本当に生み出したい物
英斗はナナを担ぎながら必死で逃亡していた。
「ナナ……死ぬな。俺が絶対死なせないからな……!」
ナナは鳴き声一つあげずにぐったりとしていた。死んではいないが骨も折れ、息も絶え絶えである。
後ろから金属が破裂したかのような爆音が聞こえた。米谷の一撃により鉄壁が破壊された音である。
「もう壊れたのか? 化物め! ナナ……ごめん。俺が弱いばっかりに……」
英斗は泣きそうになるも涙を堪え必死で走り続ける。
しばらく走った後、逃げ切ったと感じた英斗は行き止まりの小さな穴に入りナナを横たわらせる。
「ナナ辛いと思うけどこれを飲むんだ」
英斗が生み出し、ナナの口に流したのは赤いポーションである。
『赤ポーション (下級)
怪我や身体疲労に効く。大怪我は治せない』
英斗は鑑定するもこの程度では効かないと感じていた。だが、英斗は先ほどの戦闘で魔力を使っており、魔物に襲われた場合や残りの体力を考えるとこれ以上使えなかった。
「ナナ……ごめんな。もう少し待っててくれ。必ず俺が治してやるから」
英斗はナナの手を握り、流動食を生み出すとナナの口に流す。その後英斗は穴を土で埋め警戒しつつ軽く眠りに就いた。
次の日英斗は起きると再びポーションを生み出し、鑑定する。
『赤ポーション (下級)
怪我や身体疲労に効く。大怪我は治せない』
下級と鑑定されてしまった。ナナの怪我は重く下級では間に合いそうも無い。英斗は頬を叩き気合を入れる。
「俺が更に上位のポーションを作るんだ……『万物創造』なら作れるはずだ。必ず俺がナナを救う」
英斗は胡坐をかき、集中する。『万物創造』は頭の中でイメージしたものを創造する。より質の良いポーションをイメージしなければならない。
「ナナの怪我はおそらく内臓や骨がやられている。それを治すような上位のポーションをイメージして……」
赤い液体を生み出す。だが、鑑定してもそこには下級の文字が。
レベルを上げた方が良いのか英斗は考えたが、短期間ではそこまでの上昇は見込めない。上がる頃にはナナが死んでいるかもしれなかった。
英斗は失敗作を自らの折れた左腕や、ナナに飲ませながらポーション生成を繰り返す。
失敗作が100を超えたところで、魔力が尽きかけた。
「魔力がもう無いな……魔石使うか」
英斗は大量に持っている魔石を使い、再び生成を行う。
魔石でのスキル行使は一定時間にできる回数が制限されており、何度も使うと効果が薄くなり最終的には行使できなくなるのだ。
魔石でポーション精製はできても、疲労は回復できない。英斗の顔には疲れがたまっていく。
「考えるんだ……ナナはこのままじゃ危ない。何が『万物創造』だ! 相棒すら救えなくて何が作れるんだよ!」
中々、中級に到達しないポーションに焦りを感じ地面に拳を打ち付ける。レベルを上げる余裕がない以上イメージの精度を上げるしかない。英斗にとってイメージできる回復薬とは……。
「ゲームにある回復アイテム……その中でも最も効果の高いものを……」
英斗は昔やっていたゲームに全てを治す液体『神薬』があったことを思い出した。
英斗はどんな致命傷も一度に回復する『神薬』を脳内で思い浮かべつつ再びポーションを生み出し続けた。