悪
20階での最初の歓迎は再びワイバーンの群れであった。
「またかよ……!」
英斗達は群れから逃れるため再び大穴に飛び込む。
「はあ……またウィルワーム出てきちゃたまらんなぁ……」
赤大鬼の戦闘後、英斗は再びウィルワームが生み出した大穴を探索している。しばらく歩いていると、ある物が目に入る。
「なっ!? これは……」
英斗の目に入ったものはウィルワームの死体である。大穴と同じサイズのウィルワームが通路を埋めてしまっている。大きく血を吐いたのかそこら中に血がこびりついている。
「20階にこいつを殺せる奴いるのかよ……」
英斗は背筋に小さな汗をかいた。英斗はウィルワームに近づき死因を探る。血も気にせず無理やりウィルワームと穴の間に潜り込むとウィルワームの胴体部分がはじけ飛んでいる。
おそらく大きな一撃で仕留められている……英斗はそう察しこれ以上進むかどうかすら考え始めた。
このダンジョンを出るべきか? おそらく21階にはワープゾーンがある。ここからだと11階まで戻らないと戻ることができない。
英斗はリスクを取りつつ、先に進むことを決めた。ウィルワームを仕留めた生物との戦闘は無しである。
「ワウーー……」
ナナも本能的に危険を感じているのだろう、ウィルワームの死体を見てしょんぼりしている。
地面への出口を見つけ次第、上に戻ろうと英斗達は歩き始める。5分程歩いていると前方から歩く音が聞こえる。
「人か……? それとも人型魔物か?」
20階で人型の魔物はまだ見ていない英斗は、岩の後ろにナナと隠れる。
すると現れたのは、サングラスをかけスーツを着た30代半ばの男である。黒い短髪で顎には髭を少し生やしている。顔はよくわからないが、体はスーツの上でも分かるくらい鍛え上げられているのが分かる。
そしてなにより感じられるのが、圧倒的な強さである。その立ち振る舞いから英斗は危険を感じ取った。
「ん~~? 人の気配を感じるなぁ」
男は飄々と笑いながら英斗達が隠れている岩を見る。
ばれてる、そう感じた英斗は諦めて立ち上がる。
「初めまして、俺は月城という。敵意は無い。こんな場所だから警戒して隠れてたんだ」
英斗は両手を上にあげ敵意が無いことを伝える。ナナも岩から出てくる。
「へー、君一人でここまで来たの? 世田谷の奴等はこの階層までまだ来れてないはずだけど、やるねぇ」
「ありがとう……ございます」
英斗の背中は汗でびっしょりで、手は僅かに震えていた。対面して分かった、ウィルワームを一撃で殺したのは間違いなくこの男である。
「どこのギルドの者か知らないけど、将来有望だねぇ。うちのギルドでもここまでソロで来れる奴はそうはいない」
そうニヤニヤと笑いながら男は英斗を見る。
「将来邪魔になりそうだしここで殺しとこうかな?」
その男がぼそりと呟くやいなや、瞬時に英斗の前まで移動し蹴りを放つ。英斗は鉄壁を生み出すと同時にイグニスの盾も展開する。
その蹴りは鉄壁を砕き、イグニスの盾ごと英斗を吹き飛ばした。
「ぐはっ!」
英斗は壁に叩きつけられるも男から目を離さない。
「鉄を生み出す能力かな? 便利そうだねぇ。それにやっぱりここまで来てるだけあってすぐには仕留められないか」
男は遊んでいるかのように首をかしげながら笑っている。
すると、突然男の皮膚が少し紫色になっていく。
「スキルか……」
英斗は先ほどの一撃から、男は身体強化系のスキルだと踏んでいた。だが、この変化だけではさっぱり分からない。
英斗は立ち上がると拳銃を取り出し連射する。その男は拳銃を受けつつも全然ダメージを受けていない。
英斗は弾を爆発の魔力を込めた特別製に変え再度撃ち込む。男に命中すると爆発が起こる。その衝撃で辺りが爆煙に包まれた。
「効いたか?」
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