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スキルについて

 英斗は静かに、騒いでいる人を見ていると、凛が現れる。


「お疲れ様です、英雄さん?」


 そう言いながら、微笑む。


「恥ずかしいから止めてくれ。元々頼まれてやっただけだ」


「頼まれて命がけで戦っちゃうあたりが、やっぱり良い人ですね」


 あの時から変わっていません、と聞こえない程度に呟く。


「う~ん、どうなんだろうなあ」


「それより、弦一君は弦一呼びなのになぜ私は如月さん呼びなんですか?」


 と純粋そうに尋ねられる。英斗としては、女の子との距離を測りかねているだけであった。弦一は一度襲ってきたので配慮する必要が無いだろうと思っての呼び捨てである。


「う~ん……」


 目を逸らしながら言う。


「やっぱり私はまだ信用されてないんですか?」


 泣きそうな顔で言われる。


「いや、そんなことは無い! 今回も助かった!」


「じゃあ、私も凛と呼んでください」


「わ、分かったよ。凛」


「ありがとうございます!」


 そう言って、笑顔になる凛。どうやら最初から演技だったようだ。


「弦一君も頑張っていたので、また褒めてあげてくださいね。彼、邪魔が入らないように、結局1人で100人以上と戦ってたみたいですよ?」


「そうだったのか、どうりで敵が来ないはずだ。礼を言わないとなあ」


「はい! 彼はあそこにいますよ」


 そう言って凛が指差した先には我羅照羅のメンバー達が談笑している。凛に別れを告げ、弦一の下へ向かう。


「弦一、今日は助かったよ、ありがとう。ずっと邪魔が入らないように敵を止めててくれてたんだって?」


「いえいえ、トップの戦いに横槍なんて無粋ってもんですから」


 弦一は、そう言いつつも嬉しそうだ。


「俺はしばらくはギルドマスターとしてやっていくと思う。そういう時に、弦一がこれからも手伝ってくれたら助かるよ」


 これは素直な気持ちであった。


「勿論。俺が担ぎ上げた神輿ですから。お前らも今日はよくやった!」


 弦一は仲間達を労う。


「我羅照羅の皆様も、中野区からこっちを守ってくれたようで、ありがとうございます」


 英斗は、他のメンバーにも頭を下げる。


「いえいえ、ギルマスには沢山ご迷惑をおかけしましたので。これからも何かあったらうちが動きますんで、言ってください」


 我羅照羅のNo.2であるアツシが言う。英斗はその後、極真会の人達にもお礼を言いに行った。一通り回った後、ナナとのんびりしているとフラッシュが焚かれる。


「スクープかな?」


 フラッシュの先を見るとそこにはカメラを持つ25歳前後の女性が居た。ベレー帽を被り大きなレンズの眼鏡を付けている。ズボンにシャツと動きやすい恰好をしている。身長は小柄で150cm程で、可愛らしい顔つきである。


「誰だ?」


「私は宍戸(ししど)(よう)。新聞記者よ。最近中野区と揉めてるって聞いてたけどもう抗争まで終わってるなんてびっくり。貴方がマスターね、確かに強そう」


「記者の方か、月城英斗です。よろしく」


「こちらこそよろしくね、期待の新人マスター君」


「記者の人しか知らない情報とかないですか?」


 と世間話程度に振ってみる。


「う~ん、中々抽象的な質問ね。だいたい面白い情報は記事にしてるからねえ。こんな仕事してると、色んなスキル所持者には会えるわよ。スキルには謎がまだまだ多いわ」


「何か分かりましたか!?」


 英斗は興味津々で聞く。


「あら、貴方もスキルに興味があるのね。そうねー、まだ仮説なんだけど本当になりたい自分を強く持ってる人や、本当に欲しい力がある人には、そのスキルが発現する可能性が高いという仮説があるのよ」


「強い欲望を持つ者は、その欲望を叶えるスキルが手に入るってことですか?」


 英斗は驚く。


「その欲望にもよると思うけどね。私は文明崩壊前は夕日新聞って会社で働いてたんだけど、そこにいた記者は1割くらいがスキル『新聞記者(ジャーナリスト)』になったのよ。偶然にしては多すぎじゃない? 正直このスキルを得た人は取材馬鹿とも言える人ばかりだったわ。私達の内面も考慮されてる可能性が高い気がする」


「なるほど……」


 確かにおかしい推測ではない、と思い始めてきた。スキル『新聞記者(ジャーナリスト)』の人々がすぐに徒党を組んでいるのも変だと思っていたがそれなら納得もいく。


「極真会の葵ちゃんもずっと猫耳少女に成りたがっていたらしいわ。夢だった猫耳少女になれた!ってすごく喜んでいたもの。その人の強い意志は多少なりともスキルに影響を与えている気がする」


「だが、あのマッチの火くらいしか起こせない人たちもそれを望んではないでしょう」


「なりたい自分も、強い意志もない人はそれ相応のスキルしか与えられないのかも……。うちの会社にもスキル『駱駝(キャメル)』だった人がいるけど、別にラクダになりたかったわけじゃないでしょうしね」


 そういって、宍戸は苦笑いをする。


「何も望んでないのに、凄く強いスキルを持った人もいたから、運も勿論あるんでしょうけどね。あくまで仮説よ」


「面白い仮説ですね、確かに信憑性もある。おもしろい話でした、ありがとう。今後もよろしくお願いいたします」


「いえいえ、こちらこそこれからよろしく。杉並のスクープがあったら私にお願いね」


 握手した後、用事は終えたとばかりに宍戸はどこかへ消えていった。



 今日は様々な人と会ったなー、と英斗はぼんやり考えていた。文明崩壊後、あまり人と積極的には関わっていなかったので、嬉しくもあった。


「まあ俺達の頑張りで、笑顔になった人が居たんだ。少しは自分を誇ってもいいだろう」


『そうだねー、えいとはおさのやくめはたした。えらい!』


 英斗はナナを撫でながら、畑山から貰った酒を飲む。普段英斗は酒など飲まないが今日は飲みたかったのだ。


「ああ、いい夜だ。酒も美味しい」


 英斗は酔いながら、月を見つめていた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 握手したら情報抜かれたーってのは考えすぎか 善良だったらいいけどクズならできてもおかしくなさそう
[気になる点] 新聞記者宍戸洋が英斗の写真をばら撒かなきゃいいのですが……。英斗が顔を多くの人に知られる状況は怖いですし。
[一言] 人間性がクズな人間に欲望に沿ったスキルが生えてないと良いね。 洗脳・魅了・スキル強奪みたいな。
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