相棒
「ふうー、オーク肉はおいしかったなあ」
高峰の力は本当に『槍術』なのだろうか。槍術では槍を手に入れるまでどうしていたのだろうか?
だが、オークから偶然奪い取れた可能性もあるし、死んだオークの亡骸から頂戴した可能性もある。
なんでも疑うのはよくない、と思い英斗は素直に受け取ることにした。
先ほどのレベルアップで身体能力は明らかに向上していることに気づいた。
ゴブリンをだいぶん楽に倒せるようになったのだ。だが、同時にゴブリンではレベルアップもしにくくなっていた。
「包丁もだいぶん切れ味が悪くなってきたなあ。確かに酷使しすぎか……」
そう言って、大きな石をゴブリンにぶつけ、包丁で止めをさす。
「ん?」
目の前のビルにゴブリンの集団が現れる。おそらく10匹ほどの集団であるが、その長であるゴブリンが他よりも一回り大きい。
「あれはホブゴブリンか?」
英斗は戦うか一瞬考えたものの、相手が集団である上、1対1で勝てるかも分からないので撤退を選択した。
だが、相手がそれを認めてくれるとは限らなかった。
「グギャ!」
集団の一匹が英斗に気づいたのである。
「畜生!」
その内の一匹がこちらに走ってくる。
「くらえ!」
英斗はゴブリンの足元に土を発生させる。だが、普通に踏みつけられ、転倒されることもなくそのまま追いかけられる。
「やっぱりそう上手くいかないか」
そう言って英斗は全力で逃げ出す。
殆どのゴブリンは素手だが、この集団には武器を持つ奴が居た。その一匹が地面に落ちているコンクリートを投擲してきた。
「うおお!?」
英斗は間一髪躱し逃げ続ける。
「そりゃゴブリンも物くらい投げるわな……だが、崩壊した現代日本なんて危ない物だらけだな」
そこら中で建物が倒壊しているのもあり、投げるものは非常に豊富であった。
「お返しだ!」
手から石を生み出し、追いかけてくるゴブリンに投げつける。突如とんできた石を体に受け、ひっくり返る。
「よっしゃ! が、焼け石に水か」
一匹が倒れただけで、まだ十匹近くが追いかけてきている。だが、ゴブリンより英斗の方が速く少しずつ引き離していった。
ようやくゴブリンの群れを撒いた英斗はゆっくりと地面に座る。
「明日は武器を集めに行った方がいいな。現代の武器屋といえばやはり……ホームセンターか!」
英斗は明日ホームセンターに武器もとい様々な物を取りに行くことに決めた。
その後家に戻っている途中、ぐったりと倒れている犬を発見した。まだ子犬で周りには親犬もいないようだ。
「……助けてる余裕なんてないんだがなあ」
犬を拾い上げると、おそらく水分不足と空腹で倒れていたようである。
「ドッグフード探してやるか」
犬は力もなく、されるがままであった。元は綺麗な銀色であったのだろうが今は砂まみれであった。
近くのコンビニに向かうも、誰一人いない。察しつつも中に入ると食べ物、飲み物全て回収された後であった。
だが幸いにもドッグフード類は少しだけ余っていた。
「良かったな、帰ろうか」
そして英斗は犬を連れマンションに戻った。
「よし、食べな」
英斗は皿にドッグフードを入れるも犬は食べる気配が無い。
「あれ、ドッグフード食べないな……。グルメなのか? バナナは食べられるって聞いたことあるな」
切れた冷蔵庫に入っているバナナを犬に与える。
犬は喜んで一瞬でバナナを食べきった。犬はまだ欲しがるような目で英斗を見つめている。
「残りのバナナ全部やるよ」
そう言って残り2本も与えると、犬は一瞬で食べきった。
3本のバナナを食べたことで元気になったのか、元気に尻尾にふっている。
「ワフワフ!」
「可愛すぎるだろ……」
その可愛さに英斗は犬を抱きしめてしまう。
「お前はもううちの子だ!」
そう言って、犬の顔をわしゃわしゃとなでる。犬は嬉しそうに鳴いている。
「名前を付けなきゃなあ」
犬をひっくりかえすと、ついていない。どうやらメスのようだ。
「バナナ食べたし、バナナは……さすがにないか。ナナにしよう! よろしくな、ナナ!!」
そう言って、ナナを撫でる。
「ワフー!」
ナナも尻尾を振って喜んでいる。
「ナナ、明日も早い。もう寝ようか?」
そして英斗はナナと共に眠りについた。
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