表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

51/279

事後交渉

「無事でよかったよ、如月さん」


 英斗は凛を見つけて笑顔で駆け寄る。


「いやあ、思ったより苦戦したのでお恥ずかしい限りです」


「勝っただけでも凄いことだよ。これ着な。後、ポーション。怪我した部位に使うと良い」


 そう言って英斗はコートとポーションを生み出し、凛に渡す。


「ありがとうございます。弦一君は加地の部下を全て倒した後、集合場所に向かったようです。我々も向かいますか?」


「ああ、行こうか」


 そう言って、英斗達は空き家に向かう。既に空き家には皆が集合していた。


「あらら、そっちも終わったようやねー。こっちも皆助けたでー」


 ユートが明るく言う。


「ああ、そちらも無事で何よりだ。だが、加地は小柳に殺された」


「ええ!? どういうことなん? 裏切り?」


「まだはっきりとは分からんが、黒幕がいる可能性が高い」


「えーまだ終わってへんの? 困るわ。加地のクランは壊滅したけど、中野区どうなるんやろな?」


「そこまで面倒は見切れん。No.2のクランが仕切るだろう」


「月城さん、それがだな。No.2クランの榊という人が我々を見逃してくれたんだ。こちらが悪いから、と言って。この後の責任も自分がとると部下に言っていたよ。俺はあの人なら中野区をまとめ、うちとも今後良い関係を築けるんじゃ、と思っている」


 尾形が榊を今後の中野ギルドのマスターに推す。


「それはうちが決めることでもないんだが……いい人だと安心なのも確かだな。少し会ってみるか。青犬の人や、弦一達も今日はありがとう。連れ去られた人を連れてもう戻って休んでくれ」


 英斗は皆に頭を下げる。英斗は榊と会うことを決めた。


「ああ、良い結果を期待しているよ」


 そう言って、青犬達は去っていった。英斗とナナは榊の居る中野区の中心街に向かう。




「榊という人はいるか。俺は杉並ギルドマスターの月城という。今後について話し合いたい」


 会った青年に尋ねると、一瞬武器を構えたがナナを見て武器を降ろす。訝しげな顔をした後、どこかへ消えていった。すぐに髪を一つ結びにした女性が現れる。


「榊だ。君が杉並ギルドのマスターか。君が来たということは加地は負けたか……。今回の事は誠に申し訳ない。謝って済む問題では無いが、これしかできない」


 榊は深々と頭を下げる。


「貴方は悪くないとまで言うつもりはないが、仕方ない部分もあっただろう。大事なのはこれからだ。加地は小柳に殺された。奴のクランはほぼ壊滅だ。新たなギルドマスターが必要だろう。あんたがNo.2だったならば今度こそ手綱を握って良いギルドにしてほしい」


 英斗からそう言われてどうすべきか悩んでいるようであった。


「資格が無い、は言い訳だな……。分かった、中野区が落ち着くまでは今度こそ私が責任を持ってまとめ上げる。これからそちらに迷惑をかけた者は厳しく処罰もする」


 榊は覚悟を決めて、中野ギルドのマスターをすることを決めた。周りは誰一人反対しない。他に有力なクランも居ないのだろう。


「そうか、良くなることを祈る。そもそもの発端は食糧不足だろう、野菜の種や、種もみを渡す。栽培方法はこちらの詳しいものに聞くといい。育ちきるまでの食料も無ければ杉並区で迷惑にならない程度のオークの狩りも認めよう」


「そこまでしてもらうわけには――」


「君が耐えられても、他の市民が耐えられるとは限らない。衣食足りて礼節を知る。食べ物が無い人はどこまで堕ちるか分からない。こちらのためにもこちらの力を借りてでも生きるべきだ。だがそちらがごく潰しまで養うのなら、そこまで面倒は見切れないがな」


「……そうだな。ここは貴方の力を借りよう。すまない、世話になる。この恩は必ず返す」


 榊は素直に折れた。ここに暫定的ながらも杉並中野トップ同士の交渉が成立した。


「では後日こちらに種等は持ってくる。詳しい話はまたそのときに」




 そう言って英斗は中野区を去っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  『復讐を誓う転生陰陽師』第1巻11月9日発売予定!
    ★画像タップで購入ページへ飛びます★
html>
― 新着の感想 ―
[一言] あえてだとは思いますが。 衣食足りて礼節を知る ことわざとしては住は入りません
[良い点] 大義名分のある戦いを圧倒的な戦力で圧勝し、その上で相手の有力者に実権を持たせた上で、援助も行う…… 何という完璧な占領政策
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ