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レッスン

「次は、俺が動きだけは止める。攻撃は全て梓がしろ」


「はーい」


 梓は気は乗らないものの従う。自分のためであることを分かっているためだ。

 英斗は、木の蔦を生み出し、5匹のゴブリンを羽交い絞めにする。


「すまないな。梓、やってやれ」


 梓が頭部に一突きし、5匹共仕留める。だが、レベルアップは無かったらしく、英斗を見て首を横に振る。


「そうか……HP仮説も駄目か。なら体力を削った者でもなく、止めを刺した者でもない。ソロで狩ると上がるのは確かなんだからソロで狩らせるしかないのか? 確かに体力を削った者しかレベルが上がらないなら、攻撃を引き付けるタンク役のレベルは一生上がらないもんな。貢献度か?」


 その戦いの貢献度に応じて経験値が分配されるのなら、先ほどの2回の実験で梓のレベルが上がらないのも納得である。だが、その場合どのような仕組みで貢献度を換算しているのかが不明ではある。


「何ぶつぶつ言ってるのー?」


 考察を続ける英斗を奇妙な人を見るような目で見る梓。


「う~ん、やっぱりズルはできないね、っていう結論になったよ。どうやら梓は自分で戦わないとレベルは上がらないようだ」


「仕方ないよ、それができたらレオさんも私達のレベル上げしてくれそうだもん」


 確かに言われてみればその通りである。英斗は梓を戦わせるために武器と防具を生み出す。

 鎧を鉄で生成する。鎧の形状には詳しくないので、自分がダンジョンで手に入れた鎧と同じ物を鉄で生み出す。動けるように少し薄くなったが、仕方ないことだろう。


「凄ーい! いったい何のスキルなの? なんでもできるじゃん!」


 先ほどから剣や鎧、植物まで生み出していたら気になるのは当たり前だろう。


「秘密だ。俺がレベル上げを手伝う代わりに、俺のスキルは絶対に言うんじゃないぞ」


 英斗は念のために梓に口止めをする。


「……分かった。普通のスキルの人はやっぱり秘密にするのね。私達は見た目で分かっちゃうから戦ったら隠しようがないもの」


 続いて、梓の頭囲を測りながら、鉄の兜を生成する。これは梓のメイン武器である角を更に強化するために重要である。

 角を覆うような鉄の角を兜につける中々綺麗にできなかったが、少しずつ調整し、ようやく完成した。


「う~ん、オーダーメイド感は好きだけど少し重いよ」


 梓は兜を被るがどうやら重いらしい。


「だが、鉄の角なら間違いなく突進の威力も跳ね上がる。それに安全面でも鉄で全身を覆うとゴブリン程度だと傷一つつかん」


 英斗は兜の出来栄えに満足し笑顔を向けている。次は大きな弱点である首を守るために鎖製のネックウォーマーを生成する。鎖帷子の首版と言ったらよいだろうか。それを梓に着けさせる。


「中々邪魔だなあ」


「仕方ない。手足や、体なら俺がポーションで大抵の傷は治してやれるが、首を一撃でやられたらどうしようもない。それで終わりだ」


「……ちゃんと着る」


 英斗の言葉を聞いて、納得したようだ。


『かっこいい!』


 ナナは2人に念話を飛ばす。


「わああ! なんか声が聞こえる!」


 梓は驚き、腰を抜かす。


「そうか、念話を梓には飛ばしてなかったのか。ナナは脳内に声を飛ばして会話ができるんだ。普段は俺以外にさせないようにしてるんだけど」


 そう言って、ナナを見る。


『わたしもしゃべりたい!』


「そうか。まあ梓ならいいだろ。危険性もないし。ナナが話せることも内緒だぞ。ここでは山田さんしか知らないんだ」


「わ、分かった……。外の人達は内緒が多いね」


 梓は納得したようだ。


「動けるか?」


「うん。けどやっぱり重いよ」


「もう少し軽くするか。防御力は無くなるが、動けなくて死んでは元も子もないからな」


 鎧、兜の装甲を更に薄くし、なんとか動けるようにする。英斗は鎧姿の梓を見て、昔やってたゲームにこんなの居たなあ、と考えていた。


「これならなんとか大丈夫!」


「いきなりゴブリン狩りと言いたいところだが、まずは防御だけでも覚えてからだ。まずは防御。攻撃は二の次だ」


「えー、凄い攻撃で相手を圧倒した方が結果的にダメージ負わないんじゃ?」


「確かに、その方が速くレベルは上げれるかもしれない。だが、この世界はゲームじゃない。一度やられたら、それで終わりだ。俺は少しずつでも、安全に安全に強くなってほしいと思っている。実際のゴブリン狩りは首と顔だけは、必ず守れるように動けるようになってからだ」


「はーい」


 こうして、英斗は木製の剣を2つ生み出し、片方を梓に渡す。


「とりあえず、打ち合おうか。絶対に、顔と首だけは守ること」


「はい!」


 木製とはいえ、剣を渡されることで真剣な表情となる。英斗は軽く剣を振るい、梓に防御を教える。


「遅い。それだと、ゴブリンの攻撃を顔で受けてしまう」


 左右、上下から剣を振るい、慣れさせる。少しずつ、少しずつ守りはできるようになってきた。そして、英斗は突きを顔に目掛け放ち、直前で止める。


「わあ!」


 梓は驚いたのか、腰を抜かす。


「ゴブリンや、特にオークは突きも放ってくる。実戦だと、これが厄介なんだ。突きにも反応できるようにな」


「……難しいよ」


「最初からできるようになるとは思ってないさ。少しずつ、覚えていこう」


 剣を振るい始め、数時間。ようやく、自然と顔と首元を守る癖が少しだけついてきた。ゴブリン程度なら、英斗が動けばなんとかなると判断した。

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