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西門のデスナイト、東門のリッチ

 魔物達の軍勢はすぐに校舎を包囲し、色々な所から校内への侵入を試みる。鉄壁を破壊できる魔物は少なく、やはり校門を破壊しそこからの侵入が主であった。

 西門を守る『極真会』クランマスターの結花も校門から侵入する魔物を次から次へと仕留めていった。


「皆、絶対に勝てない魔物とは戦うな。複数であたり、怪我を負ったらすぐさま校舎で赤ポーションを使い回復しろ!」


 皆に指示をしながらも目の前のオーガの首を手刀でへし折る。彼女のスキルは『喧嘩師』、格闘から関節技まで様々な肉体技が強化されている。

 極真会の者は皆連携しながら安定して魔物達を仕留めていく。素手だけでなく、武器も使いながら校門から入ってくる魔物の死体の山を築いていった。


 すると突然、まるで2トントラックが突っ込んできたような轟音と共に、塀の一部が粉々に粉砕された。破壊された塀から現れたのは黒き鎧を纏い、剣と盾を装備している西洋風の鎧、A級魔物『デスナイト』である。その頭部からは赤い目だけが光っていた。

 デスナイトの塀の破壊により西側の魔物の侵入経路は2箇所になった。


「結花さん、どうしますか?」


 極真会の面々は、突如現れた大物に結花の顔を伺う。


「あいつは私が()ろう」


 結花が構えつつデスナイトの前に立つ。デスナイトもその相手に不足なしと捉え、剣を構える。

 結花はその素早い動きであっという間に自分の間合いまで近づくと、魔力を纏わせた正拳突きを放つ。デスナイトはその盾で正拳突きを受け止める。

 次の瞬間、その衝撃は盾を貫通し、デスナイトを鎧ごと吹きとばす。鎧には大きな凹みができ、デスナイトは塀に叩きつけられる。

 『喧嘩師』のスキルの大きな特徴は、その一撃が防具を貫通し内部に衝撃を与えることにあった。鎧越しに攻撃すれば、その内部にダメージを与え、盾で防がれた場合その攻撃は盾を越え敵本体にまで届く。

 デスナイトは禍々しい魔力を垂れ流しながら、立ち上がる。顔は見えないものの、吹き飛ばされたことに驚いているように見えた。


「貴様が塀を破壊してくれたせいで、多くの魔物が入ってくる。悪いが早めに仕留めさせてもらうぞ」


 結花はそう言って、再び一足飛びでデスナイトに近づく。近づかせまいと剣を水平に振るも、体を90度倒して回避した結花は、倒した体そのまま拳を剣を持った腕に打ち込む。すると、何かが破裂したような音と共に、腕部分の鎧が大きく歪み、剣を落とす。一旦距離を取ろうとデスナイトが足を動かすも、右足を結花に踏まれていて下がれない。


「足癖が悪くてな……それにこれは試合じゃない」


 そう言って笑った結花は、赤い魔力を右手に集中させる。そして全身を捻りながら渾身の右正拳突きを胴体部分に撃ち込んだ。

 爆ぜるような音と共に、デスナイトの背中側の鎧に大きな穴が開く。その一撃により目の光が失われ、地面に転がり落ちると二度と動くことは無かった。


「流石お姉さまです!」


 結花のファンとも言える女子がピョンピョンと跳んで喜ぶ。


「ありがと。侵入口が2箇所になった。2箇所とも守るよ、気合入れな!」


 結花はデスナイトによってできた進入路から来た魔物も仕留め少しでも数を減らすよう奔走した。








 極真会は西門と東門を担当しているが、東門防衛の代表は猫耳男の娘こと、美馬(みま)(あおい)である。彼はその見た目によらず戦闘能力では結花に次ぐNo.2であった。

 彼はそのスキル『猫』のバネを生かし、凄まじい跳躍から回転してかかと落としを放つ。その一撃でオーガを沈めると、猫のような軽やかな動きで敵陣にまで潜り込むと、手を付き回転しつつ蹴りを放ち魔物達をなぎ倒す。


「にゃにゃにゃ! 数が多すぎるにゃー」


 葵はオークの頭の上に乗ると、蹴り飛ばしつつ塀の上に降り立つ。


「葵さん、やっぱり俺達だけじゃきついですって!」


 おなじく極真会の男が泣き言を言う。


「こっちも、他のクランの応援をたくさん貰ってるんだから文句は言えないにゃー。それにどうしてもきつかったら使いたくないけどアレをするにゃ」


 葵は塀の上でしゃがみながら言う。東門は結花が居ない分、西門より人数を多めに配置されていた。 葵は、猫耳と尻尾だけの部分的な状態を解除し、爪を生み出す。


「あまり可愛くないから嫌だけど、任されちゃった以上は仕事しないとね」


 葵は、その爪で魔物達を切り裂く。


「お前ら、東門は穴場じゃねえってことを魔物達に教えてやれ!」


 その姿を見た極真会や他のクランの者も自らを鼓舞しつつ魔物達に立ち向かう。

 すると頭上から大砲の様な火の玉が飛来し、東側の塀の一部を粉砕された。


「何が!? ……あいつかにゃ?」


 葵はその火の玉を放った先を猫目で見つめると、そこには古ぼけたローブを身に纏い木製のワンドを持つ骸骨『リッチ』の姿があった。

 リッチは決して前線に出ず、後ろから魔法を使い邪魔をするようであった。現状は東門からのみ魔物が入っているため守り切れているが、塀が何箇所も破壊された場合東門から陥落する可能性もある。


「まずいにゃあ。少しの間ここ頼むにゃ。あの骸骨を粉砕してくるにゃ」


 そう言って葵は完全な猫に変身する。青い瞳に、長毛種のような白と灰色の混ざった美しい毛並みであり、サイズは小さな虎といった大きさである。

 塀から飛び立つと、魔物達を蹴散らしながら、リッチの下へ向かう。


「葵さん!? 行っちゃったよ……」


 そう言われた男は、すぐさま消えた葵を恨みつつ、2箇所から侵入してくる魔物相手に奮闘する。

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