君のために真っ赤な薬を
いくつもの色を失い砕けた魔石が英斗の周りに散乱している。そして、遂に今までより効力の高そうなポーションが生み出された。
『赤ポーション (中級)
怪我や身体疲労に効く。欠損等は治せない』
「神薬ではないが……今までより良いものができたぞ! ナナゆっくりでいいから飲んでくれ」
ぐったりしていたナナの口にポーションを流し込む。劇的な効果は無いもののナナの顔に色が戻った。
「俺が沢山創ってやるからな」
英斗は魔石を次々と砕き、魔石が使えなくなるまで中級ポーションを生み出しナナの傷口にかけたり、口から流し込む。
ナナはなんとか峠を越え目に生気が戻ってきた。
「ナナ……良かった! 本当に良かった! 俺が馬鹿で、弱くてごめんな……」
英斗は泣きながらナナにしがみつく。
「ワゥゥ……」
ナナは小さく吠える。
それから英斗は、ナナにポーションとご飯をあげる以外は全ての時間をポーション生成に費やした。
それから2日後、できたポーションを再び鑑定する。
『赤ポーション (上級-)
上級の劣化品。中級よりは効用あり。怪我や身体疲労によく効く。欠損等は治せない』
「劣化品……だがより良い物ができたんだ! ナナ飲みな」
ナナは自ら動き、ポーションを口にした。上級-のポーションを何本も飲ませることでナナはどんどん元気を取り戻していく。
上級-は上級と同程度に魔力を使うので非常に効率が悪いが、専門の錬金術師ではない英斗では仕方ないことだろう。
「ナナ……治ってよかった! お前にあんなことをしたあの男には必ず落とし前つけるからな!」
ナナを抱きしめ、その温かさからナナの生命を感じる。治療後、自らの折れた腕にもポーションをかけ治療する。
英斗は米谷に必ず復讐すると誓った。だが、現在の実力では奴を倒すことは難しい。
「ワウッ!」
ナナは、私も必ず奴に一発かましてやるわ!と意気込んでいる。
「ナナ、病み上がりなのにこんなことを言って済まない。このままじゃあの男に勝つことは正直難しい……。だからナナの調子が戻ったら、更に深部に潜りたいと思うんだ」
いいかい、とナナに尋ねる。
「ワウッ!」
ナナはもちろんと言わんばかりに吠える。ナナも負けっぱなしはごめんだった。
「とりあえず、20階のボスに顔見せに行こうか」
英斗達は穴を出て地上を目指ししばらく大穴内を探索する。30分ほど歩くと地上へと続く大穴を見つける。ナナに乗り地上まで左右の壁を交互に蹴り、駆けあがる。
「久しぶりの太陽だ!」
「ワウーー!」
英斗達は再びジャングルに舞い戻ると、20階ボスの眠る扉を探し歩み出す。
英斗はサイクロプスやA級魔物『女王白脚蜘蛛』など様々な魔物と戦い経験を積む。
ジャングルをさ迷うこと2日、英斗のレベルが36になった頃20階ボスのいる鉄の扉を見つける。
「行こうかナナ……多分ここは今までみたいにはいかないだろうな。だが――」
全ては米谷を倒すため。英斗は覚悟を決め鉄の扉を開ける。