開始
英斗はずっとレガシーの時間稼ぎが疑問だった。道中現れる魔物は使い捨てるには強かったからだ。英斗は、レガシーが自分を恐れているだと考えていたが、魔人の援軍を待っていたのだ。
(やられた! アンデッドだけだと思っていたが、ここでこれほどの大物が出てくるとは)
敵の戦力を読み間違えた英斗は小さく汗をかいた。
サンドラの後ろにはもう一人の魔人レイモンドが周囲を見渡している。
「サンドラ、俺は大坂ダンジョンタワーを踏破した男を殺しに行く。ここは任せたぞ」
レイモンドはそう告げると返事も聞かずに、織也の元へ飛んでいった。
「あいつ、返事も聞かずに……まあいいわ」
サンドラは呟きながらも、英斗達から目を離さない。
『英斗、あの女は私が戦う。だから、英斗は死王だけに集中して』
「死王は英斗に譲るわ。私もナナちゃんと共にこいつを!」
有希は怒りで我を忘れていなかった。死王を倒せるのは英斗だけ、それを理解してその剣をサンドラに向ける。
「何? あんた達だけで私を殺せるとでも? 舐められたものね!」
サンドラは黒雷を手に纏い、有希に放つ。それをナナは氷壁で受け止める。黒雷が爆ぜ、氷壁が粉々になる。
ナナはサンドラに飛び掛かると、その牙でサンドラの首を狙う。野生を思わせる神速の速攻である。だが、その牙は首には届かなかった。
サンドラが両手でその牙を受け取める。驚異的な腕力である。
「フェンリルなんて……こんなとこで見るなんてね! だが所詮は犬っころ。こんなとこで人間に尻尾振ってるなんて!」
サンドラはナナの腹部目掛けて蹴りを放つ。その蹴りは、有希の剣に止められる。
「あんたの相手は一人じゃない!」
その隙に、有希は右足で回し蹴りを放しサンドラを蹴り飛ばした。吹き飛んだサンドラを有希とナナが追う。
「ナナ、有希、無理はするなよ!」
叫んだ英斗にナナは小さな鳴き声で応える。
その場に残ったのは、英斗とレガシーだけになった。
「残念だったな、死王。俺からは逃げられん様だぞ」
「俺の名はレガシーだ。そう呼んでくれ、強き者よ。それに俺は君とやりたかった。命がけの戦いなど何時ぶりだろうなあ」
自分を殺す可能性がある人間が現れても、その余裕は崩れない。
「そうか、レガシー。流石に王というだけあるな。俺も名乗ろう。月城英斗。お前を殺す男の名だ!」
「流石に国盗りは簡単ではない。家康公も苦労してと書いてあったから当然か。楽しみだよ、英斗」
そして、九州の行く末を決める戦いが始まった。
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