チュートリアル
5匹目を殺したところで再び体が熱くなり、全身から力が漲ってきた。
「おっ、レベルアップか」
再び石を生み出すと、前より大きな石が生み出された。直径10㎝超といったところだろうか。
「段々強くなっているこの感覚、嫌いじゃないな。石の大きさで成長が感じられるのもいい」
英斗はそう言って氷を生み出す。初めより少し生み出せる数も増えている。
その後も英斗はゴブリンを狩り続けた。計12匹くらい狩った後、オークに出会い、再び逃亡した。
英斗がオークを振り切り、部屋に着いたのはオークと会ってから一時間後であった。
疲れ切った英斗は部屋につくなり、缶詰やジャーキーを食べ始める。
「やっぱり肉だね」
だが、満足するまで食べずに箸を置いた英斗は、ドア前に冷蔵庫を置く。その後、窓にも棚を置きバリケードを形成する。
「こんなんでなんとかなるとは思えないけど、とりあえずね」
バリケードを作り終えた英斗は他に生み出せるものを探し始めた。
「包丁は……だめか」
唯一の武器である包丁を生み出せないかと考えたが、どうやら無理のようであった。
部屋にあった木彫りのコケシは同じ物を生み出すことができた。
それの応用で木の棒を生み出そうとしたが、どうやら現在のキャパではそこまで大きい物は作れないようであった。
一円玉なら作れるかと思ったが作れず、同様に硬貨は全て生み出すことができなかった。
『万物創造』で作成できる物は素材によるのか、価値によるのかまだ考察の余地が残っていた。
色々考えていたが、疲れそして電気がつかず真っ暗になっていたため英斗は早めに寝ることにした。
寝る直前にスマホを確認したが、当然のように圏外の文字が表示されていた。
朝再び起きた時、英斗は無事朝を迎えられたことに感謝した。
「食料、水はまだ一週間分以上ある。今日も狩りますか」
英斗は狩りの準備を整え、再びゴブリン狩りに向かった。 外を歩いていると、道路に大きな旗が立っていた。
旗には、
『近隣の住民の皆様、警察署にお逃げください。避難所を開設しております!』
と文字と共に矢印が書かれていた。 それを見て、様々な人が喜んでいた。
旗の下には警察官が立っており、民間人の質問に答えていた。
「ねえ、そこには食料もあるのよね!」
「はい!避難用の備蓄もあります」
「そこは安全なの? ここ化物だらけじゃない、警察と自衛隊は何やってんのよ!」
「それは……順次安全圏を拡大する予定です」
ヒステリックな女が警察官を責め立てていたが、その途中大声に誘われたのか、オークが現れた。
「ひい、あんたなんとかしなさいよ!」
女が警察官の後ろに隠れる。
「来るな!」
そういって警察官が拳銃を発砲する。オークの腹部に2発命中し血を吐くもオークは止まらず、そのままオークは槍で警察官の頭部を貫いた。
「「きゃあああああ!」」
女や、他に群がっていた人々は死んだ警察官を見て悲鳴を上げ即座に逃げだした。
オークは銃弾が効いているのか鈍い動きをしながらも逃げ出した人々を追いかけ姿を消した。
「警察もまだ機能してたんだなあ。警官の拳銃まだ使えるかな? すみません、いただきます」
そう言って、英斗は警察官の死体から、拳銃を頂く。
リボルバーの残りの弾数を確認したところ後一発しか入っていなかった。
「あと一発か……、予備の弾とか持ってんのかな?」
と警察官の体を探すも、予備弾は携行してなかったようであった。
「銃弾生み出せるかな……やっぱ無理か。だが、現状包丁しか武器がない中、拳銃一発でもありがたいな」
ホルスターも頂き、名も知らぬ警察官に手を合わせた。
歩いていると地面は死体だらけであった。それは人だけでなく、魔物の死体も同様であった。 英斗は再び、ゴブリンを狩り続けた。本日8匹目を殺した後、再びレベルアップとなった。
「よし! これで3回目かな? 少しだけだけど、筋力や持久力も上がってる気がするんだよな」
英斗は、再び石を手に生み出す。今までより大きく、直径20㎝程まで大きくなっていた。これなら中々の武器である。
英斗は手から土を生み出すようイメージすると、手から土が大量に生まれる。
地面に手を付き、自分より1m先の地面から土を生み出すようイメージすると、そこから土が盛り上がっていく。
「手を付いていれば、遠距離も可能なのか? それとも足はついているんだから、手を付かなくても土を遠隔で生み出すことは可能なのか?」
手を付けず、ただ地面から土を生み出すようイメージする。手をつける時よりも速度は低下しているが、土が盛り上がっていく。
「おお、これができるなら魔物を転ばせることも可能なんじゃないか! いっきに戦略の幅が広がるな!」
英斗はわくわくしていた。この強制的なサバイバルにもかかわらず、スキルという謎の力に心を奪われていたのである。
滅びた後の世界ってロマンありますよね。
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