戦うメイドさん
エバと凛は弦一達から少し離れた所で対峙していた。
「あんた何? あの弱そうな奴の女? そんなダサいメイド服なんて着ちゃって。すぐズタボロにしてあげるわ」
「違います。ただのメイドに過ぎません。あのお方の負担を少しでも減らせるように……。あの人は優しいからこれからも要らない苦労をするかもしれません。それを少しでも軽減するために私は居るのです」
「意味分かんない。私をただのマスターの女だと思ってるでしょ? 私はこれでも実力であの人の横を獲得したのよ!」
エバはそう言うと、地面から何体もの石製人形を生み出す。人間の様な姿で剣を持っている。エバの力は『泥人形師』であった。
「行きな!」
その言葉と共に、ゴーレムが襲い掛かる。
凛は無言でガトリング銃を生成し、ゴーレムに連射する。轟音と共に、ゴーレムが蜂の巣になる。いくつものゴーレムが崩れ去るも、その内の1体が凛に迫りくる。
凛はそのガトリング銃でゴーレムの頭部を殴打する。凹んでしまった銃をすぐさまスキルで修復すると、零距離で連射し粉砕する。
「スキル『ガトリング』? よく分からないなあ、けど中々良いもの持ってんじゃない」
エバは自分の前方に5m程のよくある巨大なゴーレムを生み出し、その付近にいくつもの人型ゴーレムも生み出す。
巨大なゴーレムで守備を行いつつ、人型ゴーレムで攻撃を担っている。
凛は人型ゴーレムを破壊しつつ、巨大ゴーレムにもガトリングを放つも、その分厚い装甲を貫くことは叶わない。
これはガトリングでは厳しそうですね、と考えながら凛はガトリング銃を振り回しながら汗をかく。当然だが銃弾を全て魔力で担っているため魔力消費は大きい。
破壊しきれなかった人型ゴーレムの剣が凛の腹部に刺さる。
「ぐっ!」
凛はバランスを崩しつつもガトリング銃で破壊する。
「今よ!」
巨大ゴーレムがゆっくりと走り出し、凛にその手が迫る。
「舐めるな」
凛はガトリング銃を消すとロケットランチャーを生み出し、ゴーレムに撃ち込む。爆発と共に周囲が爆風に包まれる。
胸部は破壊されていたものの、その動きは止まることなく凛を捕まえる。ゴーレムの握力に凛の骨が鈍い音を立てる。
「ふう……焦ったけど終わりね。この距離ではもう撃てないでしょ。若い女は嫌いなの。死になさい」
握る力が徐々に強くなる。 だが、凛の目は死んでいなかった。
凛は再度ロケットランチャーを生み出すと、ゴーレムの頭部に至近距離で撃ち込んだ。爆発に凛も巻き込まれ吹き飛ぶ。
流石に頭部を吹き飛ばされても形状を保つことはできず、ゴーレムが砂に変わっていく。
「まさかあの距離で撃つなんて……自殺行為よ」
エバは驚きを隠せなかった。凛は自らの攻撃でメイド服もボロボロになりながら、地面に転がり落ちる。
凛はフラフラと髪を揺らしながら幽霊のように立ち上がると、ガトリング銃をエバに向ける。
「覚悟が違います、私はあの人の剣となるためにここにいます」
そう言って凜は銃を連射する。その銃弾は両足を貫き、エバはそのまま倒れ込んだ。
「グゥッ! わ……分かったわよ。私の負け。御免なさい、連れ去った人の場所も教えるわ」
そう言ってエバは両手を上げる。
それを見て、ガトリング銃を下ろす凛。だが、エバは静かに凛の後ろにゴーレムを生み出す。
これだから甘ちゃんは……とエバはほくそ笑む。生成したゴーレムがゆっくりと凛に近づく。だが、凛はその前にガトリング銃を振りかぶりエバの頭部を殴打する。その衝撃でエバは意識を失い、ゴーレムが再び静かに崩れ落ちる。
「私はそこまで人を信じていませんよ」
地面に倒れ込んだエバを見ながら呟く。
凛はフラフラと英斗のもとを目指そうとするも、足を止める。この状態では足手まといだからだ。
「だけど、啖呵を切った割にあまり役になっていませんね、まだまだ精進です」
そう静かに呟いた。