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食えない男

「怪しいもんやないよ。目的もあんたと一緒や。魔物殺しのための武器調達やろ?」


 髪の両サイドは刈り上げており、全体的に短髪で陽気な大学生を思わせる風貌である。


「ああ」


「警戒心強いなあ、前を陣取ってるあのガラの悪い男達かなり戦闘向きのスキル持ってるんやけど、定期的にここを巡回してはるんや」


「そうなのか、教えてくれて感謝する」


 英斗は頭を下げる。


「俺のスキルは戦闘用やなくてな。武器を奪うまで手をくまへん?」


 そう言って、謎の男は手を差し出す。


「君のスキルはなんだ?」


 英斗は謎の男に尋ねる。


「俺のスキルは『耳』や。耳が良くなるだけ。全く戦闘に使えない代物や。このスキルであんたが来ていることも気づいたんや。あんたのスキルは?」




「『石作成』だ」


 そう言って、30cm程の石を生み出す。


「へえー……」


 再びなんとも言えない雰囲気になった。もうこれからこの能力言うのやめようかな、と英斗は考えていた。


「まあ戦闘向け? なのか分からんが明かしてくれたってことは手伝ってくれるってことでええんか?」


「よろしく頼むよ、だが一定の距離を保つのは許してくれ。君の力が戦闘向けじゃなくとも人は簡単にナイフで死ぬからね」


 そう言って、英斗その手を握り返す。


「こちらこそよろしく。俺は石川(いしかわ)優斗(ゆうと)や。仲間からはユートと呼ばれている」



「俺は月城という」


 こうして謎の男ユートとのコンビが誕生した。


 2人はホームセンターを警戒しながら回っていた。


「お兄さんはなんの武器を取りに来たんや?」


「そうだなあ。長く使えそうなバールとナイフ、斧だな」


「なかなか固い武器やな。長期戦を考えてるんやね。俺もそんな感じや。電動チェンソー1台は欲しいけどな」


 そう言いながら2人は武器を鞄に入れていく。


「ユートお前すごい持っていくな」


 ユートはバール5本。ナイフ10本、チェンソー1台を巨大なバッグに詰めていた。


「仲間の分も集めてるからな」


「仲間か」


 英斗は仲間という言葉を聞いて、少し考えた。現状英斗は一人であるが、生き残るにはやはり仲間がいると楽なのは間違いない。

 だが、信用できない者達とチームを組むことは危険とも考えていた。


「お兄さんもいるん?」


「いないよ、孤独なソロプレイヤーだ」


 英斗は、バール2本、斧2本、ナイフ2本、包丁2本、十徳ナイフ2本と予備を含めて2本ずつ頂戴している。


「おらへんのかー? うち入る? 大学生ばっかやけど、強い奴もおるで?」


 ユートはそう言いながら笑っている。


「いや、気持ちだけで。知らない人間と組むのは怖くてな」


「まあ、気持ちはわかるわ……。月城さん、隠れて! あいつら来るで!」


 ユートの合図で2人は、机の後ろに隠れる。

 現れたのは、2人組の男達だ。前を見張っていた男達の中の2人である。


「こんなとこ見張りして意味あるんかねー。誰もこねーじゃん」


 ぶつくさ言っているのは若い男である。まだ高校卒業したてに見える。


「直人さんが言うんだから仕方ねーだろ。前々から腕っぷしは強かったが、今じゃ誰にも止められねえよ」


 それをたしなめたのは20代前半辺りの男だ。こちらは普通の好青年に見える容姿だ。


「俺の力なら直人さんにも……」


「馬鹿言うな。あの男みたいに頭つぶされるぞ」


「うっ! すみません」


「おい、なんか包丁減ってねーか?」


 好青年っぽい男が、包丁の減りに気づく。


「えっ。本当っすか。よく覚えてますね。さっぱりわかんないっすわ」


 若そうな男は適当に答えている。


「直人さんに報告に行くぞ。お前はここに残ってろ」


 そう言って、好青年は走り去っていった。


「えっ!? 包丁もった奴いるんすよね。俺1人置いてかないでくださいよ!」


そう言って若い男は言うことを聞かず後を追う。


 2人が消えた瞬間、英斗とユートは机の後ろを出る。


「他の奴ら集まってくるまでに逃げるで」


「了解」


 2人は一目散に裏口へ逃げる。


「裏口は大丈夫なのか?」


「音がせーへん。安心しい」


 2人は裏口から出てすぐホームセンターから離れる。


「いや、その耳のスキルすごい優秀だな。助かったよ」


「戦いはできんけど、めっちゃ便利やねんよ」


 そう言って、ユートは笑う。


「じゃあ、ここまでだな。最後に聞いていいかい? なんで俺と手を組もうと? 君の力なら俺の助けなんていらなかったんじゃないか?」


 英斗はユートに尋ねる。


「ばれた?」


 そう言ってユートは目を細くしながらニタリと笑う。


「深い意味はあらへんよ。よさそうならスカウトしよかなって? うちは仲間募集中やねん」


「お眼鏡にはかなったかい?」


「お兄さんが本当のスキル教えてくれてからやなあ」


 英斗はばれていたことに驚きつつ、顔に出さないように努力した。


「嘘つけへんタイプやなあ、お兄さん。石作成っていう時申し訳なさそうな顔しとったよ」


 ユートは笑いながら言う。どうやら英斗よりユートの方が何枚も上手のようであった。


「ふう、ばればれのようだな」


 英斗は溜息をつく。


「まあ、初対面の人に教えへんのは正解やからなんも言わへんよ。けど本当のスキルが何かさっぱりわからんのよね。『(ストーン)』とか石そのものとか? まあええわ。また気が変わったらうち来てな。トップは尾形いう色男やで、ほな」


 そう言って、ユートは消えていった。


「中々読めない男だったが……悪い奴じゃなさそうだったな」


 英斗はそう呟いた後、マンションに戻っていった。

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