ご挨拶
玲雄はこちらにのしのしと歩いてくる。2mを余裕で超えているライオンがこちらに来る様子は中々迫力があった。
「山田さん、こちらの方は?」
玲雄がにこやかに尋ねる。
「こちらは私の友人の月城英斗さんです」
「……杉並ギルドのギルドマスターの方かな?」
「はい。よろしくお願いします」
「山田さんの友人であれば歓迎しよう。ようこそ、俺は台東ギルドマスターの葉月玲雄 だ。レオと呼ばれているから、そう呼んでくれると嬉しい」
そういって、優雅にお辞儀をする。
「レオさん、よろしくお願いいたします」
「そういえば、まだ紹介がまだだったな。こちらの男は台東ギルドの事務長元宮潤だ」
レオが言うと、先ほど2人を見ながら困った顔をしていた男が頭を下げる。30代前半ぐらいだろうか、頭に犬耳を、尻付近には尻尾を付けている。優しそうな顔つきで、栗色の毛が跳ねていた。確かに戦闘より研究をしてそうな見た目である。
「元宮はスキル『犬』なんだが、戦いがからきしでね。事務系をお願いしてる」
レオがそう言う。
「こんにちは、元宮と言います。私は獣人化もできなくてねえ」
そういって、頭を掻く。獣人化とはなんだ、と英斗が顔を傾けていると、レオが助け船を出す。
「ああ、通常スキルの人は知らないか。俺達動物系スキルは、俺や山田さんのように2足歩行だが、完全に獣のような状態の人が居るだろう? それが獣人の状態だ。それに元宮のように一部だけ動物のようになっている者もいる、それは部分獣化という。完全な動物状態にもなれるが、それは獣化だな」
「確かに皆様々な状態になってますもんね。自由に変えられるものなんですか?」
「それは人による。レベルが高い者は全員自由に変身できる。完全に人間の状態にすることも可能だ。だが、低レベルだと自由に変身できないんだ。獣人化や人間化を自由にするには15は欲しいな。遅いと20までかかったりもする。だから大人でも皆できるわけではないんだ」
レオが親切に解説してくれた。
「動物系スキルは獣化か獣人化の状態が強いから、戦闘時にはそうなる方が多いんですよ。部分獣化でも勿論身体能力等は強化されるんですけどね」
元宮が追加で教えてくれる。
「中々興味深いですねえ」
と素直に興味の湧く英斗。
「月城さんは前からスキルに興味がありましたからねえ」
と山田が笑う。
「よければ1つご質問して良いですか? 人を探しているんです。30代くらいのサングラスをかけた黒い短髪で顎髭の生えた男なんですが」
「名前は何というんですか?」
と元宮が聞く。
「それが分からなくて……。ドラゴンをソロで軽く倒せるくらい強いです」
「うーん、分からないなあ。ごめんね」
と元宮が頭を下げる。
「俺も知らないなぁ」
とレオは言う。
レオ達と話していると、獣人の親子がこちらにやってきて、レオを見ると小さな子供が笑顔で叫ぶ。
「あー! レオさんだー!」
と言って走ってくる。
「今日も元気だなー。よーし、おいで」
レオはそう言うと、子供を抱き、高い高いをする。子供は大喜びで笑っている。
「良かったわねえ」
と母親はころころと笑っている。
「好かれてますね」
と英斗が山田に尋ねる。
「そりゃあ、獣人の宴を作り獣人を救った英雄ですからね。彼を頼りにしている人は多いです」
山田はしみじみと言う。しばらく遊び子供も満足したのか、母親の元へ戻る。
「レオ、そろそろ行くよ~」
と元宮がレオを呼ぶ。
「いやあ、途中ですまないね。あまり歓迎もできないが、ゆっくりしていってくれ」
レオは笑顔で言う。その後2人は用があると言って、ギルドへ向かって去っていった。
「獣人じゃない方はめずらしいですね、こんにちは」
と母親が頭を下げる。
「こんにちは。レオさんの人気に驚きましたよ」
「娘のヒーローですから。私達親子もレオさんに救われたんです。あんなに優しいんですが、とっても強いんです」
と母親が微笑む。
「確かに……本当に強そうだ」
「最近特に丸くなりました。ちょっと前まで、優しいけど尖ってたんですよ。そこも格好良かったんですけどね」
とまるでファンのように言う。
「尖っていたようには今の様子からは見えませんね」
「でしょう? あ、そろそろ市場に行かなきゃ。御免なさい、もういくわね」
母親は娘を連れて去っていった。
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