滅んだ後の世界の武器はバールが基本
英斗は起きナナに餌を与えた後、ホームセンターに向かう。
「ナナ、俺が帰ってくるまでここで待ってるんだよ?」
「ワフー」
ナナは元気に返事をする。どうやらちゃんと待ってくれるようだ。
「よし、いい子だ!」
ナナを撫でまくり満足した後部屋を出る。
英斗はナナを置いて、ホームセンターに向かう。ホームセンターはマンションから2㎞ほどの距離である。
「今レベルアップを3回してるからレベルは4になるのかなあ。まあ覚えていたからって何かあるわけじゃないと思うが……昨日はあの後上がらなかったし早くレベル上げたいなあ」
音を出さないために。英斗は自転車で移動をしている。
ホームセンターに向かっている間に思ったのは、初日より生きている人間に会わなくなったことだ。
代わりにゴブリンや狼、オークに会うことが増えた。
英斗がホームセンターへ向かっていると、轟音と共に前方から人間の死体が飛んできた。
その死体は地面に無残に転がり落ちる。
「っ!?」
一瞬で命の危機を感じ取った英斗は自転車から飛び降り、近くの建物の室内に窓から入り隠れる。
その後すぐ、人間の死体を引きずりながら歩く筋骨隆々のオーガの姿があった。その膨らんだ筋肉と禍々しい二本の角。真っ赤な体に傷だらけの腕が歴戦の猛者を思わせる。
英斗がばれたら死ぬと直感的に感じ取った。あれは勝てない……。逃げ切ることもできないだろうことを悟った。
息を潜め、オ―ガが立ち去ることをただ祈った。
オーガは英斗の逃げ込んだ建物を静かに凝視する。
ばれたのか!?
と英斗は動揺したものの音を出さないよう口を押さえ耐える。
オーガはしばらく建物を見つめた後、静かにその場を去っていった。
冷や汗をかいたものの、命を拾った英斗はしばらくその場から動けなかった。
手が震えている。
「行かなきゃな……」
英斗は自転車を置いて、ホームセンターを目指した。途中でゴブリンを狩って向かう。すると10匹目を倒したところでレベルアップが起こる。
「これでレベル5だ!」
再び石を生み出すと直径30㎝を超える石が生み出される。
「だいぶでかくなったなあ……」
氷も30㎝程の氷塊を生み出せるようになっている。鉄を生み出すようイメージすると、手から小さい鉄の玉が生み出される。
「おお! 新しい素材だ!」
直径6㎝程の鉄球が生み出された。それを思いきり投げることを考えるとなかなかの攻撃力強化ではないだろうか?
「包丁もできるかな?」
いくらイメージしても包丁は生み出せない。まだ足りないようだ。鉄を使ってマキビシを作れないかと思い鉄製のマキビシをイメージする。
すると手からマキビシが生み出される。
「おおー、マキビシだ!これで忍者に……いやまだ手裏剣のほうがいいな」
そう思い、手裏剣を創造するもどうも小さすぎて威力がいまいちであった。
「だいぶバリエーション増えてきたんじゃないか! これくらいは作れないと『万物創造』とは言えないよ」
手から出る火も炎といっていいほどのサイズになっており、だんだん規模が上がってきた。
木の棒をイメージするも、少し細いがちゃんとした棒が生み出された。
鉄製の棘も小さいながらも創造できるようだ。
「いいねーいいねー」
調子に乗って作りすぎたのか、少し体がふらつく。
「いや、早く行くか。もうホームセンターは目の前だ」
英斗がホームセンターに着くと、玄関にはガラの悪い男達が陣取っていた。
どうやら前のチンピラとは違うようで一人は電動チェンソーを動かし爆音を鳴らしている。
だが、知り合いに頭を叩かれ、動かすのをやめた。
「ではまた裏口から侵入しようかね?」
そう言って、英斗は再び裏口に回る。どうやら裏口は普通に開いているようで、扉から堂々と侵入することになった。
英斗はドアを閉め、武器を探しにホームセンター内の園芸コーナーに向かう。
「あんたも武器を探しに来たんか?」
店内を歩いているとふいに後ろから声がかかる。
「誰だ!?」
英斗が振り向き、包丁を構えると、ひょうきんな二十歳ほどの金髪の男が両手をあげて現れる。