織也VSレイモンド②
『重力球』
織也は直径50センチメートルほどの球体を前方に生み出す。黒く光り、その中は魔力が渦巻いている。
鉄筋はその球体に吸い込まれると、瞬く間に押しつぶされ巨大な鉄筋が小さな玉に変わる。
『重力場・二十倍』
その玉は地中に沈められた。
重力球の威力を見て、レイモンドは顔色を変える。
「大した威力だ。それでバルンを沈めたか」
「バルン? ああ、タワーのボス、か。強かったよ、彼は」
「知っているさ。磁化悪魔!」
レイモンドの体にあらゆる金属が集まり、レイモンドを中心に金属類でできた巨人が完成する。全長は六メートルほどだろうか、ネジや鉄筋、鉄棒など、様々な金属で象られている。
『引力』
その巨大な腕に織也が引き寄せられる。だが、織也も先ほど見た技に何度もやられる男ではない。引き寄せられつつも、腕に魔力を集める。
『重力場・二十倍』
レイモンドはその重力に耐え、巨人の左腕をロケットのように引力で飛ばす。
『重力槍』
黒い魔力でできた槍を生み出すと、襲い掛かる左腕に叩き込む。すると、その左腕が槍に吸い込まれて圧縮される。
レイモンドは眉を顰めるも、すぐさま周囲から更に金属を集め四本腕を作り始める。
「引かん!」
『重力場・五十倍』
織也は更に魔力を込め、渾身の重力場を生み出す。二十倍は耐え抜いていたレイモンドを包んでいた金属部品も、地面にめり込み始め丸裸になる。
勿論レイモンドも無事ではない。体は軋み、様々な骨にはひびが入り始めていた。
「引力黒雷!」
レイモンドは口からは血をにじませながらも、自分自身にも磁力を纏わせお互いを引き寄せ、渾身の蹴りを撃ち込んだ。
そして離れる瞬間に斥力を生み出し、吹き飛ぶ織也の勢いを加速させた。
「ゴフッ!」
血を吐いたのは織也、だけではない。レイモンドの足にも、重力槍が刺さっており、その足は完全に槍に吸い込まれ消し飛んだ。
「人間があああ!」
「織也という……。覚えて、おけ。お前を殺す男の、名だ」
レイモンドは顔を怒りで歪めながら、足に金属部品で足を生み出す。織也も先ほど受けた一撃は重く、立ち上がることすら辛い状態だった。
「磁化大魔人!」
今までとは比べ物にならない、全身三十メートルを超える巨人が生まれる。そのとてつもないサイズに、周囲の人々も皆息を呑む。既に周囲を金属は全て吸い上げたのか、周りからは金属が消えている。
「もう終わりだ……!」
「神が、我々を殺しに来たんだ」
「あぁ……」
恐怖で腰を抜かし、震えだす者も出る始末。
「こいつは俺が必ず仕留める! だから、皆も、目の前の敵に集中しろ!」
織也は声を振り絞って叫ぶ。少し声は震えていたが、織也にしては大きく精一杯の声だ。その声を聞き、人々は恐れつつも周りのアンデッドへ目を向ける。
「魔物も、魔人も、規模が段違い、だな」
織也は、溜息を吐くもその目は死んでいない。その巨人は右手を上げると、そのまま織也に向けて振り下ろす。織也は全力で距離を取り、その拳に手を翳す。
『重力場・五十倍』
その重力場により、拳の軌道がずれ、地面に叩き付けられる。その威力は凄まじく、大きなクレーターができる。もしも一撃でも食らえば骨も残らないだろう。
その風圧すら今の織也にはきついものである。顔を歪ませるも、その力は緩めない。
重力により右手をかたどっている金属部品を地面に沈めて、そのまま分離させる。だが、レイモンドも引くことは無い。左腕で織也を狙う。
織也は重力場の範囲を変更し、左腕も地面に沈める。これでは動けないと考えたレイモンドは一旦腕の磁力を解除する。両腕が全身から離れ解放されると、左足で織也を踏みつぶそうと試みる。
『重力場・五十倍』
足に重力場を向けた瞬間、再び巨人の両腕が再生する。
「これじゃきりがない、な」
(これほどの大技を長時間維持できるのか? だが、俺もそこまで魔力が無いし、長時間俺が耐えられない。勝負を決める!)
織也は、大量の魔力を両手に込める。額には汗をかいておりその負担を表していた。
『重力場・百倍』
巨人の全身に織也の最大の重力場をぶつける。その威力は凄まじく三十メートルあった巨人が一瞬で全て地面に叩き付けられる。大量の金属部品が地面に叩き付けられ、はじけ飛ぶ。
全ての金属を剥がされ、むき出しのレイモンドが地面付近でふらついている。本人にも相当効いているようだ。
魔力を大量に使った織也も顔が真っ青で、腹部のダメージでふらついている。だが、この好機を逃せないことも理解していた。
レイモンドもこれが最後であることには気付いていた。
『引力』
折れた左腕で織也を引き込む。右腕には黒い稲妻の如き魔力を纏わせている。
『重力錨』
織也は地面に錨を撃ち込み、その場に留まる。そして、空いた手に魔力を込め始める。危険を感じたレイモンドは能力を解除し、斥力に変更し逃げようとするも、既に遅かった。
「ま、待て人――」
『重力球』
その球体はレイモンドの目の前に生み出された。その威力を先ほど既に見ていたレイモンドは悲鳴に近い声を上げる。
体がその球体に吸い込まれ、そのままレイモンドの全身はこの世界から消えた。地面には血溜まりだけが残される。
「英斗の手助けはできそうに、ないな。すまない、英、斗」
魔力を限界まで使ったせいか、織也は地面に倒れ込んだ。
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