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交渉

 会合の朝、英斗、ナナ、凛、弦一はマンション前に集合していた。


「今日はよろしく頼むよ。如月さん、弦一」

「はい! 精一杯務めさせていただきます」

「何かあったら俺が動くんで安心してください!」

 2人は元気にそう言う。一抹の不安は残るも、2人を信じて向かうことにする。



 2人は車で行くようで、魔物に襲われたのか傷だらけの車に、凛がハンドルを握っていた。英斗はナナに騎乗し先頭を走り魔物を蹴散らしながら進む。今日は車の走りやすさを考え、まだ通行できる大通りを通っての移動である。

 両者の安全性を考え、場所は中野区と杉並区の間の店と聞いている。

 しばらく走った後、一行は目的の店にたどり着いた。


『あのきかいはやい……』


 ナナは車に対抗心を持っていた。英斗は、ナナの方が速いよ?とナナを撫でる。


「いやーななちゃん速いですねえ。車と変わらないとは。魔物が居ることを考えると、車よりはるかに速い」


「自慢の子ですから」


 英斗は鼻高々である。




「月城さん、ここが今回の会談の場所ですか?」


 弦一が空き家を見て尋ねる。人のいないバーのようである。すでにここらは人はいないようで、ドアも壊れ魔物に荒らされている形跡があった。たくさん置かれていたワインは地震と魔物達に破壊されており、残ったワインは殆ど誰かに呑まれており、瓶だけが転がっていた。薄暗い店内に、窓から仄かな光は入っている。


「ああ、今日の昼からだからもうすぐ来るんじゃないかな?」


 英斗達はその埃っぽい店内に入り、まだ形を保っているソファに腰を下ろす。






 正午を少し越えた頃、4人組が現れる。


「お前らが杉並ギルドの者か」


 そう言ったのは、おそらくギルドマスターであろうガタイの良い30代後半の男である。無精ひげを生やしており、頬には一本線の傷が入っている。こちらを品定めするような目つきをしていた。


「はじめまして、杉並ギルドマスターの月城英斗です」


「俺は加地(かじ)(あきら)だ。確かに会合なんて生温いこと言いそうな奴等だぜ」


 そう言って加地は向かいのソファに乱暴に腰を下ろす。


「ああ?」


 その言葉に苛立った弦一が怒気を放つ。


「マスター、あまり煽らないでください。今日は会合の場ですよ。すみません、私は副マスターをしている小柳(こやなぎ)八鹿(ようか)と言います」


 そう言ったのは、加地の後ろに立っている小柳である。

 高い身長に、髪をオールバックにしている。顔も凛々しく文明崩壊前は一流企業に居てそうな仕事のできる雰囲気を漂わせている。


「別にいいでしょー、弱腰の弱小ギルドなんだしさー。こんな雑魚が居る時点でたかが知れてるよ、なあ雄二!」


 こちらを煽りながら小柳の横に居た女が連れてきた少年を蹴る。名は佐竹(さたけ)エバと言うらしい。キャバ嬢のような派手な巻き髪をしており、胸元の緩そうな服を着ていた。


「おとなしく言うことを聞いたほうがいい、逆らうと何されるか……」


 蹴られた少年、雄二がおどおどと目も合わせず言う。


「こいつはお前ら杉並区から流れ着いたガキだが、なんと俺達のクランを襲おうとしやがった。ぼこぼこにしてやったがな。杉並区の情報もこいつから聞いたのよ」


 加地は冷たい目で雄二を見る。まさか情報源が元杉並区の者からだったとは……と英斗は驚く。英斗は、気にせずに話を進める。


「単刀直入に言いましょう。こちらの用件は2つ。下らない人攫いを止め、今まで攫った人を返すこと。今後杉並区に小競り合い等を仕掛けないことです」


「おいおい、こちらだって食料が無くて困ってるんだ、譲り合いの精神はないのか~?」


「それでは野菜の種等もお譲りします。栽培方法が分からないのなら定期的に農業の分かる方も派遣します。それでいかがでしょうか?」


「断る! ハハ、なんでこんな世界になってまで野菜作らなきゃいけねえんだよ!」


 加地はテーブルを叩く。


「今更文明人みたいな交渉しやがって、俺はお前ら全員奴隷にしてやってもいいんだぜ? おとなしく農業スキル持ちを渡せ!そしてお前らは定期的に食物をよこしな。それで殺さないでやってやる」


「断る。確かに今はもう文明すら崩壊して、秩序も無いだろう。だが、だからと言って俺はそこまで堕ちるつもりは無い。人は渡さないし、連れ去った人も必ず返してもらう」


 英斗は毅然とした態度で言い放つ。


「ほお、後悔するぞ? 交渉は決裂だな、お前の頭を地につけて土下座させるのを楽しみにしてるぜ」


そう言うと、加地達は席を立ち去っていく。


「馬鹿だねえ、おとなしく渡せばいいのに。かっこつけて」


 エバはくすくす笑いながらこちらを見ていた。



 加地は店を出た後、腹立たし気に言う。


「ガキが……今日俺だけであちらに行く。あのガキにお前はなにも守れねえってことを教えてやる」


「分かりました、マスター」


 不吉なことを小柳に告げながら、中野に戻っていった。






「あいつら、完全にこちらを舐めてましたね……。ぼこぼこにしてやりましょう」


「ああ、だが、中々強そうなのも居たな」


 そう言って英斗は小柳のことを思い出す。もしかしたら加地より強いのでは?とさえ思っていた。


「そうですか? まあ久しぶりの抗争ですね、血が騒ぎます」


 弦一はニタリと笑った。初めて英斗を襲った時と同じ笑顔である。




「こちらから攻めますか?」


「一度話し合おう」


 そう言って、英斗達は杉並区に戻る。

皆様のおかげで、ローファンタジー月間1位になることができました!

そしてついにポイントも30000ptを超えました。


これも全て、ブックマークや評価をしてくださる皆様のお陰です。

感想や読んでくださる読者様にも感謝を申し上げます。よろしければこれからも読んでいただけると嬉しいです。

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[良い点] ローファンタジー好きだから最高 ありがとうございます
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