなスキル持ってる人居ないかね」


「ここでは聞いたことないなー」


「地道に考えるわ」


 英斗は夜の間考えるも、結局何か閃くわけではなかった。





 次の日から、英斗は町中を回りながら証拠となるものがないか、探し回っているが特に何か見つかるわけも無く時間が過ぎた。


「こうなったら、犯行現場おさえるしかないよなあ」


 と呟く。推理よりも現場を見つけた方が早い気がしたのだ。ナイフのような物で殺していることを考えると、きっと物理的に襲い掛かっている可能性も高い。


「噂では、竜人の太刀川さんか、外のクランの五郎さんが怪しいんだが……どちらでもありえそうなんだよな。五郎さんの鎌なんてナイフのような傷跡にぴったりなんだけど、今回は糸だったし。今までは太刀川さんの敵とも言える穏健派だったんだけど、今回は関係ないみたいだし……」


『むつかしいねえ』


 ナナも一緒にうんうん唸っている。


「犯行は夜みたいだし、夜少し人通りが多いところを張ってみよう」


『りょうかいー』


 こうして探偵英斗の張り込みが始まった。

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